2018年7月7日土曜日

社会保障の徹底理解~年金保険の被保険者

日本の社会保険制度は,年金保険,医療保険,雇用保険,労働者災害補償(労災)保険,介護保険の5つです。

5つの社会保険を持っているのは,ドイツと同じです。

このうち,第二次世界大戦以前から存在していた社会保険は,年金保険と医療保険です。
そのうち,いわゆるブルーカラーを対象とした医療保険として制定された健康保険法(1922・大正11年)は日本初の社会保険となりました。

一方,年金は,戦費を調達する目的で,終戦に近い1944・昭和19年に厚生年金法が制定されています。

現在の日本は,国民皆保険,皆年金の国です。それまであった制度を整備して,国民皆保険,皆年金を実現させたために,保険者や種類が複数あります。

その中で,唯一全国民に共通した制度があります。

それが国民年金(基礎年金)です。

年金保険は,被用者を対象とした制度しかなかったため,自営業者,無職者などを対象として1961・昭和36年に国民年金法の施行をもって,国民皆年金が出来上がりました。

その後,1986・昭和61年の法改正で全国民に共通する年金の一階部分となる基礎年金となり,現在に至っています。被用者の厚生年金は二階部分です。

国家試験では,厚生年金の被保険者は,国民年金加入が免除されている,といった問題が出題されることがありますが,厚生年金の被保険者は,同時に国民年金の被保険者でもあります。注意しましょう。

さて,今日の問題は,国民年金の第三号被保険者に関する問題です。

第一号被保険者
 日本国内に住所を有する20~60歳の者で,第一号・第二号被保険者ではない者です。

第二号被保険者
 被用者年金保険の被保険者,共済組合の加入者です。共済年金は,2015年10月に厚生年金と一元化されています。少しシンブルになりましたね。共済年金はなくなりましたが,共済組合は現存し,共済年金の支払業務の代行,医療保険などを実施しています。

第三号被保険者
 第二号被保険者の被扶養配偶者です。被扶養配偶者なので,専業主夫も対象となります。

それでは,今日の問題です。

第28回・問題52 次のうち,国民年金の第三号被保険者になる者として,正しいものを1つ選びなさい。

1 厚生年金の適用事業所で,正社員として1日8時間,週40時間働いている夫(63歳)の被扶養配偶者である妻(61歳)

2 国民年金の第一号被保険者である夫(40歳)の被扶養配偶者である妻(37歳)

3 厚生年金の適用事業所で,正社員として1日8時間,週40時間働いている妻(25歳)の被扶養配偶者である大学生である夫(22歳)

4 国民年金の第一号被保険者である夫(40歳)の妻で,正規雇用の公務員として働いている者(35歳)

5 学生納付特例制度の適用を受けている妻(22歳)の夫で学生である者(22歳)


正解は,選択肢3です。
大学生22歳の夫は,第三号被保険者になれます。

そのほかの選択肢も,前説で間違いポイントは分かると思いますが,一応解説しておきます。

1は,妻は61歳なので対象にはなりません。任意加入する場合は,第一号被保険者となります。

2は,夫は第一号被保険者なので,妻も第一号被保険者として加入しなければなりません。
3は,正解です。

4は,夫が第一号保険者である時点で妻は第三号被保険者にはなれません。さらに正規雇用の公務員というところから,共済組合の加入者であると考えられるので,妻は第二号被保険者となるでしょう。

5は,学生は,第一号被保険者です。学生納付特例制度は,保険料の納付を猶予してもらう制度です。親の年収などは関係なく,学生なら制度を活用できます。

しかし,猶予されているだけなので,追納しないとその期間は年金額に反映されません。
猶予と違い,免除という制度もあります。全額免除の場合は,基礎年金の国庫補助の負担分である2分の1が年金額に反映されます。

失業などで保険料が支払えなくなった場合は,申請によって免除を受けることができるので,すぐ手続きをする必要があります。

なお,基礎年金の国庫補助の負担割合は以前は3分の1でしたが,現在は2分の1に引き上げられています。

この引上げによって,免除を受けている人は,将来の年金額が少しアップすることになります。

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