2018年7月28日土曜日

障害者福祉の発展過程(その4)~身体障害者福祉の発展過程の整理



わが国の障害者福祉の特徴は,障害別に発展してきたことです。
その理由は,最初に成立した身体障害者福祉法が,身体障害者に対象を限定したためです。
障害別で理解するのではなく,3障害を並行して理解することが適切なのかもしれませんが,今日は,身体障害者に絞っていきたいと思います。


身体障害者福祉の発展過程

1947年・昭和22年 
 身体障害者授産施設が創設される。
1949年・昭和24年 
 身体障害者福祉法が成立する。国に身体障害者更生援護施設(現・身体障害者社会参加支援施設)の設置を義務づける。
1960年・昭和35年
 身体障害者雇用促進法(現・障害者雇用促進法)が成立する。
1963年・昭和38年
 重度身体障害者更生施設が創設される。
1964年・昭和39年
 重度身体障害者授産施設が創設される。
1970年・昭和45年
 心身障害者対策基本法が設立する。
1972年・昭和47年
 身体障害者療護施設が創設される。
1981年・昭和56年
 国際障害者年
1993年・平成5年
 心身障害者対策基本法を改正し,障害者基本法が成立する。
2006年・平成18年
 障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)が成立する。

それでは,今日の問題です。        


第28回・問題58 障害者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 身体障害者福祉法(1949年(昭和24年))では,国に身体障害者更生援護施設の設置が義務づけられた。

2 東京パラリンピック(1964年(昭和39年))の開催を契機に,知的障害者を対象としたスペシャルオリンピックスが法制化された。

3 社会福祉基礎構造改革の理念に基づき,大規模コロニー計画が進められた。

4 障害者基本法の改正(2004年(平成16年))で,同法による障害者の範囲に難病等の者も含まれるようになった。

5 「障害者総合支援法」の施行により,重度訪問介護の対象者が障害児にも拡大された。


正解は,選択肢1です。

この時の身体障害者更生援護施設施設は,

①身体障害者更生指導施設
②中途失明者更生施設
③身体障害者収容授産施設
④義肢要具製作施設
⑤点字図書館
⑥点字出版施設

6つある施設のうち,3つが身体障害者,残りの3つが視覚障害者を対象としたものです。
身体障害者福祉法の法案づくりをしていた1948・昭和23年にヘレン・ケラーが来日したことで,視覚障害者の当事者団体が出来て,法の成立を後押ししました。

それでは,他の選択肢も見ていきたいと思います。

2 東京パラリンピック(1964年(昭和39年))の開催を契機に,知的障害者を対象としたスペシャルオリンピックスが法制化された。

障害者のスポーツ大会は,

パラリンピック(視覚障害者を含む身体障害者)
スペシャルオリンピックス(知的・発達障害者)
デフオリンピック(聴覚障害者)
があります。
東京パラリンピックは,東京パラリンピック競技大会特別措置法に規定されていますが,スペシャルオリンピックスもデフオリンピックも法制化されたものではありません。


3 社会福祉基礎構造改革の理念に基づき,大規模コロニー計画が進められた。

大型コロニーは,1960・昭和35年の精神薄弱者福祉法(現・知的障害者福祉法)により,精神薄弱者援護施設が法制化されたことを契機に,1960年代・70年代に多く設置されていきます。

施設中心の施策からの転換期は,1981・昭和56年の国際障害者年によって,ノーマライゼーション思想が広まったことです。

1990年代から,地域での生活支援が始まっていきます。

4 障害者基本法の改正(2004年(平成16年))で,同法による障害者の範囲に難病等の者も含まれるようになった。

2004年改正のポイントは,障害者差別の禁止が含まれたことです。

難病等が含まれたのは,2011年改正です。


5 「障害者総合支援法」の施行により,重度訪問介護の対象者が障害児にも拡大された。

重度の肢体不自由者を対象としていた重度訪問介護の対象が拡大されたのは,重度の知的障害者と精神障害です。障害児ではありません。

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