2021年9月21日火曜日

文化資本とは?

社会資本や社会関係資本は知っていても,文化資本を知っている人はそれほど多くはないかもしれません。

 

簡単に言えば,文化資本とは,文化的なものが世代継承されていくことです。

 

文化的なものは,いっぱいあります。

 

・骨董品

・本

・知識

・地位

・所作  など

 

これらは,だれもが持てるものではありません。

 

自分でこれらを獲得する人もいるでしょう。しかし,自分で積極的に獲得するのではなく,その家に生まれたことで自然に獲得していく人もいるでしょう。所作などのように親から子へ,子から孫へ伝えられていくものもあるでしょうし,その家に生まれたから興味をもつということもあるでしょう。

 

社会資本はインフラ,社会関係資本はソーシャルキャピタルです。

 

文化資本は,こういった社会的なものではなく,文化的意味合いのものです。

 

それでは,今日の問題です。かなりマニアックです。

 

22回・問題16 文化をめぐる次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 身体的振る舞いや家財道具,獲得した制度資格など文化的要素を帯びるものが本人や家族で蓄積・継承されて,文化現象や社会的格差を再生産することがあり,それらは文化遺産と呼ばれる。

2 現代国家における支配と従属の関係は文化の側面にも見られ,ある国のメディア情報や商品・ライフスタイルの浸透を通じて,他国の慣習や価値観が支配されていくことは,文化帝国主義と呼ばれる。

3 産業の変化を支える科学・技術の発展に伴い物質文化の展開は急速に進むが,政治・法律や教育など非物質文化は技術変動についていけず,変化の速度に時間的な違いが出てくることは,文化摩擦と呼ばれる。

4 ある社会において中心的位置にある支配的文化に対して,異議を申し立てて批判や抵抗をし,それらとは異なる新たな価値を創造・提起していこうとする文化的な働きのことは,文化伝播と呼ばれる。

5 ある文化には,個人のパーソナリティ同様,首尾一貫して統合的に理解できる思想や行動のパターンがあり,他の文化と比較しながらそれを類型化しようとする場合,文化的ヘゲモニーと呼ばれる。

 

変な問題ですね。

 

こんな問題は必ずしも正解できなくても良いですが,冷静に読めば,正解できる可能性を高めることができることを教えてくれる問題です。

 

それでは,解説です。

 

1 身体的振る舞いや家財道具,獲得した制度資格など文化的要素を帯びるものが本人や家族で蓄積・継承されて,文化現象や社会的格差を再生産することがあり,それらは文化遺産と呼ばれる。

 

何のことを言っているのか,わからないという人が多かったのではないかと思います。

 

しかし,少なくとも文化遺産ではないということはわかるはずです。それで十分です。

 

文化遺産は,ユネスコの世界遺産の種類です。

 

身体的振る舞いや家財道具,獲得した制度資格など文化的要素を帯びるものが本人や家族で蓄積・継承されて,文化現象や社会的格差を再生産することこそが今日のテーマの文化資本です。

 

2 現代国家における支配と従属の関係は文化の側面にも見られ,ある国のメディア情報や商品・ライフスタイルの浸透を通じて,他国の慣習や価値観が支配されていくことは,文化帝国主義と呼ばれる。

 

これが正解です。

 

文化帝国主義は知らなくても帝国主義は知っていることでしょう。

 

帝国主義の文化版が文化帝国主義です。

 

知っていることを手掛かりにすれば,何とか意味がわかります。

 

諦めたら,その時点で終わります。

 

 

3 産業の変化を支える科学・技術の発展に伴い物質文化の展開は急速に進むが,政治・法律や教育など非物質文化は技術変動についていけず,変化の速度に時間的な違いが出てくることは,文化摩擦と呼ばれる。

 

何のことを述べているのかわからなくても,文化摩擦は知っているでしょう。

 

産業の変化を支える科学・技術の発展に伴い物質文化の展開は急速に進むが,政治・法律や教育など非物質文化は技術変動についていけず,変化の速度に時間的な違いが出てくることは,文化遅滞です。

 

文化遅滞は,以前は何度か出題されていましたが,この第22回が最後の出題となっています。そのため,とても古臭ささを感じます。

 

4 ある社会において中心的位置にある支配的文化に対して,異議を申し立てて批判や抵抗をし,それらとは異なる新たな価値を創造・提起していこうとする文化的な働きのことは,文化伝播と呼ばれる。

 

これも何だか変な文章です。

 

ある社会において中心的位置にある支配的文化に対して,異議を申し立てて批判や抵抗をし,それらとは異なる新たな価値を創造・提起していこうとする文化的な働きのことは,抵抗文化といいます。

 

5 ある文化には,個人のパーソナリティ同様,首尾一貫して統合的に理解できる思想や行動のパターンがあり,他の文化と比較しながらそれを類型化しようとする場合,文化的ヘゲモニーと呼ばれる。

 

これが最もわけがわからないものでしょう。

 

覚える必要性はまったくありませんが,ヘゲモニーとは「覇権」と訳されるものです。

 

文化的ヘゲモニーは,支配層によって文化や思想が牛耳られていることを意味した用語です。

 

<今日の一言>

 

今日の問題で出題されたもののうち,その後に出題されたことがあるのは,文化資本だけです。

 

しかし,文化資本が正解になったことは今までにはありません。

 

とは言っても,社会的格差を考えたときは重要な概念であることは間違いありません。

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