2024年7月31日水曜日

「あいまい表現に正解多し」 リターンズ!

 以前,中学受験を目指す小学生の話を書きました。有名進学塾の小学生に国試問題を解かせたところ,半分の問題が解けた,という話です。


これは,知識がなくても,問題が解けるものが半数近くある,ということを示しています。


変に知識がない分,シンプルに問題に取り組むことができることもあるかもしれません。


有名中学の入試問題は,単純な知識を問うような問題は少ないです。

電車の中などに入試問題が広告に使われているので見たことのある人もいると思いますが,記述式の出題になっています。


たとえば「疎開とは何か,100字以内で答えなさい」といった問題です。


社会福祉士の問題は,決して深掘りしてきません。


しかし,理論が中心の科目は,表現をいろいろ変えて出題されるので,丸暗記は通用しにくいです。


そこでのアドバイスです。理論系の知識は,簡単にでも人に伝えられるくらいの理解できていると良いです。


さて,話は戻りますが,国試は不適切問題を出さないために,正しい選択肢は確実に正しく,それ以外は確実に間違いにしなければなりません。

作問がうまくない人が作成した問題は,不自然な言い回しになります。


今日の問題は,そんな表現のオンパレードです。


第25回・問題146

障害者が職場に適応できるよう職場に出向き,一定期間継続的に支援するとともに,職場の上司や同僚等にも必要な助言等を行う職場適応援助者(ジョブコーチ)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 職場適応援助者の就労支援の対象となる障害者は,障害者手帳を持つ者に限られる。

2 職場適応援助者は,地域障害者職業センターだけでなく,社会福祉法人等が設置する就労継続支援B型事業所や民間企業にも配置されている場合がある。

3 職場適応援助者の養成研修及び支援スキル向上研修を行っているのは,独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構だけである。

4 職場適応援助者による就労支援を受ける障害者は,障害者総合支援法に基づき,それに要する費用について,本人の収入に応じて一部負担が求められる。

5 職場適応援助者の資格要件については,障害者職業カウンセラーと同様,「障害者雇用促進法」で規定されている。


何に気づきましたか? 


選択肢の問題だけではなく,設問自体も摩訶不思議ではないでしょうか。

問題文にわざわざジョブコーチの役割を書き込まなくても良いと思いませんか。


職場適応援助者(ジョブコーチ)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

これでよいはずです。


障害者が職場に適応できるよう職場に出向き,一定期間継続的に支援するとともに,職場の上司や同僚等にも必要な助言等を行う


をつけた意味を考えると,簡単には正解を選ばせないためのカムフラージュではないかと感じてしまいます。


それでは,詳しく見て行きます。ただし,こんな変な問題はもう出題されないでしょう。


1 職場適応援助者の就労支援の対象となる障害者は,障害者手帳を持つ者に限られる。


「限られる」「のみ」など,限定した表現は,国試で誤りの文章を作る場合の常とう手段です。


もちろん限られません。よって間違いです。


2 職場適応援助者は,地域障害者職業センターだけでなく,社会福祉法人等が設置する就労継続支援B型事業所や民間企業にも配置されている場合がある。


ジョブコーチは以下の3類型があります。


地域障害者職業センター配置型 ➡ 地域障害者職業センターに配置されるジョブコーチ。

第1号職場適応援助者 ➡ 福祉施設に配置されるジョブコーチ。

第2号職場適応援助者 ➡ 民間企業等の事業主が配置するジョブコーチ。


問題文は,第1号,第2号ジョブコーチのことを述べています。よって正解です。


先に書いた,設問です。


障害者が職場に適応できるよう職場に出向き,一定期間継続的に支援するとともに,職場の上司や同僚等にも必要な助言等を行う


と書かれているので,勉強不足の人は,「福祉事業所や民間事業所には配置されない」と考えた人もいるかもしれません。


それが正解隠しのカムフラージュという意味です。それよりも,ここで着目してほしいのは,「配置されている場合がある」という表現です。


この学習部屋では,何度も紹介している


あいまい表現に正解多し


を覚えていますでしょうか。


言い切り表現の場合(例:配置されないなど)は,数多くの事象の中に,たった1回でもその事象が現れると命題は成立しません。


その逆に


あいまい表現の場合(例:配置されている場合がある)は,数多くの事象の中に,たった1回でもその事象が現れると命題が成立します。


それが「あいまい表現に正解多し」のからくりです。


しっかり押さえておきましょう。


3 職場適応援助者の養成研修及び支援スキル向上研修を行っているのは,独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構だけである。


「だけ」「のみ」「限られる」は,選択肢1で紹介しましたように,誤りになることが多いです。


もちろんこの場合でも,同機構以外でも実施しています。よって間違いです。


ただし,「のみ」がついていても正解になることがあります。例えば,生活保護における保護施設の設置主体などがそうです。


4 職場適応援助者による就労支援を受ける障害者は,障害者総合支援法に基づき,それに要する費用について,本人の収入に応じて一部負担が求められる。


障害者の就労支援には,一般就労を目指す「障害者雇用促進法」と,福祉的就労を目指す「障害者総合支援法」の2つがあります。


障害者総合支援法の就労支援は,就労移行支援事業と就労継続支援事業の2つしかありません。そのほかの就労支援は,ほぼ障害者雇用促進法によるものです。


ジョブコーチは,障害者雇用促進法に基づく支援であり,障害者総合支援法のように一部負担は求められません。よって間違いです。


ジョブコーチを利用する場合,その費用負担がどうなっているかは分からない。どうしようとあわててしまう人もいるかもしれません。


ここでヒントです。


法律は,きっちりその領域が決められています。


ほかの領域を犯すことはありません。その場合は,根拠法に規定されます。


つまり,ジョブコーチは,障害者雇用促進法が根拠法なので,障害者総合支援法には基づかないということです。これもしっかり覚えておきましょう。


5 職場適応援助者の資格要件については,障害者職業カウンセラーと同様,「障害者雇用促進法」で規定されている。


これも下手な文だと思います。


嘘をつく犯罪者と同じようなにおいがします。


犯罪者に限らず,人は嘘をつくときは,知らず知らずに饒舌になる傾向があることは皆さん知っていることでしょう。


この選択肢は単純に


職場適応援助者の資格要件は,「障害者雇用促進法」で規定されている。


といった文章で事足ります。


障害者職業カウンセラーと同様といった表現は,聞きもしないのに余計なことを言って,疑惑を深める容疑者のようなものです。


この選択肢が


職場適応援助者の資格要件は,「障害者雇用促進法」で規定されている。


という文章なら,勉強不足の人は,これを正解に選んだ人が多かったのではないか,と予測できます。


正しくは,第1号,第2号ジョブコーチは資格要件がありますが,配置型ジョブコーチの資格要件は特に定められていません。


この理由はよく分かりませんが,第1号・第2号は,センター以外に配置されるので,質がより求められるということがあるのではないでしょうか。


<今日のまとめ>


今日の問題の中では,選択肢5はものすごく細かい出題だと思います。


しかし,ちゃんと勉強した人なら,ジョブコーチは3類型があることを知っているはずなので,こんなところに引っ掛けられることなく,正解できたと思います。


今勉強するととても細かい出題のように感じますが,それは正解の周りを固める誤りの文章だからです。正解は意外なほどシンプルなことが多い傾向にあります。


近年の問題は,シンプルな言い回しになってきているので,しっかり勉強すると得点できるように出題されています。それを信じて,一歩一歩進んでいきましょう! 

2024年7月30日火曜日

市町村,都道府県の役割を徹底解剖

市町村と都道府県の役割は法制度の科目では頻出です。


しっかり押さえて得点を稼ぎましょう。合否を分けるのは案外こんなところにあるのではないでしょうか。


<押さえるポイント>


市町村は,国民に最も近い基礎的自治体。

それをカバーするのは都道府県。


※国は,基本指針や基本計画で,条件整備をします。



市町村は,基礎的自治体なので,基本的な相談窓口は市町村にあります。


基本的な相談は市町村が行い,専門的相談は都道府県が行います。


専門的な相談窓口には,障害者領域では,身体障害者更生相談所,知的障害者更生相談所,そして,児童領域では,児童相談所があります。


高齢者は,都道府県には専門的な窓口はありません。高齢者はすべて市町村が担います。

手帳関係では,身体障害者手帳,精神障害者福祉手帳,療育手帳は,都道府県が交付します。


母子健康手帳は,市町村が交付します。介護保険証は,市町村が交付します。



<効率的,かつ効果的な覚え方のコツ>


①基本ライン(上記の「押さえるポイント」)を覚える。


②市町村・都道府県の役割が出てきたら,基本ラインを思い出す。


③基本ラインのままだったら,そのまま覚える。


④基本ラインと違ったら,特にそこを重点的に押さえる。



<応用編>


「基本計画」「基本方針」と出てきたら,国の役割です。


しかし,同じように「基本」がついていても「基本構想」となると,国ではなく,地方公共団体の役割となります。


さて,それでは今日の問題です。


問題25回・問題142 

児童家庭相談における児童相談所と市町村の制度的関係に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 児童虐待を受けた児童については,住所地を管轄する市町村が通告を受理し,必要に応じ子どもの心理学的,社会学的,医学的判定を行う。

2 市町村は,乳児院,児童養護施設等入所型の児童福祉施設への措置を必要と認める場合には,その児童を児童相談所に送致する。

3 市町村長は,療育手帳についての申請を受け付け,児童相談所の判定結果をもとに療育手帳を交付する。

4 児童相談所長は,児童委員の職務について,市町村長に委任して必要な指示をすることができる。

5 児童相談所長は,児童福祉法第33条に基づく一時保護に関して,必要な場合,市町村長が一時保護するよう指示することができる。



先述の解説で,分かるものもあると思いますが,分からないものもあるでしょう。


それでは,詳しく見て行きましょう。


1 児童虐待を受けた児童については,住所地を管轄する市町村が通告を受理し,必要に応じ子どもの心理学的,社会学的,医学的判定を行う。


判定は,かなり専門的なものです。


市町村ができるようなものではありません。


判定は児童相談所の業務です。


よって間違いです。


児童相談所は判定を行う専門機関です。専門的な業務は市町村の役割ではありません。


2 市町村は,乳児院,児童養護施設等入所型の児童福祉施設への措置を必要と認める場合には,その児童を児童相談所に送致する。


児童福祉施設への入所措置を行うのは,都道府県知事です。


その流れは,入所措置が必要だと認められる場合,市町村は児童相談所に送致し,児童相談所が必要と認める場合,都道府県知事に報告して,入所措置をとります。


よって正解です。


保護処分で,児童自立支援施設送致,児童養護施設送致の場合も,都道府県知事の措置が必要となります。


入所措置は,かなり高度な判断です。専門的で高度な判断を伴う業務は,市町村では行いません。


3 市町村長は,療育手帳についての申請を受け付け,児童相談所の判定結果をもとに療育手帳を交付する。


市町村長が交付する手帳は,母子健康手帳です。


療育手帳を交付するのは都道府県知事です。


よって間違いです。


障害者手帳の交付は専門的ですよね。


判断は児童相談所に行ってもらったとしても,かなり高度であることは間違いないです。


それに比べて・・・


母子健康手帳の妊娠したことを届け出た妊婦に対して交付するものです。


専門性の違いは歴然としていますね。専門的で高度な判断は必要とされていないからです。


4 児童相談所長は,児童委員の職務について,市町村長に委任して必要な指示をすることができる。


これは,ちょっと難しいです。


児童福祉法では,児童委員は,


児童福祉司又は福祉事務所の社会福祉主事の行う職務に協力すること。


児童委員は、その職務に関し、都道府県知事の指揮監督を受ける。


市町村長は、児童委員に必要な状況の通報及び資料の提供を求め、並びに必要な指示をすることができる。


と定めているだけで,児童相談所長が,市町村長に委託して必要な指示を出すことについての規定はありません。


よって間違いです。


このような「基本ライン」とは違うものは,特にねらわれやすいポイントとなりやすいです。


「児童相談所長が市町村長に委託して必要な指示を出す」は聞いたことがない。 ➡ 勉強不足


このように思ってしまうと,迷いの森に入り込みます。


聞いたことがないのは,勉強不足ではありません。こんな規定はないからです。


このように強い気持ちを持つことが,国試での実力発揮につながります!!



5 児童相談所長は,児童福祉法第33条に基づく一時保護に関して,必要な場合,市町村長が一時保護するよう指示することができる。



一時保護は,かなり判断が難しいですし,専門性は極めて高いです。


市町村長ができるようなものではないです。


よって間違いです。


一時保護を行うのは児童相談所長です。


一時保護を開始する場合,親権者等の意に反して2か月を超えて一時保護を行う場合は,家庭裁判所の承認を得ることが必要です。



<今日の一言>


基本ラインを押さえておけば,市町村,都道府県の役割の違いを押さえるのが簡単になります。


試験会場でも「あれっ,どっちだったっけ?」といった度忘れがなくなります。


おまけ


児童相談所は,従来,都道府県,指定都市は必置,中核市はおくことができるとされていました。


児童福祉法の改正により,特別区(東京23区)もおくことができるようになりました。


2024年7月29日月曜日

社会福祉士は多職種連携の要です

 

社会福祉士及び介護福祉士法において,社会福祉士は以下のように定められています。

 

(定義)

第二条 この法律において「社会福祉士」とは、第二十八条の登録を受け、社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者(第四十七条において「福祉サービス関係者等」という。)との連絡及び調整その他の援助を行うこと(第七条及び第四十七条の二において「相談援助」という。)を業とする者をいう。

 

 

社会福祉士とは

 

①ソーシャルワークのプロフェッショナル

 

であるのと同時に,

 

②福祉・医療関係者との連絡・調整を行う専門職

 

であることが分かります。

 

①と②は,実は違うスキルが求められます。

 

①ソーシャルワークのプロフェッショナルとしては,傾聴や自己決定などのケースワークのスキルが中心となります。

 

②福祉・医療関係者との連絡・調整としては,ファシリテーション,そしてアサーションスキルなどが必要です。

 

 

法では

 

(連携)

第四十七条 社会福祉士は、その業務を行うに当たつては、その担当する者に、福祉サービス及びこれに関連する保健医療サービスその他のサービス(次項において「福祉サービス等」という。)が総合的かつ適切に提供されるよう、地域に即した創意と工夫を行いつつ、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。

 

 

といったように,連携の責務があることが明記されています。

 

社会福祉士が,地域包括ケアシステムが進められる中,名実ともに多職種連携の要となるためには,ファシリテーション,そしてアサーションスキルを高めることが必要だと強く思っています。

 

傾聴も必要ですが,必要な時には主張することが連携には必要です。

 

 

さて,今日の問題は,サービス担当者会議(サー担会議)です。

 

 

サー担会議は,介護支援専門員が招集して実施するものです。

 

 

社会福祉士は,ソーシャルワークの共通基盤を共有しています。

高齢者分野では,現在では社会福祉士が増えてきているとは言え,まだまだ少ないのが実情です。

  

ちょっと飛躍して想像してみましょう。

  

社会福祉士は,それぞれが連携の責務を負っています。

 

もし,サービス担当者会議(サー担会議)に参加するメンバーがみんな社会福祉士だった場合,より高度なサー担になるのではないでしょうか。基礎資格が違っても,共通基盤を共有しているからです。

 

看護師の社会福祉士,介護福祉士の社会福祉士,そして介護支援専門員の社会福祉士,それぞれの専門性で意見を出し合いながら,サー担ができるとステキだと思いませんか。

 

夢はさておき今日の問題を見ましょう。

 

 

25回・問題133

居宅サービスにおけるサービス担当者会議に関する次の記述のうち,「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」に照らして正しいものを1つ選びなさい。

1 サービス担当者会議は,居宅サービス計画にかかわる担当者を招集し,サービス利用者や家族等の情報を共有するとともに,専門的な見地からの意見を求める場である。

2 サービス担当者会議は,介護保険の保険者である市町村が開催し,各サービス担当者の連携を図る。

3 サービス担当者会議は,原則として,指定サービス等の担当者に対する照会により意見を求めることによって実施される。

4 サービス担当者会議は,居宅サービス計画の変更がある場合に開催され,要介護更新認定や要介護状態区分の変更の場合等は,特に必要がなければ開催しなくてもよい。

5 サービス担当者会議は,サービス利用者や家族の状況の把握と,指定サービス等の担当者間の連絡調整の場なので,利用者が会議に参加することは適切ではない。

 

 

サー担会議を知っていれば,まったく難しくないですが,知らない人にとっては,こんな問題でも確実に正解するのは,そんなに簡単ではありません。

 

 

1 サービス担当者会議は,居宅サービス計画にかかわる担当者を招集し,サービス利用者や家族等の情報を共有するとともに,専門的な見地からの意見を求める場である。

 

これが正解です。サー担会議を招集開催するのは介護支援専門員です。

 

 

2 サービス担当者会議は,介護保険の保険者である市町村が開催し,各サービス担当者の連携を図る。

 

 

サー担会議は,居宅介護サービスの利用者に対して行われます。

市町村が開催するには,市町村のでは難しいです。

  

大きな市なら,いろいろなことをする人員を確保することができるかもしれませんが,過疎地域の村の職員は,〇〇兼〇〇兼〇〇兼〇〇課長,といったことはよくある話です。

 

国はその辺りの状況はよく知っています。

  

都道府県は,市町村の調整を行います。

市町村と都道府県の役割で迷った時,そんなところをヒントにして考えてみるとよいです。

  

問題に戻ると,先述のように,サー担会議は介護支援専門員が開きます。よって間違いです。

  

3 サービス担当者会議は,原則として,指定サービス等の担当者に対する照会により意見を求めることによって実施される。

 

サー担会議は,会議です。照会では会議にはなりません。

 

招集しなければなりません。よって間違いです。

 

サー担会議を開かないでケアプランを作成すると重大な法令違反です。

 

最悪の場合,指定が取り消されます。

 

 

4 サービス担当者会議は,居宅サービス計画の変更がある場合に開催され,要介護更新認定や要介護状態区分の変更の場合等は,特に必要がなければ開催しなくてもよい。

 

 

もちろん開催しなければなりません。よって間違いです。

 

34を選んだ方は,十二分に気を付けてください。

 

実際にこんなことが行われると最悪の場合,指定が取り消されます。

 

 

5 サービス担当者会議は,サービス利用者や家族の状況の把握と,指定サービス等の担当者間の連絡調整の場なので,利用者が会議に参加することは適切ではない。

 

 

サー担会議には,利用者及び家族が参加することを基本としています。参加するのは適切です。よって間違いです。

 

社会福祉士の国家試験の法制度は,基本的には法制度の骨格が出題されます。

 

細かいところまでは,出題されないのが基本です。

 

ケアマネ試験は,制度を細かく出題してきます。

 

その違いは,今日の問題で分かるように,介護支援専門員は,法制度を知らないと仕事ができないのに対し,社会福祉士は法の執行者ではないことです。

  

法は理由があって成立しているので,現在の状況,今後求められるものを考える(想像する)ことで,何となく見えてくることもあります。

 

他の科目は,問題数が少ないので細かいところを出題すると,制度の骨格を出題する余地がなくなります。

 

国家試験の基本を押さえておかないと,どんどん深掘りしたくなり,底なし沼に引きずり込まれます。

 

危険です。

 

教科書に書かれている知識で十分にボーダーラインを超えられます。

2024年7月28日日曜日

介護サービス相談員を知っていますか?

 介護サービス相談員は,以前は,介護相談員と言われていたものです。

そのため,今日の問題は介護相談員と出題されていますが,介護サービス相談員と読み替えてください。


さて,それでは今日の問題です。



第25回・問題132

介護保険制度にかかわる専門職や人材に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 介護支援専門員は,要介護者等からの相談に応じ,サービス利用に向けて事業者等と連絡調整を行う者で,介護支援専門員実務研修受講試験の合格をもって登録される。

2 訪問介護員は,要介護者等に対して,入浴・排せつ等の介護その他の日常生活上の世話を行う者で,介護員養成研修修了者に限りその業務が認められている。

3 福祉用具専門相談員は,要介護者等への福祉用具の貸与等にかかわる相談や助言を行う者で,介護保険施設に配置される。

4 介護相談員は,介護サービス提供の場を訪ね,サービス利用者等の話を聴き,相談に応じる者で,利用者の疑問や不満の解消やサービスの質の向上を図る。

5 介護認定審査会の委員は,要介護(要支援)認定の申請を行った者につき,本人に面接し,心身状況,置かれている環境などについて調査をする。



介護サービス相談員は,都道府県の研修,あるいは指定研修を受けて,市町村に登録して活動します。



介護保険の地域支援事業の任意事業(介護サービスの質の向上に資する事業)なので,市町村が条例で定めて介護サービス相談員派遣事業を実施します。


しかし条例で定めている市町村はあまり多くありません。


派遣を希望する介護保険サービス事業者等に対して,市町村が介護サービス相談員を派遣します。


派遣された介護サービス相談員は,

・利用者の話を聞き、相談にのる

・サービスの現状把握に努める

・事業所の管理者や従事者と意見交換する


などを行いサービス提供等で気づいたこと,あるいは提案がある場合,事業所にその旨を伝えます。


介護サービス相談員は,若干の報酬はもらえますが,基本はボランティアです。積極的な問題解決を図るような性格のものではありません。



それでは詳しく見て行きましょう。


1 介護支援専門員は,要介護者等からの相談に応じ,サービス利用に向けて事業者等と連絡調整を行う者で,介護支援専門員実務研修受講試験の合格をもって登録される。


ケアマネ試験と一般的に言われますが,正しくは,「介護支援専門員実務研修受講試験」です。実務研修を受講する資格を得るための試験です。


これを受講して,登録することで晴れて介護支援専門員となります。


よって間違いです。


実務研修のカリキュラムが変わり,現場の「見学」が新しく加わっています。


カリキュラムに加わっても,実習生を受け入れしてくれる事業所がないと研修が成り立たなくなってしまいます。


国は頭がいいなぁと思うのは,この改正に伴って,特定事業所加算の算定要件に実習受け入れを加えたことです。


2 訪問介護員は,要介護者等に対して,入浴・排せつ等の介護その他の日常生活上の世話を行う者で,介護員養成研修修了者に限りその業務が認められている。


ヘルパー研修は,かつては1級から3級までありましたが,現在は廃止されています。


指定訪問介護事業者の訪問介護は,旧ヘルパー(1・2級),介護福祉士,介護職員初任者講習修了者,実務者研修修了者が行うことが認められます。


よって間違いです。


3 福祉用具専門相談員は,要介護者等への福祉用具の貸与等にかかわる相談や助言を行う者で,介護保険施設に配置される。


福祉用具専門相談員は,介護保険施設ではなく,福祉用具貸与事業所等に配置されます。

よって間違いです。


任用資格は,福祉用具専門相談員指定講習を修了した者ですが,社会福祉士,介護福祉士は指定講習を修了しなくてもなることができます。


指定講習を指定するのは,もちろん都道府県の役割です。


4 介護相談員は,介護サービス提供の場を訪ね,サービス利用者等の話を聴き,相談に応じる者で,利用者の疑問や不満の解消やサービスの質の向上を図る。


これが正解です。


都道府県等が実施する研修を受けて,介護サービス相談員になります。しかし基本はボランティアであることを忘れてはなりません。


5 介護認定審査会の委員は,要介護(要支援)認定の申請を行った者につき,本人に面接し,心身状況,置かれている環境などについて調査をする。


介護認定審査会は,一次判定を踏まえて,要介護認定のための二次判定を行う機関です。


置かれるのは市町村です。

介護保険審査会は都道府県に設置されます。


言葉が似ているので読み間違いしないように気を付けましょう。

訪問調査を行うのは,介護認定審査会の委員ではなく,訪問調査員です。


よって間違いです。

2024年7月27日土曜日

都道府県・市町村の役割の整理の仕方

法制度の科目では,その科目の出題基準に「国の役割,都道府県の役割,市町村の役割」が含まれています。


これらを正しく覚えられれば,得点力は格段に上がることとなります。


<国・都道府県・市町村の役割の基本形>


国の役割 ➡ 基本指針などを示す。


都道府県の役割 ➡ 医療に関するもの,現場職員の人材育成に関するもの,サービス評価に関するもの,体力のない市町村の調整,事業者の指定,など。


市町村の役割 ➡ サービス受付の窓口,報酬の支払い,事業者の指定,など。


ざっくりと洗い出すとこんな感じです。


重なっているのは,事業者の指定です。

事業者の指定は,基本的には都道府県の役割ですが,権限移譲で市町村が行っているものもあります。


都道府県 ➡ 介護保険事業者,一般相談支援事業者,など。


市町村 ➡ 居宅介護支援事業者,地域密着型サービス事業者,地域密着型介護予防サービス事業者,介護予防支援事業者,特定相談支援事業者,など。


基本形を押さえて,例外があればそこを覚えて行くのがコツです。


都道府県,市町村の役割は,なぜそのようになっているのかの理由を考えて,ルールを見出すことを心がけましょう!!


それでは,今日の問題です。


第25回・問題131

介護保険制度における各組織・団体等の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村は,共同で,介護保険の財政の安定化に資する事業に必要な費用に充てるため,財政安定化基金を設けることができる。

2 市町村長は,地域密着型サービス事業者,居宅介護支援事業者及び介護予防支援事業者の指定を行う。

3 都道府県知事は,介護サービス情報の公表制度に基づき,介護サービス事業者から受けた介護サービス情報の報告に関して必要と認めるときは,調査を行うことができる。

4 国民健康保険団体連合会は,都道府県の委託を受けて介護サービス費等の請求に関する審査及び支払を行い,介護サービス等の質の向上に関する調査等を行う。

5 介護保険審査会は市町村におかれ,保険給付に関する処分又は保険料等に関する処分にかかる審査請求の審査を行う。



さて,それでは詳しく見ていきましょう。



1 市町村は,共同で,介護保険の財政の安定化に資する事業に必要な費用に充てるため,財政安定化基金を設けることができる。


介護保険は,一般会計とは切り離して,特別会計で行わなければなりません。


介護保険が赤字になっても,一般会計から補てんしなくても良いように財政安定化基金が設けられています。


設置されるのは,都道府県です。


よって間違いです。


2 市町村長は,地域密着型サービス事業者,居宅介護支援事業者及び介護予防支援事業者の指定を行う。



先述のように,居宅介護支援事業者の指定は現在,都道府県が行っていますが,2018年4月からは,市町村が行います。


制度が変わる前のものは出題されない傾向がありますが,せっかくだから覚えておきましょう。


現時点(2017年11月)では,市町村が指定するのは,地域密着型サービス事業者,地域密着型介護予防サービス事業者,介護予防支援事業者です。


よって間違いです。


3 都道府県知事は,介護サービス情報の公表制度に基づき,介護サービス事業者から受けた介護サービス情報の報告に関して必要と認めるときは,調査を行うことができる。



都道府県は人材育成や,サービスの質に関連するものを担っています。


よって正解です。


事業所の職員の研修事業は,ほとんどが都道府県ですが,市民後見人など,市民を対象とする事業は,市町村が行っています。


4 国民健康保険団体連合会は,都道府県の委託を受けて介護サービス費等の請求に関する審査及び支払を行い,介護サービス等の質の向上に関する調査等を行う。



報酬の支払いは,介護保険も障害者も市町村です。


都道府県ではありません。


よって間違いです。


5 介護保険審査会は市町村におかれ,保険給付に関する処分又は保険料等に関する処分にかかる審査請求の審査を行う。



介護保険審査会は,不服申し立てを審査する機関です。


都道府県が設置しなければなりません(必置)。


よって間違いです。


障害者にも同じような障害者介護給付等不服審査会というものがあります。


都道府県が設置しますが,介護保険と違い,設置は任意です。


この違いは,社会保障制度の違いなのかなぁ,と思います。


介護保険は保険料を拠出するので権利性が強いのに対して,障害者福祉は,事前の拠出を前提としない福祉制度なので,権利性はそれほど強くならない,といった傾向があるからです。

2024年7月26日金曜日

得点力を上げる勉強法とは?

 

40歳,50歳だから・・・と言う声も聞くこともありますが,年齢はそんなに関係しません。

 

最後は「合格したい」という意欲の強さが物を言います。

 

逃げ道は作らないようにしましょう。

覚えられない,と思うと心が弱くなります。マイナス言葉はやめましょう。

  

さて,今日のテーマは,「得点力を上げる勉強法とは?」です。

 

知識をつける勉強法ではありません。

 

得点力を上げる勉強法です。

 

ちゃんと勉強して過去に受験した経験のある人なら,合格するために必要な知識が足りない,ということはないと思います。

 

得点力を上げるコツは,法制度をしっかり覚えることです。

 

人名や歴史は,合格する人でも苦手としています。

合否を分けるのは,そういうものではなく,法制度をいかにしっかり覚えるかです。

 

市町村なのか,都道府県なのか。

義務なのか,任意なのか。

標準なのか,基準なのか。

根拠法は何なのか。

調和なのか,一体なのか,整合性なのか。

 

ほかにもたくさんあります。

 

曖昧な知識では,法制度はすぐ引っ掛けられてしまうのです。

得点力は,法制度をしっかり押さえることに他なりません。

 

<合格までのプロセス>

 

知識がない  曖昧な知識  しっかりした知識  得点力アップ  国試合格

 

書いて覚える人もいるでしょう。

 

これから書くのは,新しい発見,(何度も)間違った問題だけで良いです。

 

国試でどのように出題されているかのも分からずに,ひたすら参考書の内容を写し取るといった非効率な勉強はやめましょう。

 

これは,来年度以降受験する人も一緒です。

 

さて,今日の問題です。

  

25回・問題125

労働契約や就業規則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 事業所の規模に関係なく,使用者は就業規則を作成し,所轄の労働基準監督署に届け出なければならない。

2 使用者は就業規則を,労働者に対して周知する必要がある。

3 労働契約が就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める場合は,労働契約で定める基準が有効になる。

4 使用者は時間外労働や休日労働について,就業規則に規定しておくことで,労働者に命令することができる。

5 使用者は就業規則の変更によって労働条件を変更しようとする場合,労働者に不利益な内容であっても,労働者の過半数の合意をとれば変更できる。

 

今日の問題は,労働基準法と労働契約法からの出題です。

 

ロンドンでブースが行った貧困調査で明らかになったのは,雇用や環境の問題です。

 

国家が貧困問題に関与していくことが必要であることを証明するものでもありました。

 

無産階級である労働者は,労働力を商品にして賃金を得ます。

 

商品となる労働力の金額は,雇用者が決めます。

 

その金額に納得できる人を採用します。

 

つまり基本的には,労働力は買い手市場にあり,労働力に低い金額しかつけられなかった時,労働者は貧困になります。

 

ブースの調査によってロンドン市民の実に3割が貧困線以下の生活を送っていることが分かりました。

 

国が労働者を保護しないと労働者はいつも弱い立場にあることを忘れてはいけません。

 

 

なお,日本の労働者保護の法律は,工場法(1911)が最初です。

この法律は戦後に労働基準法(1947)が成立するまで存続しました。

 

労働契約法は2007年に成立のまだ新しい法律です。

 

労働基準法は,労働条件を規定する法

 

労働契約法は,契約のルールを規定する法

 

労働基準法は,労働基準監督署が厳しい目で監視しています。

 

労働契約法は民法の発展版の位置付けなので,違反があっても労働基準監督署の指導は行われることはありません。

 

それでは詳しく見て行きましょう。

 

 

1 事業所の規模に関係なく,使用者は就業規則を作成し,所轄の労働基準監督署に届け出なければならない。

 

これは労働基準法からの出題です。

 

「事業所の規模に関係なく」が間違いです。

 

10名以上の労働者を雇用する事業者が対象となります。

 

よって間違いです。

 

この問題は知らなくても×はつけられることでしょう。

 

なぜなら「事業所の規模に関係なく」といったわざわざ条件をつけているのは,また外選択肢をつくるための常とう手段だからです。

 

2 使用者は就業規則を,労働者に対して周知する必要がある。

 

これも労働基準法からの出題です。

 

これが正解です。

 

就業規則を作成しても,労働者がそれを知らなければ意味はありません。

当然だと思いませんか?

 

3 労働契約が就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める場合は,労働契約で定める基準が有効になる。

 

これは労働契約法からの出題です。

いかにルールという感じです。

 

労働契約の方が低い場合,それが有効となるのであれば,就業規則は何の意味もなくなります。おかしな問題ですね。

 

もちろん無効となります。

 

そして有効となるのは就業規則の基準です。

よって間違い。

 

4 使用者は時間外労働や休日労働について,就業規則に規定しておくことで,労働者に命令することができる。

 

これは労働基準法からの出題です。

 

大きな組織にいる人なら「36(サブロク)協定」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

労働組合などと36協定を結んでおけば,時間外労働などを命じることができます。

 

よって間違い。

 

5 使用者は就業規則の変更によって労働条件を変更しようとする場合,労働者に不利益な内容であっても,労働者の過半数の合意をとれば変更できる。

 

 

これは労働契約法からの出題です。

 

労働基準法も労働契約法も労働者を保護するための法律です。

 

労働者に不利なことは認めることはないです。就業規則を変更する時は,労働者の合意が必要で,たとえ合意があっても不利益な内容には変更できないことになっています。

 

よって間違い。

 

法制度の問題を解く時には,その法律はなぜ作られたのかを考えると解ける問題もあります。

 

覚えるときも,ここを意識すると得点力が上がります。

 

逆に・・・

 

機械的に覚えることは,得点力を上げることにはなかなかつながりません。

2024年7月25日木曜日

ワーク・ライフ・バランスは,新しい日本を作る!

 

日本は,昭和3040年代にかけて,高度経済成長を成し遂げました。

 

その時代の典型的家族は,核家族で父は外で働いてお金を稼ぎ,母は専業主婦というものです。

 

共働き家族が多くなったのは,1990年代の後半のことです。

 

それから20年余りが過ぎ,新しいライフスタイルが目指されています。

その一つがワークライフバランス(仕事と生活の調和)です。

 

本当にライフスタイルを考えるターニングポイントに差し掛かっているように思います。

 

ある政党の代表は,ガラスの天井の上に「鉄の天井があることを知った」と語りました。

 

文化や科学が進化しても,人の考え方は大きくは変わりません。このタイムラグを社会学では「文化遅滞」と言います。

 今,本当に考えなければならない時期が来ているのかもしれません。

 

さて,今日の問題は,出産,子育てに関する法規定に関するものです。

 

 おそらく,これからも繰り返し出題されていくものだと思います。

 しっかり押さえましょう!!

  

25回・問題124

妊娠・出産・育児に関連する法律に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 労働基準法に定められている産前産後休業の6週間の間であっても,労働者の請求があれば,就業させることができる。

2 「育児介護休業法」に定められている育児休業は,契約期間のある非正規職員は取得できない。

3 「育児介護休業法」では,病気やけがをした子のための看護休暇が取れ,日数に制限はないと規定する。

4 労働基準法は,妊娠中の女性に対して,請求の有無にかかわらず,深夜労働をさせてはならないと規定する。

5 「男女雇用機会均等法」は,女性の妊娠,出産,産前産後休業の請求や取得を理由とした解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと規定する。

 

いろいろな法律が出題されているので,難しく感じると思いますが,冷静に読めば,法制度を知らなくても解ける可能性はあります。

 

焦らないのが必勝法です。

 

それでは,詳しく見て行きましょう。

 

1 労働基準法に定められている産前産後休業の6週間の間であっても,労働者の請求があれば,就業させることができる。

 

かつては出産ぎりぎりまで働いたという人も多かったと聞きます。

 

しかし,それで何が起きたかと言えば子の流産や母の死亡などです。

 

周産期はとても危険です。

そのために,母性保護のために,産前産後は就業させてはならないという規定が設けられました。

 

もし本人から請求があった場合は,就業させることが出来るので,この規定はなし崩し的になり,母性保護にはならなくなってしまいます。

 

もちろん間違いです。

 

2 「育児介護休業法」に定められている育児休業は,契約期間のある非正規職員は取得できない。

 

非正規職員は育児休業が取れないということなら,非正規職員は仕事ができなくなってしまいます。

契約期間のある非正規職員の場合は,雇用期間が1年以上あることなどの制約はあるものの育児休業は取れます。

 

よって間違いです。

 

3 「育児介護休業法」では,病気やけがをした子のための看護休暇が取れ,日数に制限はないと規定する。

 

このような問題が出題された時は,極端な例を考えてみると良いです。

 

具体的には,日数に制限がない,ということなら,何か月も休むことができるということになってしまいます。

 

もちろん制限はあります。

 

看護休暇の期間は,子ども一人に対して年間5日までです。

 

よって間違いです。

 

看護休暇の改正(2025年4月~)

子の対象が小学校3年生修了まで(現在は小学校入学前)に拡大され,休暇の理由に,学校の行事も含まれることになりました。

 

4 労働基準法は,妊娠中の女性に対して,請求の有無にかかわらず,深夜労働をさせてはならないと規定する。

 

 入所型施設でケアに携わる仕事をする場合は,深夜労働はつきものです。

 法では,妊産婦が請求した場合,深夜労働をさせてはならないと規定されています。

 

よって間違いです。

 

5 「男女雇用機会均等法」は,女性の妊娠,出産,産前産後休業の請求や取得を理由とした解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと規定する。

 

<労働基準法と男女雇用機会均等法の違い>

 

労働基準法  労働条件を規定する法

男女雇用機会均等法  特に女性の労働環境を整備するための法

 

男女同一賃金を定めているのは,どっちの法でしょうか。

 

答えは,労働基準法です。

 

国試では,過去に2回ほど男女雇用機会均等法で規定していると出題されていましたが,間違いですね。

 

さて,問題に戻ります。これは正解です。

 

先述のように男女雇用機会均等法は,特に女性の労働環境を整備するための法であることはしっかり押さえておきたいです。

 

高度経済成長の時代には,モーレツ社員という働き方がありました。

 

その陰には,女性のシャドウワーク(家事や家族介護などのような賃金が支払われない労働)が支えていたことを忘れてはいけません。

2024年7月24日水曜日

コンティンジェンシー理論は,激しい環境変化の時代だからこそ覚えておきたい!!

変化の小さいときは,経験が大きな武器となります。


変化が大きい時は,逆に経験は邪魔になることがあります。


さて,今日のテーマは,


コンティンジェンシー理論は,激しい環境変化の時代だからこそ覚えておきたい!!

です。


コンティンジェンシーは,直訳すると「不測の事態」という意味です。


コンティンジェンシー理論とは,状況によって対応法が変わるという考え方です。


組織も環境も,最善の方法は唯一ではありません。


組織のリーダーシップであれば,組織を立ち上げる時,成長途中,安定期では変わるわけです。


組織の構造も,内部,外部の環境によって変わります。

ここをしっかり押さえておけば,コンティンジェンシー理論は怖くないです。


それでは今日の問題です。


第25回・問題120 

組織構造や環境に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 あらゆる環境に適した組織化の唯一最善の方法が存在するという考え方を,コンティンジェンシーアプローチと呼ぶ。

2 外部環境が不確実であるほど,組織は多くの規則や手続きを備え,明白な階層構造を持ち,中央集権化された機械的な管理システムとなる傾向にある。

3 有機的な管理システムでは,仕事内容が専門分化され,垂直方向のコミュニケーションが多く見られる。

4 官僚制は,ルールや手続き,専門化と分業,権限の階層構造などの特徴を持ち,組織を有効に機能させる上で利点がある。

5 組織にとって,環境不確実性の低い状況とは,外部環境が複雑で不安定な場合をいう。


組織理論は難しいですが,社会福祉士が組織の調整機能を持つと考えると,とても重要です。


それでは詳しく見ていきましょう。


1 あらゆる環境に適した組織化の唯一最善の方法が存在するという考え方を,コンティンジェンシーアプローチと呼ぶ。


あらゆる環境に適した組織化の唯一最善の方法は存在せず,状況によって変わる,とするのがコンティンジェンシーアプローチです。

しっかり覚えていきましょう!!


もちろん誤りです。


2 外部環境が不確実であるほど,組織は多くの規則や手続きを備え,明白な階層構造を持ち,中央集権化された機械的な管理システムとなる傾向にある。


機械的な管理システムとなる傾向が強くなるのは,外部環境の変化が少ない時です。

よって×。


外部環境が不確実であるほど,変化に柔軟に対応できるシステムが求められます。


3 有機的な管理システムでは,仕事内容が専門分化され,垂直方向のコミュニケーションが多く見られる。


有機的,機械的という表現が,この試験ではよく使われます。


有機的とは,変化すること。

機械的とは,変化しないこと。


組織の形態には,トップダウン型のライン型組織があります。


ライン型組織は,各専門部門が独立して働いているので,水平方向のコミュニケーションはそれほど多くは行われません。


機械的な管理システムは,ライン型組織だと言えます。有機的ではありません。


よって×。


4 官僚制は,ルールや手続き,専門化と分業,権限の階層構造などの特徴を持ち,組織を有効に機能させる上で利点がある。


これが答えです。


官僚制は,組織を動かすための仕組みを言います。


難しめの問題ですが,結局答えは超頻出の官僚制でした。


国家試験はこんなものです。


5 組織にとって,環境不確実性の低い状況とは,外部環境が複雑で不安定な場合をいう。


言葉遊びのような問題になっています。


環境不確実性が高い ➡ 変化が大きいこと。

環境不確実性が低い ➡ 変化が小さいこと。


よって×。


この科目が苦手な人は多いかもしれません。


しかし,意外と押さえるべきポイントは少ないです。

しっかり押さえていけば,点数は取れます。

2024年7月23日火曜日

2016年の社会福祉法人改革のポイント

今回は,2016年(平成28)年の社会福祉法の改正によって行われた社会福祉法人改革です。


1.社会福祉法人制度の改革

・経営組織のガバナンス強化


<評議員会>


評議員会は,これまでは一部の社会福祉法人を除いて,設置は任意とされていました。


今回の改正で,評議員会は必置となり,役割は今までの諮問機関から「議決機関」へと変わりました。


理事,監事,会計監査人の選任や解任を行うことになります。


また役員報酬も決定します。


資格者は,「社会福祉法人の定期性に運営に必要な識見を有する者」となります。


評議員の人数は,これまでは理事の定数の2倍を超える数とされていましたが,この改正で,理事の員数を超える数(6名以上)となりました。


理事との兼任は出来ません。


<理事会>


理事会は,業務執行に関する意思決定機関に位置付けられました。


評議会で選任された理事は理事会を開き,理事長を選出します。


理事長以外に,法人の業務を執行する理事として,業務執行理事を選任することができます(必置ではない)。


ただし,業務執行理事は代表権を持ちません。


理事は,理事長,業務執行理事,それ以外の理事に分類されます。


その他の理事は,業務執行の意思決定に参画するとともに,他の理事長その他の理事の職務の執行を監督することになります。


理事の中には,


①社会福祉事業の経営に関する識見を有する者

②法人が行う事業の区域における福祉に関する事業に通じている者

③法人が施設を設置している場合は,当該施設の管理者


が含まれていなければなりません。


<幹事>


幹事は,理事の職務執行を監査します。

理事会への出席と報告が義務付けられました。


監事には,

①社会福祉事業に識見を有する者

②財務管理に識見を有する者

が含まれていなければなりません。


<会計監査人>


会計監査人は,一定規模以上の法人への会計監査人による監査が義務付けられました。


会計監査人は,公認会計士又は監査法人でなければなりません。


因みに,平成24年から社会福祉法人の会計基準が導入され,平成27年からすべての法人で実施されています。



・運営の透明性の確保について


 定款,事業計画書,役員報酬総額,事業計画書を閲覧対象にして,閲覧請求者をこれまでの利害関係者から国民一般に広げています。


これらは,備え置き・閲覧だけではなく,ホームページ等を活用して公表します。



・社会福祉法人の財務規律について


 社会福祉法人が保有する財産のうち,社会福祉充実財産(再投下対象財産)を明確にして,社会福祉充実財産が生じた法人は,社会福祉充実財産を策定します。


使い道は,社会福祉事業,地域公益事業,公益事業の順に既存事業の充実や新たな取組みを検討します。



・地域における公益的な取組みについて


社会福祉法人は,公益性,非営利性の高い法人であることを踏まえて,「地域における公益的な取組み」を行う責務があることが明記されました。


ただし,責務(提供するよう努めなければならない)であり,義務付けられているものではないことに注意しましょう。


これによって,従来の社会福祉事業に加えて,無料又は低額の社会福祉事業,従来の公益事業に加えて,無料又は低額の公益事業を行うことになります。


この無料又は低額の公益事業が,地域公益事業と呼ばれるものです。


社会福祉法人改革のポイントを挙げてみました。


国試ではここまで詳しく覚えておかなくても解ける問題が出題されてくるとは思いますが,福祉を実施する担い手として社会福祉法人は重要なので,しっかり覚えておきましょう。



それでは,今日の問題です。


第25回・問題119

社会福祉法人が行う事業に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 自主的に福祉サービスの質の向上に取り組むとともに,地域住民が求める限りにおいて,事業経営を透明にすることに,できるだけ協力しなくてはならない。

2 社会福祉事業を実施する必要があるが,当該法人の実施する事業において社会福祉事業は主たる地位を占める必要はない。

3 公益事業において剰余金が生じたときには,当該社会福祉法人の社会福祉事業や公益事業に充てることとされている。

4 収益事業として行う事業は,法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるものや投機的なものはもちろん,福祉に関連しないものは適当ではないとされている。

5 社会福祉事業を行うために必要な物件について,所有権を持つべきかどうかについて,特段の定めはない。


この問題は,まだ改革が始まる前の出題なので,極めてスタンダードなものです。

しっかり押さえていきましょう。


1 自主的に福祉サービスの質の向上に取り組むとともに,地域住民が求める限りにおいて,事業経営を透明にすることに,できるだけ協力しなくてはならない。



社会福祉法では


(経営の原則)

第二四条 社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため,自主的にその経営基盤の強化を図るとともに,その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならない。

と明記しています。


地域住民が求める限りできるだけ協力しなければならないではありません。


よって×。


2 社会福祉事業を実施する必要があるが,当該法人の実施する事業において社会福祉事業は主たる地位を占める必要はない。


社会福祉法人は,社会福祉事業の他に公益事業及び収益事業を行うことができます。

しかし,社会福祉事業は主たる地位を占めていなければなりません。


よって×。


3 公益事業において剰余金が生じたときには,当該社会福祉法人の社会福祉事業や公益事業に充てることとされている。


これが正解です。


4 収益事業として行う事業は,法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるものや投機的なものはもちろん,福祉に関連しないものは適当ではないとされている。


収益事業は,福祉に関連しないものでも行うことができます。よって×。

福祉に関連しないものができないのは,公益事業です。


5 社会福祉事業を行うために必要な物件について,所有権を持つべきかどうかについて,特段の定めはない。


社会福祉法人審査基準では,「社会福祉事業を行うために必要な物件は,所有権を持っていること,または貸与,使用許可を得ていること」と規定しています。


よって×。

2024年7月22日月曜日

スーパービジョンの機能

スーパービジョンは毎年出題されています

絶対に覚えておきたいものの筆頭の一つです。

 

それでは今日の問題です。

 

25回・問題117

 L社会福祉士が部下のK社会福祉士に対して行うスーパービジョンに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 利用者から,K社会福祉士についての苦情を聴き,すぐにそれを施設管理者に人事考課のための情報提供として伝える。

2 K社会福祉士が,利用者とかかわるのがつらいと話しながら泣いてしまったので,共感を示すために一緒に泣く。

3 K社会福祉士の業務負担や力量,そしてケースの困難度を勘案して,担当ケース数を配慮する。

4 利用者への支援について,K社会福祉士から逐一報告してもらい,効率的に業務を遂行するために細かく指示を出す。

5 K社会福祉士が,利用者の意向を確認していないことがよくあることを指摘し,上司として自分が利用者の意向の確認を行う。

 

スーパービジョンの機能には,以下の3つがあります。

 

管理的機能

教育的機能

支持的機能

 

スーパービジョンの種類には,以下のようなものがあります。

 

個別スーパービジョン

グループスーパービジョン

ピアスーパービジョン

ライブスーパービジョン

セルフスーパービジョン

 

これらをしっかり覚えておきましょう。

 

それでは,詳しく見て行きますね。

 

1 利用者から,K社会福祉士についての苦情を聴き,すぐにそれを施設管理者に人事考課のための情報提供として伝える。

 

苦情を施設管理者に伝えるのは,上記のスーパービジョンの3つの機能のうちのどれにも当てはまりません。

 

よって×。

 

2 K社会福祉士が,利用者とかかわるのがつらいと話しながら泣いてしまったので,共感を示すために一緒に泣く。

 

時には,共感して一緒に泣いてしまうことはあるかもしれません。

 

しかし,共感を示すために一緒に泣くのであれば,支持的機能も教育的機能にも当てはまりません。

 

共感は支持ではありません。

 

よって×。

 

 

3 K社会福祉士の業務負担や力量,そしてケースの困難度を勘案して,担当ケース数を配慮する。

 

 

これは,3つの機能のうちの管理的機能に当てはまります。

 

よって正解です。

 

 

4 利用者への支援について,K社会福祉士から逐一報告してもらい,効率的に業務を遂行するために細かく指示を出す。

 

 

スーパービジョンには,管理的機能がありますが,指示するであれば,スーバージョンにはなりません。

 

ワーカーの成長の機会を奪ってしまうことになります。

 

よって×。

 

 

5 K社会福祉士が,利用者の意向を確認していないことがよくあることを指摘し,上司として自分が利用者の意向の確認を行う。

 

 

スーパービジョンの種類には,ライブスーパービジョンがあります。

 

スーパーバイジーと一緒にクライエントに関わりながらの行うのはライブスーパービジョンですが,バイザーが自ら動くのは,スーパービジョンにはなりません。

 

ワーカーの成長の機会を奪ってしまいます。

 

よって×。

 

 

スーパービジョンの事例問題では,「〇〇的機能」を活用したスーパービジョンで適切なのはどれか,といった出題がされることがあります。

 

十分に気を付けましょう。

2024年7月21日日曜日

解決志向アプローチとは

 前回紹介したように,様々なアプローチは,出題率がかなり高いです。


様々なアプローチには,実証主義的(科学的)なモダン系の「心理社会的アプローチ」「問題解決アプローチ」「行動変容アプローチ」「課題中心アプローチ」「課題中心アプローチ」「危機介入アプローチ」などがあります。



これらの流れを否定するポストモダニズム系の「エンパワメントアプローチ」「ナラティブアプローチ」「解決志向アプローチ」「フェミニストアプローチ」「実存主義アプローチ」などかあります。


伝統的なモダン系と新興勢力のポストモダニズム系に分けることができ,近年,現場ではポストモダニズム系が大流行しています。


国試の出題は,まだまだ伝統的なモダン系が多い傾向にあります。


しかし,このような背景から,今後は,ポストモダニズム系の出題が増加していくのではないでしょうか。


それでは今日の問題です。


第25回・問題109

解決志向アプローチにおける質問法に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 ミラクル・クエスチョンは,クライエントがこれまでに経験した奇跡的な体験について尋ねる。

2 スケーリング・クエスチョンは,クライエントの経験や今後の見通しを数値に置き換えた評価を尋ねる。

3 コーピング・クエスチョンは,クライエントがこれからどのように問題に対処するかを尋ねる。

4 エクセプション・クエスチョンは,クライエントがこれまでに経験した例外的な失敗体験について尋ねる。

5 サバイバル・クエスチョンは,クライエントがこれから生き抜いていく見通しについて尋ねる。


解決志向アプローチは,ポストモダニズム系に位置付けられます。


ポストモダニズム系はモダン系よりも活用しやすいことが特徴だと言えます。


そのうちの解決志向アプローチは,いろいろな質問を使って,クライエントが解決した未来を志向できるように支援しています。


それでは詳しく見て行きましょう。


1 ミラクル・クエスチョンは,クライエントがこれまでに経験した奇跡的な体験について尋ねる。


最初の質問は「ミラクル・クエスチョン」です。


ミラクル・クエスチョンは,もっとも解決志向アプローチっぽい質問だと言えます。


今の問題を棚上げして「奇跡が起きたら,どうしますか」といった質問で,解決した後をイメージしてもらう質問です。


過去の体験ではありません。


よって×。


2 スケーリング・クエスチョンは,クライエントの経験や今後の見通しを数値に置き換えた評価を尋ねる。


これが正解です。


スケーリングは,目盛りの意味です。


「今不安なのですね。最大に焦っている時を10点満点だとすると,今の焦りは何点くらいですか」といった質問をします。


今の状況や今後の見通しをチェックするための質問です。


3 コーピング・クエスチョンは,クライエントがこれからどのように問題に対処するかを尋ねる。


コーピング・クエスチョンも特徴的な質問です。


「今まで大変だった中,どうやって乗り越えてきたのですか」といった質問をします。


自分が乗り越えてきた力に気づいてもらうための質問です。


これからではなく,「今までどうしていたのか」です。


よって×。


4 エクセプション・クエスチョンは,クライエントがこれまでに経験した例外的な失敗体験について尋ねる。


エクセプション・クエスチョンは「例外探し」の質問です。


不登校の子どもを抱える親に「お子さんが学校に行けたときはどんな時でしたか」といった,例外を見つけて,その例外を再現できるように支援していきます。


例外の場面がたくさん現れるように考えることで解決しようとする質問です。


失敗体験を尋ねても意味がありません。


うまくいったことを考えることで,成功するイメージをもってもらうことができます。


よって×。


5 サバイバル・クエスチョンは,クライエントがこれから生き抜いていく見通しについて尋ねる。


サバイバル・クエスチョンは,コーピング・クエスチョンの一つです。


長く問題が続いていた時に,どのように対処して生き抜いてきたのかに気づいてもらうための質問です。


これからではなく,過去に対する質問です。


よって×。



問題解決アプローチと解決志向アプローチの違い


問題解決アプローチ

 ➡ 問題となるものを分析して,その問題を解決するために支援していきます。


解決志向アプローチ

 ➡ ポストモダニズム系なので,問題自体を分析することは行わないことが特徴です。

解決したイメージを描くことで,解決していこうとします。

未来志向のアプローチ法と言えます。


解決志向アプローチは,すぐ使えそうな感じがしませんか?

2024年7月20日土曜日

様々なアプローチは絶対に覚えたい!

 様々なアプローチの出題確率はとても高いです。旧カリ時代は毎年出題され,しかも数問出題されていました。


国試全体で見た場合,様々なアプローチのような問題をしっかり得点できることが,得点力を上げるためのコツです。


特にこれからの限られた時間で効率的に実力アップするためには,有効に時間を使いたいものです。



それでは,前回に引き続き,「様々なアプローチ」からの出題です。


第25回・問題103 

ソーシャルワークのアプローチに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 危機介入アプローチは,急性の心理的危機状態にあるクライエントに対して,新しい対処パターンを教示しつつ,長期処遇で対処能力を強化する。

2 実存主義アプローチは,実存主義思想による概念を用いて,クライエントが自らの存在意味を把握し,自己を安定させることで,疎外からの解放を目指す。

3 行動変容アプローチは,学習理論をソーシャルワーク理論に導入したもので,クライエントのコンピテンスの消去や強化により,問題行動全体の変容を図る。

4 解決志向アプローチは,社会変革のために,ソーシャルワーカーが解決イメージを提示しながら,解決方法を構築する。

5 フェミニストアプローチは,女性が体験している現実を自ら認識させ,個人が抱える問題の解決を意図した治療的なかかわりを支援の焦点とする。


今日の問題は,様々なアプローチのミックス型です。


苦手なアプローチが出て来たら対処ができないので,前回紹介した13のアプローチは絶対に押さえておきたいです。

https://fukufuku21.blogspot.com/2024/07/blog-post_19.html


それでは詳しく見て行きましょう。


1 危機介入アプローチは,急性の心理的危機状態にあるクライエントに対して,新しい対処パターンを教示しつつ,長期処遇で対処能力を強化する。


危機介入アプローチは,危機に陥ったクライエントや周囲の人たちに早期,かつ短期的に介入します。


危機介入アプローチは,長期処遇ではありません。よって×。


「危機介入アプローチ」「課題中心アプローチ」で「長期」という表現が出て来たら,即刻消去できます。


ここが最大の判別ポイントと言えます。


2 実存主義アプローチは,実存主義思想による概念を用いて,クライエントが自らの存在意味を把握し,自己を安定させることで,疎外からの解放を目指す。


実存主義アプローチの出題回数は少ないですが,今後は増えていくかもしれません。


なぜなら,このアプローチは,


「人は人。人はどうであれ,あなたはあなたという存在です。あなたが体験したことが大切なのです」


ということをクライエントに気づいてもらうために用いられます。

自分に自信をなくして疎外感のある不登校の生徒に対しても有効です。


社会福祉士の活動の場には,スクールソーシャルワーカーもあるので,これから注目されてよいアプローチではないでしょうか。


話を戻すとこれは正解です。


3 行動変容アプローチは,学習理論をソーシャルワーク理論に導入したもので,クライエントのコンピテンスの消去や強化により,問題行動全体の変容を図る。


行動変容アプローチ=学習理論は,基本中の基本です。


しかし,この選択肢には落とし穴が設けられています。


「コンピテンシー」です。


コンピテンシーは,能力開発に携わっている人にはおなじみの用語で「能力」を意味しています。


しかしこの時初めて出題されました。


一度出題されると何度もその後繰り返し出題されるものです。

実際にコンピテンシーは,その後,何度も出題されてきています。


さて問題に話を戻すと,コンピテンシー(能力)を上げることはあっても下げることはないです。


コンピテンシーの意味が分かっているとおかしな文章であることがわかるでしょう。


学習理論を使って強化や弱化するのは,コンピテンシーではなく,「問題となる行動」です。


よって×。


4 解決志向アプローチは,社会変革のために,ソーシャルワーカーが解決イメージを提示しながら,解決方法を構築する。


解説志向アプローチは,短期療法(ブリーフセラピー)の一つです。


クライエントが明るい未来を描けるように,コーピングクエスチョンやミラクルクエスチョンなどの技法を使うのが特徴です。これらは次回にご紹介します。


ワーカーは解決イメージを提示するのではなく,「今の問題が解決したら,何をしたいですか」など,クライエントが明るい未来をイメージできるように関わります。


よって×。


5 フェミニストアプローチは,女性が体験している現実を自ら認識させ,個人が抱える問題の解決を意図した治療的なかかわりを支援の焦点とする。


フェミニストアプローチもこの時に初めて出題されたものです。


この後の第27回では


フェミニストアプローチは,女性にとっての差別や抑圧などの社会的な現実を顕在化させ,個人のエンパワメントと社会的抑圧の根絶を目指す


と出題されています。


これは正解です。


ここからフェミニストアプローチとは,おおよそエンパワメントアプローチの女性版であると押さえておけばよいでしょう。


エンパワメントですから,治療的にはかかわりません。

よって×。


様々なアプローチは,事例問題でも出題されます。


その時には「〇〇アプローチを活用した援助について,正しいものを〇つ選びなさい」といったような出題になります。


アプローチの特徴を分かっていないと解けないので,しっかり覚えて行きたいです。

2024年7月19日金曜日

様々なアプローチ

  

社会福祉士の国家試験は,出題範囲が広いことが特徴です。

 

そのため,出題基準に示されている範囲であっても出題されないのがほとんどです。

 

そんな中であっても,毎年必ず出題される範囲があります。

 

その一つが「様々なアプローチ」です。

 

 

種々のアプローチを紹介している「ソーシャルワーク・トリートメント」(中央法規出版,1999,第5版)では,全29の理論が紹介されています。

 

2023年に出た第6版は,38に増えています。

 

国家試験で出題されているのは,以下の13種類です。

 

 

国家試験に出題されているアプローチ

  心理社会的アプローチ

  機能的アプローチ

  問題解決アプローチ

  課題中心アプローチ

  危機介入アプローチ

  行動変容アプローチ

  エンパワメントアプローチ

  ナラティブアプローチ

  解決志向アプローチ

  フェミニストアプローチ

  実存主義アプローチ

  エコロジカルアプローチ

  ⑬ユニタリーアプローチ

 

 

他にもまだありますので,今後は別なものも出題されることがあるかもしれませんが,とりあえず,これでは覚えておきたいです。

 

複数のアプローチが選択肢になっている問題なら,よく分からないアプローチがあっても消去法で何とかなりますが,一問まるごと一つのアプローチが出題された場合,太刀打ちできなくなってしまうので,どれも同じように覚えたいです。

 

それでは今日の問題です。

 

25回・問題102

課題中心アプローチに関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 リード(ReidW.)とエプスタイン(EpsteinL.)によって開発され,心理社会的アプローチ,問題解決アプローチ,行動変容アプローチなどの影響を受けて発達した。

2 ターゲットとなる問題は,クライエントの気付きの有無にかかわらず,クライエントの努力で解決できる可能性があるという基準によって選択される。

3 様々なアプローチを折哀したものであるので,それらを統合するためにシステム理論をその基礎理論としている。

4 現在の課題の元となる問題の原因を解明することから援助を始め,その原因の除去を援助の目標とする。

5 時間的な構造が重要と考え,援助に要する期間を早い段階から定めることを重視し援助を進める。

 

今日の問題は,課題中心アプローチです。

 

課題中心アプローチは,1970年代にリードとエプスタインによって提唱されたものです。

 

クライエントと一緒に課題を明らかにして目標を設定し,目標が達成されたか,されなかったのかを評価します。

 

心理社会的アプローチ(基盤となる理論は,精神分析理論),問題解決アプローチ(基盤となる理論は,役割理論),行動変容アプローチ(基盤となる理論は,学習理論)などに影響を受けていますが,それらは長期的に関わり,結果を導き出しますが,課題中心アプローチは,短期的に関わるのが特徴です。

 

効果があることを重視する「プラグマティズム」が強い影響を与えています。

 

評価しやすいこともあり,1980年代以降広まっていきました。

 

これらの基礎知識を頭に入れながら,詳しく見ていきましょう。

 

1 リード(ReidW.)とエプスタイン(EpsteinL.)によって開発され,心理社会的アプローチ,問題解決アプローチ,行動変容アプローチなどの影響を受けて発達した。

 

先述のとおり,これが正解です。

 

2 ターゲットとなる問題は,クライエントの気付きの有無にかかわらず,クライエントの努力で解決できる可能性があるという基準によって選択される。

 

課題中心アプローチの特徴は,クライエントと一緒に課題を明らかにして目標を設定します。

クライエントがターゲットとなる問題に気が付かないと目標設定はできません。

 

課題中心アプローチの前提が根底から覆されてしまいます。

 

よって×。

 

3 様々なアプローチを折哀したものであるので,それらを統合するためにシステム理論をその基礎理論としている。

 

様々なアプローチを折哀したものであるのは正しいですが,統合するためにシステム理論が基礎理論とはなっていません。

 

システム理論が基礎理論となるのは,家族システムアプローチやエコロジカル・アプローチなどです。

 

4 現在の課題の元となる問題の原因を解明することから援助を始め,その原因の除去を援助の目標とする。

 

原因の除去を援助の目標にするのは,どちらかと言えば精神分析理論を基盤とする心理社会的アプローチです。

 

課題中心アプローチは心理社会的アプローチに影響は受けていますが,援助の目標は,クライエントと一緒に目標を設定し,その目標が達成できるように援助していきます。

 

よって×。

短期処遇の課題中心アプローチには,過去に目を向けるのではなく,「今,ここ」を重視します。

 

 

5 時間的な構造が重要と考え,援助に要する期間を早い段階から定めることを重視し援助を進める。

 

課題中心アプローチは,クライエントと一緒に目標を設定します。目標は期限が設けられます。評価する日は〇月〇日と決めます。

 

この日になって評価した時,その目標は達成できたのか,できなかったのかが明確になります。

このアプローチの特徴は,短期処遇です。

 

そのために時間は重要です。

 

よって正解です。

 

因みに短期処遇なのは,13のアプローチの中では,「課題中心アプローチ」と「危機介入アプローチ」です。

 

この2つについて,「長期」という言葉が出て来たら,即刻消去できます。

 

国試勉強をすすめる中,もし身近に援助者がいた場合,今の課題を明らかにして,〇月〇日の模擬試験で,65点以上得点する,という目標を設定します。

 

試験が終わったら,目標が達成できたのか,できなかったのが明確になります。

 

達成できていなければまた新しい目標を設定していきます。

 

最終目標は,3月に合格をつかむことです。

 

多くの受験生は,「合格したい」という気持ちを持って勉強していると思いますが,確かな方法論は持たないで勉強しているように思います。

 

課題設定して結果を検証する。そしてまた課題設定して結果を検証する。といったことはとても重要です。

 

社会福祉士の場合,課題設定しやすいのは,問題を解いた時の点数ではないかと思います。

 

受験生が辛いのは,覚えたのか,覚えていないのかが,よくわからないことでしょう。

 

そういった面でも,問題を解くことを勉強の一つの柱にすることは,明確な目標設定ができるだけに,有効だと思います。

  

問題は,過去問,模擬問題集,模擬試験など,いろいろあります。

 

一問一答式の教材や,穴埋め式になっている教材もありますが,やっぱり最終的には,国試と同じスタイルの五者択一(あるいは択二)の問題を解くことが大切だと強く思います。

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