社会福祉士の国家試験は,「出題基準」と呼ばれる出題の範囲を示すものがあります。
参考書類は,出題基準に沿ってまとめられています。
法制度に関連した科目の多くには,国の役割,都道府県の役割,市町村の役割が含まれています。
分野が違っても共通部分があります。それらを整理しておけば,かなり応用できます。
国は,基本指針を定めます。
都道府県は,専門的な判断が求められる業務を行います。専門職の研修なども都道府県の役割です。サービス事業者の指定も基本的には都道府県です。
「基本的には」というのは,介護保険法の地域密着型サービス事業者,居宅介護支援事業所,障害者総合支援法の特定相談支援事業所の指定は都道府県だからです。
市町村は,住民に最も身近な自治体として,各種の窓口があります。比較的高度な判断が求められない業務を行います。高度な判断が求められるにもかかわらず市町村の業務なのは,介護保険法の要介護認定と,障害者総合支援法の障害支援区分認定です。これらは例外事項です。
障害者総合支援法に規定される自立支援医療は,児童福祉法の育成医療,身体障害者福祉法の更生医療,精神保健福祉法の精神通院医療があります。
このうち,育成医療と更生医療の支給決定は市町村,精神通院医療の支給決定は都道府県です。
ここだけがちょっと混乱しそうですが,精神通院医療は,ライシャワー事件によってできたものなので,都道府県が責任をもってやりなさい,ということなのでしょう。
それでは今日の問題です。
第22回の問題なので,法律名が自立支援法,障害支援区分が障害支援区分になっていますが,それぞれ読み替えていただけましたら幸いです。
第22回・問題131 障害者自立支援法における国及び地方公共団体の役割に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 国の役割として,厚生労働大臣は,障害福祉サービス,相談支援及び地域生活支援事業の提供体制を整備し,自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための基本指針を定め,公表しなければならない。
2 市町村は,育成医療,更生医療,精神通院医療という3つの自立支援医療の支給認定の役割を担っている。
3 市町村は,身体障害者に関する相談及び指導のうち,専門的な知識及び技術を必要とする相談支援のために身体障害者更生相談所を設置しなければならない。
4 都道府県は,指定障害福祉サービス事業者が事業の設備及び運営に関する基準に従って適切な運営をしていないときは,その旨を厚生労働大臣に通知しなければならない。
5 都道府県は,市町村の相談支援をバックアップする観点から,指定相談支援事業者に障害程度区分の認定及び支給要否決定のための心身の状況,置かれている環境等を調査することを委託する役割を担う。
障害者に関する法には,障害者基本法と障害者総合支援法があります。
障害者基本法は,障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的としてもので,所管は内閣府です。
障害者総合支援法は,障害福祉サービスの給付と地域生活支援事業の実施を目的としたもので,所管は厚生労働省です。
それでは解説です。
1 国の役割として,厚生労働大臣は,障害福祉サービス,相談支援及び地域生活支援事業の提供体制を整備し,自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための基本指針を定め,公表しなければならない。
これが正解です。
障害者総合支援法に基づく基本方針の策定 → 厚生労働大臣
障害者基本法に基づく基本計画の策定 → 内閣総理大臣
2 市町村は,育成医療,更生医療,精神通院医療という3つの自立支援医療の支給認定の役割を担っている。
市町村 → 育成医療,更生医療
都道府県 → 精神通院医療
3 市町村は,身体障害者に関する相談及び指導のうち,専門的な知識及び技術を必要とする相談支援のために身体障害者更生相談所を設置しなければならない。
身体障害者更生相談所・知的障害者更生相談所 → 都道府県
4 都道府県は,指定障害福祉サービス事業者が事業の設備及び運営に関する基準に従って適切な運営をしていないときは,その旨を厚生労働大臣に通知しなければならない。
市町村は,指定障害福祉サービス事業者が事業の設備及び運営に関する基準に従って適切な運営をしていないときは,その旨を都道府県に通知しなければなりません。
5 都道府県は,市町村の相談支援をバックアップする観点から,指定相談支援事業者に障害程度区分の認定及び支給要否決定のための心身の状況,置かれている環境等を調査することを委託する役割を担う。
障害支援区分認定は,市町村の業務です。都道府県がかかわるのは,不服申立てです。