こんな話をする試験対策講座があると聞きました。
国試を知らない人が講師を務めている証拠です。
制度が変わったところがすぐ出題されるものも150問あるうち,1問くらいはあります。
1問もない年もあります。
制度変更は,受験勉強するうえでとても気になるところかもしれません。
社会福祉士は,社会保険労務士や介護支援専門員と決定的に違うところがあります。
それは,これらの資格は制度を知らないと適切な仕事ができないのに対し,社会福祉士は法制度を取り扱う仕事ではないということです。
法制度が変わってすぐに出題されるものもあります。
それは小さな変更点ではなく,大きな変更点です。
例えば,障害者雇用促進法で雇用しなければならない障害者に精神障害者が加わったなどです。
今取り組んでいる「社会保障」は,法制度の中心的科目です。
出題範囲が広範囲にわたる科目なので,たくさんのことを覚えなければならないと思うことでしょう。
しかし,制度の根幹を学ぶ科目であるため,最新の法制度はほとんど出題されてきません。
ここが社会福祉士の国試の科目である証拠です。
何となく難しそうだな,と思う人も多いようですが,制度の根幹に注意していけば,必ず得点できる科目に変わります。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題52 年金制度に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 国民年金の第3号被保険者は,第2号被保険者に扶養されている妻のための制度であり,夫は対象とならない。
2 国民年金の第1号被保険者は農業者,自営業者のための制度であり,被用者は加入することができない。
3 厚生年金と共済年金の一元化を図るための法案が,2007(平成19)年の通常国会に提出されていた。
4 共済年金は公務員のためだけの制度である。
5 国民年金の第1号被保険者の保険料は,労働者の場合は報酬比例である。
この問題は現在は成立していません。
なぜなら,2015年10月に共済年金は,厚生年金に一元化されているからです。
日本の社会保険は,年金保険,医療保険,労働者災害補償保険,雇用保険,介護保険の5つがあります。
このうち,複数の制度で成り立っているのは,年金保険と医療保険です。
これらは,戦前からあった制度を整備して,国民皆年金,皆保険を作ったために複数の制度かあるのです。
そのほかの3つの社会保険は1つの制度で成り立っています。
さて,今日の問題で知ってもらいたいのは,共済年金は,厚生年金に一元化されてから3年近く経ちますが,その間にこれに関するものは出題されていないという事実です。
一元化に関するものは,制度が変わる前のこの回の出題のたった1回です。しかも法案が提出されていた,というものすごく変な出題のされ方です。
正解は選択肢3です。
年金保険は,5つある社会保険の中では最も複雑な制度です。
国民年金(基礎年金)
厚生年金
そして,それらに老齢年金,障害年金,遺族年金がそれぞれあります。
しかし,制度は複雑ですが,決して深掘りはしないので,その分根幹を押さえていけば,そんなに難しくないです。
そのほかの選択肢も簡単に解説します。
1 国民年金の第3号被保険者は,第2号被保険者に扶養されている妻のための制度であり,夫は対象とならない。
国民年金の第3号被保険者は,第2号被保険者の被扶養配偶者です。妻,夫という区別はありません。
2 国民年金の第1号被保険者は農業者,自営業者のための制度であり,被用者は加入することができない。
第1号被保険者は,第2号,第3号被保険者ではない者が加入します。農業者,自営業者のための制度ではありません。短時間労働者に対する社会保険適用は拡大されていますが,それでも週20時間未満の被用者は第2号被保険者の対象にはなりません。そのため,第1号被保険者として加入しなければなりません。
3 厚生年金と共済年金の一元化を図るための法案が,2007(平成19)年の通常国会に提出されていた。
これが正解です。この法案は廃案になっていますが,その後被用者年金一元化法で一元化が実現しています。
4 共済年金は公務員のためだけの制度である。
今はこの選択肢は成立しません。なぜなら共済年金は現在厚生年金に一元化されているからです。共済年金があった当時を振り返ると,国家公務員,地方公務員のほかに私学共済もありました。
5 国民年金の第1号被保険者の保険料は,労働者の場合は報酬比例である。
厚生年金の被保険者は国民年金の被保険者になります。しかし,保険料負担はありません。
第1号被保険者の保険料は「定額制」です。保険料が報酬によって変わる「報酬比例」なのは厚生年金です。
<今日の一言>
社会保険の根幹
保険者
被保険者
保険料
保険事故
これらを意識して押さえていきましょう。