第30回国試の合格基準点は,99点でした。
この点数は,第15回国試から点数が発表されるようになって以来,最も高い点数です。
逆に最も低かった点数は,第25回国試の72点です。
実に27点も差があります。
このような数字を見ると何点取ればよいということがわからなくなってくるでしょう。
そのとおりです。何点取ればよい,ということではありません。
必要なのは,150点中6割程度得点ができることです。
6割程度は,問題の難易度によって変わります。
試験センターでは,受験生の得点データは受験者数,合格者数,年代別合格者数(構成比)のみです。
そのため憶測でしかありませんが,第30回国試で72点以上取った人はほぼ全員,第25回国試で99点以上取った人はほぼゼロだったのではないでしょうか。
ほぼというのはもちろん外れ値があるからです。
ここで注意していただきたいのは,第30回国試で90点取れたからといって,6割程度ではないということです。
6割程度の6割とは,概念的な6割であって,実質の6割ではないということです。
必要な勉強は,今後も変わるわけではありません。
必要なことをきちっと理解して国試に臨めば,合格しますし,あいまいなまま国試に臨めば不合格になります。
さて,今日の問題です。
第27回・問題53 児童手当に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 児童扶養手当が支給される世帯に対しては,児童手当は支給されない。
2 児童手当の支給には,所得制限が設けられている。
3 児童手当は,第2子から支給される。
4 児童手当の支給は,児童が小学校を修了するまでである。
5 児童手当の費用は,国と地方自治体が半分ずつ負担する。
勉強した人は,答えはこれだとすぐわかる問題です。
このような問題で得点できるかどうかが実は合否を分けます。
前回の問題と比べてみましょう。
第22回・問題51 我が国の社会保障制度に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 民間被用者に関する児童手当には,事業主の拠出金がある。
2 健康保険及び国民健康保険には,事業主の負担がある。
3 児童扶養手当の支給は,婚姻を解消した父等が児童に対して履行すべき扶養義務の程度を軽減する。
4 児童手当制度は,所得制限が設けられていない普遍的給付である。
5 児童手当制度は,第2子から支給される。
答えは1でした。
この問題と酷似していますが,まったく同じてはありません。
しかし内容を理解していれば必ず解けます。
今日の問題の答えは,
2 児童手当の支給には,所得制限が設けられている。
第22回国試では,
4 児童手当制度は,所得制限が設けられていない普遍的給付である。
と出題されたものです。
過去問は,何度も解くと答えを覚えてしまう
とおっしゃる方がいます。
それは実はとてもすごいことです。
中には何度解いても解けないという人もいるからです。
しかし,一つ注意してほしいのは,過去問を解くときは正解することが大事なわけではありません。
間違い選択肢もしっかり読んで理解すること。
試験問題に慣れること。
これらを注意することです。
今日の問題を簡単に解説します。
1は,児童扶養手当と児童手当は併給できます。
2は,正解です。
3は,第1子から支給されます。
4は,中学校を修了するまで支給されます。
5は,国が3分の2,地方が3分の1を負担しています。
<今日の一言>
昨日の問題は,第22回国試問題です。
今日の問題は,第27回国試問題です。
児童に関する手当で,第22回国試で,出題されて,第27回国試で出題されなかったものは,
児童扶養手当の支給は,婚姻を解消した父等が児童に対して履行すべき扶養義務の程度を軽減しない。
これは,しっかり覚えておきたいものです。
第29回では問題141「児童と家庭に対する支援」でも同様の問題が出題されています。
こういったところを確実に押さえている人は,6割程度を確実に超えられます。
最新の記事
子ども・子育て支援法
子ども・子育て支援法は,これまでにも出題されてきましたが,正式に出題基準に含まれたのは,第37回国家試験です。 子ども・子育て支援制度は,市町村が実施主体になっています。 支給申請は,市町村に対して行います。 児童福祉法には,入所系があるので都道府県の役割がありますが,子ども...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
質的調査では,インタビューや観察などでデータを収集します。 その際にとる記録をフィールドノーツといいます。 一般的には,野外活動をフィールドワーク,野外活動記録をフィールドノーツといいます。 こんなところからも,質的調査は,文化人類学から生まれてきたものであることがう...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...
-
ヒラリーという人は,さまざまに定義される「コミュニティ」を整理しました。 その結果,コミュニティの定義に共通するものとして ・社会的相互作用 ・空間の限定 ・共通の絆 があることが明らかとなりました。 ところが,現代社会は,交通手段が発達し,SNSやインターネットなどによって,人...
-
絶対に覚えておきたい社会的役割は, 第1位 役割期待 第2位 役割距離 第3位 役割取得 第4位 役割葛藤 の4つです。 今回は,役割葛藤を紹介します。 役割葛藤とは 役割に対して葛藤すること 役割葛藤を細かく分けると 役割内葛藤と役割間葛藤があ...
-
今回は,ソーシャルワークにおけるエンゲージメントを取り上げます。 第30回の国試で出題されるまでは,あまり知られていなかったものです。 エンゲージメントは,インテーク(受理面接)とほぼ同義語です。 それにもかかわらず,インテークのほかにエンゲージメントが使われるようになった理由は...