今回は,社会変動を取り上げたいと思います。
社会変動とは,社会が変化していくことです。
社会変動は,どのように変化するのか,その順番が大切です。
デュルケム |
テンニース |
スペンサー |
機械的連帯 ↓ 有機的連帯 |
ゲマインシャフト ↓ |
軍事型社会 |
この中で最も出題回数が多いのは,テンニースの「ゲマインシャフト → ゲゼルシャフト」です。
ドイツ語なので言葉が分かりにくいこともあり,国家試験で出題すると,受験者に差がつきやすいからでしょう。
覚えにくいからこそ,しっかり覚えなければならない筆頭の一つだと言えます。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題17 近代の社会変動に閲する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 ジンメル(Simmel,G.)は,社会は分業の体系であると考え,同質な個人の連帯である機械的連帯から異質な個人の分業による有機的連帯に変化していくと考えた。
2 マルクス(Marx,K.)は,階級闘争が歴史を動かしていると考え,孤立する労働者を結びつける政治的リーダーたる前衛党が登場し,資本主義を打倒する闘争を指揮すると考えた。
3 ヴェーバー(Weber,M.)は,官僚制による合理化が一層進行するが,それに反対して情熱的に異議を唱えるカリスマが多数登場するようになると考えた。
4 テンニース(Tönnies,F.)は,どのような意志により人々が結合するかをとらえようとし,本質意志に基づく基礎社会から選択意志に基づく派生社会へと変化すると考えた。
5 デュルケム(Durkheim,E.)は,経済的繁栄によって人々の欲望が過度に肥大化し,どこまでいっても満足できないアノミーに陥り,それがいらだちや焦燥感をもたらすと考えた。
人名を覚えるのが苦手な人はいやになってしまうような問題でしょう。
正解を先に言うと,選択肢5です。
5 デュルケム(Durkheim,E.)は,経済的繁栄によって人々の欲望が過度に肥大化し,どこまでいっても満足できないアノミーに陥り,それがいらだちや焦燥感をもたらすと考えた。
アノミーは,以前はよく出題されていましたが,近年は出題されていません。
最後に出題されたのは,
第23回・問題16
2 市場の無規制的な拡大で,人々の欲望が他律的に強化され異常に肥大化していく中で,消費の焦燥感や挫折感,幻滅などが生じることを経済的アノミーという。
これも正解です。経済的という言葉がついていますが,述べられている内容は,ほぼ同じです。
アノミーもわかりにくいので国試の出題に向いていると思いますが,現代の問題に置き換えたとき,ホットなテーマではないので出題されなくなったのかしれません。
それでは解説です。
1 ジンメル(Simmel,G.)は,社会は分業の体系であると考え,同質な個人の連帯である機械的連帯から異質な個人の分業による有機的連帯に変化していくと考えた。
「機械的連帯から有機的連帯へ」と述べたのは,デュルケムです。
近年では,以下のように出題されています。
デュルケム(Durkheim,E.)が論じた有機的連帯とは,教会を中心とした共助のことをいう。
有機的連帯は,第22回で出題されているように,異質な個人の集まりによる社会です。
具体的に例を挙げると,革靴の製造です。
機械的連帯では,革靴の製造者が集まり,革のなめしから販売までをそれぞれが担います。
分業はされていません。これが同質な個人の連帯という意味です。
有機的連帯は,革のなめし,なめした革の販売,靴の製造,靴の販売といったように専門業者がそれぞれの専門分野で活動します。
機械的連帯と有機的連帯では,どちらがたくさんの靴を作れるでしょうか。
おそらく有機的連帯でしょう。
有機的連帯は,産業化の表れでもあります。
こんな出題があります。
1 デュルケム(Durkheim,
E.)は,異質な個人の分業による有機的な連帯から,同質的な個人が並列する機械的連帯へと変化していくと考えた。
有機的連帯と機械的連帯が理解できれば,この社会変動はあり得ないことだと感じるでしょう。
もちろん中には,個人で革のなめしから販売まで行う靴職人もいるでしょう。
しかし,それでは製造する数に限界があるので,ものすごく高い靴になってしまい,誰もが購入できるものではなくなってしまうでしょう。
因みに
デュルケム(Durkheim,E.)が論じた有機的連帯とは,教会を中心とした共助のことをいう。
は誤りです。
教会を中心とするということは,信者という同質な個人の集まりです。そういった意味で有機的連帯というよりは機械的連帯だと言えるでしょう。
2 マルクス(Marx,K.)は,階級闘争が歴史を動かしていると考え,孤立する労働者を結びつける政治的リーダーたる前衛党が登場し,資本主義を打倒する闘争を指揮すると考えた。
マルクスは,階級闘争が歴史を動かすと述べたのは,正しいです。
資本主義よりも共産主義が上の社会だと考えました。
理想は良かったのですが,適度な競争は人のモチベーションを高めるという面を考慮していないところに問題があったのではないかと思います。
古典的な資本主義のままだとマルクスの理論は適切だったと思いますが,資本主義国家は,その制度の欠陥を社会保障制度の整備によって補っていったのです。
孤立する労働者を結びつける政治的リーダーたる前衛党が登場し,資本主義を打倒する闘争を指揮すると考えたのは,レーニンです。
3 ヴェーバー(Weber,M.)は,官僚制による合理化が一層進行するが,それに反対して情熱的に異議を唱えるカリスマが多数登場するようになると考えた。
ヴェーバー(ウェーバー)は,出題頻度が高い人です。
勉強不足だと思うと深みにはまります。知らないのは勉強不足ではなく,嘘の文章だからです。
ウェーバーほど出題頻度の高い人は,出題ポイントが明確です。
官僚制
社会的行為
です。
4 テンニース(Tönnies,F.)は,どのような意志により人々が結合するかをとらえようとし,本質意志に基づく基礎社会から選択意志に基づく派生社会へと変化すると考えた。
本質意思と選択意思という部分は適切ですが,テンニースが述べたのは「ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへ」です。
<今日の一言>
社会変動は,どのように変わるのか,その順番を覚えることが特に重要です。