2018年7月26日木曜日

障害者福祉の発展過程(その2)~身体障害者福祉法の定義(1949)

1949(昭和24)年に成立した身体障害者福祉法は,障害者福祉の始まりとなるものです。

当初の目的は,

身体障害者の更生を援助し,その校正のために必要な援助を行い,もつて身体障害者の福祉を図ること

とされていました。

更生とはリハビリテーションを意味し,職業的リハビリテーションを目的としたものでした。


職業的リハビリテーションを目的としたために,法の適用対象は,身体障害に限定し,精神障害,知的障害は対象にしませんでした。

そのために,日本の障害者福祉は,障害別に発展していくことになりました。

身体障害者,知的障害者,精神障害者の施策が一元化されるのは,2006(平成18)年に施行された障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)まで待たなければなりません。

身体障害者福祉法の現在の目的は,

障害者総合福祉法と相まつて、身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため,身体障害者を援助し,及び必要に応じて保護し,もつて身体障害者の福祉の増進を図ることを目的とする。

というように,当初にあった「更生」がなくなり,「参加」となっています。

それでは,今日の問題です。


第24回・問題129 障害者福祉の歴史的展開に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 昭和24年制定当時の身体障害者福祉法は,身体障害者の定義を,身体上の障害のため生活能力が損傷されている18歳以上の者であって,都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けた者とした。

2 昭和35年制定当時の精神薄弱者福祉法は,精神薄弱者援護施設を法的に位置づけ,入所施設の設置体制を整備した。

3 平成2年の福祉関係八法改正により,老人福祉法以外に身体障害者福祉法,精神薄弱者福祉法,精神保健法も改正され,在宅福祉サービスの推進,在宅福祉サービスと施設福祉サービスの市町村への一元化が図られた。

4 障害を理由とする差別を禁止し,障害者に他者と平等な権利を保障する国の責務を定めた障害者の権利に関する条約は,批准国が20か国に達しないため,平成23年7月現在,発効していない。

5 平成23年6月に成立した「障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律」は,障害者虐待の定義を,養護者・障害者福祉施設従事者・病院従事者・使用者による虐待としている。


正解は,選択肢2です。

精神薄弱者福祉法(現・知的障害者福祉法)が,日本の障害者福祉にとって,大きな転機となったのは,入所施設を創設したことです。

身体障害者福祉法は,傷痍軍人優遇政策を解体したGHQを意識してなのか,法成立は,身体障害者の生活支援のものではない,と関係者が説明しているように,生活施設は当初はありませんでした。

知的障害児は,児童福祉法に基づく施設に入所していましたが,児童福祉法は18歳以下を対象としているので,18歳になると退所しなければなりません。

そのため,成人の入所施設として,精神薄弱者援護施設が創設されたのです。

こののち,コロニーと呼ばれる大規模な入所施設が全国で作られていくことになります。

それでは,ほかの選択肢も解説します。


1は,当時の障害者の定義は,「身体上の障害のため職業能力が損傷されている18歳以上の者であって,都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けた者」です。職業的リハビリテーションを目的としていたためです。


3は,平成2年の福祉関係八法改正で,在宅福祉サービスと施設福祉サービスの市町村への一元化されたのは,老人福祉法と身体障害者福祉法です。

4 間違いです。障害者権利条約は,2006(平成18)年に採択,2008(平成20)年に発効しています。日本は,2007(平成19)年に署名しましたが,批准するので時間がかかり,批准したのは2014(平成26)年です。

5は,障害者虐待防止法における虐待者の定義は,病院従事者は含まず,養護者,障害者福祉施設従事者,使用者です。障害者虐待防止法は,別の機会に詳しく紹介したいと思います。


障害者権利条約の批准について

条約は,法的拘束力を持つので,国内法が不適切なまま批准してしまうと,国際的なペナルティを受けてしまいます。

そのため日本は,同条約を批准するために,障害者基本法改正などを整備して,ようやく2016年に批准したのです。

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