1949(昭和24)年に成立した身体障害者福祉法は,障害者福祉の始まりとなるものです。
当初の目的は,
身体障害者の更生を援助し,その校正のために必要な援助を行い,もつて身体障害者の福祉を図ること
とされていました。
更生とはリハビリテーションを意味し,職業的リハビリテーションを目的としたものでした。
職業的リハビリテーションを目的としたために,法の適用対象は,身体障害に限定し,精神障害,知的障害は対象にしませんでした。
そのために,日本の障害者福祉は,障害別に発展していくことになりました。
身体障害者,知的障害者,精神障害者の施策が一元化されるのは,2006(平成18)年に施行された障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)まで待たなければなりません。
身体障害者福祉法の現在の目的は,
障害者総合福祉法と相まつて、身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため,身体障害者を援助し,及び必要に応じて保護し,もつて身体障害者の福祉の増進を図ることを目的とする。
というように,当初にあった「更生」がなくなり,「参加」となっています。
それでは,今日の問題です。
第24回・問題129 障害者福祉の歴史的展開に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 昭和24年制定当時の身体障害者福祉法は,身体障害者の定義を,身体上の障害のため生活能力が損傷されている18歳以上の者であって,都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けた者とした。
2 昭和35年制定当時の精神薄弱者福祉法は,精神薄弱者援護施設を法的に位置づけ,入所施設の設置体制を整備した。
3 平成2年の福祉関係八法改正により,老人福祉法以外に身体障害者福祉法,精神薄弱者福祉法,精神保健法も改正され,在宅福祉サービスの推進,在宅福祉サービスと施設福祉サービスの市町村への一元化が図られた。
4 障害を理由とする差別を禁止し,障害者に他者と平等な権利を保障する国の責務を定めた障害者の権利に関する条約は,批准国が20か国に達しないため,平成23年7月現在,発効していない。
5 平成23年6月に成立した「障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律」は,障害者虐待の定義を,養護者・障害者福祉施設従事者・病院従事者・使用者による虐待としている。
正解は,選択肢2です。
精神薄弱者福祉法(現・知的障害者福祉法)が,日本の障害者福祉にとって,大きな転機となったのは,入所施設を創設したことです。
身体障害者福祉法は,傷痍軍人優遇政策を解体したGHQを意識してなのか,法成立は,身体障害者の生活支援のものではない,と関係者が説明しているように,生活施設は当初はありませんでした。
知的障害児は,児童福祉法に基づく施設に入所していましたが,児童福祉法は18歳以下を対象としているので,18歳になると退所しなければなりません。
そのため,成人の入所施設として,精神薄弱者援護施設が創設されたのです。
こののち,コロニーと呼ばれる大規模な入所施設が全国で作られていくことになります。
それでは,ほかの選択肢も解説します。
1は,当時の障害者の定義は,「身体上の障害のため職業能力が損傷されている18歳以上の者であって,都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けた者」です。職業的リハビリテーションを目的としていたためです。
3は,平成2年の福祉関係八法改正で,在宅福祉サービスと施設福祉サービスの市町村への一元化されたのは,老人福祉法と身体障害者福祉法です。
4 間違いです。障害者権利条約は,2006(平成18)年に採択,2008(平成20)年に発効しています。日本は,2007(平成19)年に署名しましたが,批准するので時間がかかり,批准したのは2014(平成26)年です。
5は,障害者虐待防止法における虐待者の定義は,病院従事者は含まず,養護者,障害者福祉施設従事者,使用者です。障害者虐待防止法は,別の機会に詳しく紹介したいと思います。
障害者権利条約の批准について
条約は,法的拘束力を持つので,国内法が不適切なまま批准してしまうと,国際的なペナルティを受けてしまいます。
そのため日本は,同条約を批准するために,障害者基本法改正などを整備して,ようやく2016年に批准したのです。
最新の記事
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体は,市町村です。 同法における都道府県の役割は,障害福祉計画の作成,地域生活支援事業の実施,障害福祉サービス事業者等の指定などに限られます。 なお,自立支援医療には,育成医療,更生医療,精神通院医療の3種類がありますが,このう...
過去一週間でよく読まれている記事
-
児童等を規定する法制度はいくつかありますが,法によって年齢が異なります。 覚えにくいですが, 児童の年齢は,基本的に18歳です 。 20歳が規定されるのは, 母子及び父子並びに寡婦福祉法 など,ほんのわずかしかありません。 多くの法制度では,18歳です。 それでは,今日の問題です...
-
グループワークは以下の過程で実施されます。 準備期 ワーカーがグループワークを行う準備を行う段階です。 この段階には「波長合わせ」と呼ばれるクライエントの抱える問題,環境,行動特性をワーカーが事前に把握する段階が含まれます。波長合わせは,準備期に行うので注意が必要です。 ...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...
-
生活保護法の基本原理と原則は,毎年のように出題されています。 ところで,原理と原則の違いはわかりますか? これを理解しておかないと,さまざまな形で引っ掛けようとする問題に容易に引っ掛けられてしまいます。 原理には,例外がありません。 原則には,例外があります。 今日のテーマは,申...
-
様々なアプローチは,毎年必ず出題されています。 しかも3~4問が出題されています。 ようやく出題実績のある12種類が揃いました。 ・心理社会的アプローチ 「 状況の中の人 」を基本概念として,心理社会的に課題のあるクライエントに対して,コミュニケーションを通して関わってい...
-
ソーシャルワークにおけるシステム理論は,人は環境との交互作用を行っていると考えます。 人は環境に影響を与え,環境は人に影響を与えます。 原因と結果が明確なことを「 直線的 」といいます。 原因と結果が明確ではなく,それが循環していることを「 円環的 」といいます。 〈原因と結果が...