何度受験しても合格できない人がいます。
同じ勉強を続けていけば,結果は同じです。どこかでそこに気がついてほしいと思います。
ここ何日も心理療法を取り上げていますが,同じ文章で出題されていないのがわかるでしょう。
「覚える」が「理解する」の段階までにならないと対応するのが難しいと思います。
同じ文章で出題すると,記憶力の高い人が有利です。
ソーシャルワーカーに必要なスキルの一つには,「クライエントにわかりやすいように説明する」というものがあります。
そのためには,ソーシャルワーカーが理解しなければなりません。
国家試験は,その訓練をする場であるように思うのです。
今日のテーマは,社会生活技能訓練(SST)です。
社会生活技能訓練(SST)は,ゲーム,ロールプレイ,ディスカッションなどを通し,社会の中での対人関係スキルを身につけるものです。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題14カウンセリングや心理療法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 認知行動療法では,クライエントの発言を修正せず全面的に受容することが,クライエントの行動変容を引き起こすと考える。
2 社会生活技能訓練(SST)では,ロールプレイなどの技法を用い,対人関係で必要なスキル習得を図る。
3 ブリーフセラピーでは,即興劇において,クライエントが役割を演じることによって,課題の解決を図る。
4 来談者中心カウンセリングでは,クライエントが事実と違うことを発言した場合,その都度修正しながら話を聞いていく。
5 動機づけ面接では,クライエントの変わりたくないという理由を深く掘り下げていくことが行動変容につながると考える。
これもなかなかの難問です。
ある程度理解していないと正解するのは難しいように思います。
正解は,前説のとおり,選択肢2です。
2 社会生活技能訓練(SST)では,ロールプレイなどの技法を用い,対人関係で必要なスキル習得を図る。
ロールプレイでは,自分がやってみることも重要ですが,ほかの人がやっていることを見る,ということがとても重要です。
ほかの選択肢も解説します。
1 認知行動療法では,クライエントの発言を修正せず全面的に受容することが,クライエントの行動変容を引き起こすと考える。
ラポールを形成する際は,クライエントの発言を修正せず全面的に受容することが大切です。
しかし,これがクライエントの行動変容を引き起こすと考えるのは,認知行動療法というよりもむしろ,来談者中心療法だと言えるでしょう。
認知行動療法,特に認知療法に近いものは,クライエントの自動思考を修正するようにかかわっていくからです。
3 ブリーフセラピーでは,即興劇において,クライエントが役割を演じることによって,課題の解決を図る。
即興劇を用いるのは,心理劇です。
4 来談者中心カウンセリングでは,クライエントが事実と違うことを発言した場合,その都度修正しながら話を聞いていく。
先述のように,来談者中心カウンセリングは,修正することはありません。
非指示的であるところに特徴があります。
5 動機づけ面接では,クライエントの変わりたくないという理由を深く掘り下げていくことが行動変容につながると考える。
動機づけ面接は,クライエントの動機づけを高めるために行います。
クライエントの変わりたくないという理由を深く掘り下げていくことは,むしろ精神分析療法に近いと言えます。
動機づけ面接は,例えば禁煙するための動機づけを高めるために行います。
たばこをやめたくないという理由を掘り下げるのではなく,クライエント自身が禁煙したくなるようにかかわっていきます。