狭義の社会保障
・社会保険 年金保険・医療保険・雇用保険・労働者災害補償保険・介護保険
・公的扶助 生活保護
・社会福祉 身体障害者福祉,知的障害者福祉,老人福祉,児童福祉,各種手当,など。
・公衆衛生及び医療 結核対策,感染症予防,公害対策,医療,など。
・老人保健 高齢者医療,など。
広義の社会保障(狭義の社会保障プラス)
恩給 文官恩給,旧軍人遺族恩給,など
戦争犠牲者援護 戦没者遺族年金,原爆医療,など。
内容で分類すると
①所得保障(現金給付するもの)
②医療保障(医療サービスを給付するもの)
③社会福祉サービス(福祉ニーズを充足するもの)
それでは,今日の問題です。
第23回・問題50 「厚生労働白書」(平成20年版)による社会保障に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 社会保障の分野の中には,自立した生活の経済的基盤となる所得の保障があり,これには年金や介護サービス,障害者への自立支援サービス等がある。
2 社会保障の分野の中には,地域生活や家庭生活を支える社会サービスの保障があり,これには医療サービスや警察などの秩序維持サービス等がある。
3 社会保障の基本的な考え方は,自らが「自助」で生活することを応援する仕組みで,連帯して支え合う「共助」,困窮時の「公助」を対象とするものではない。
4 社会保障は所得の再分配機能があり,低所得者を救済する役割を果たすが,この機能は現金給付だけに該当する。
5 社会保障の分野の中には,持続可能な社会の担い手となる次世代の育成を支える給付・サービスの保障があり,子どもの健やかな育成や子育て支接に関する現金給付やサービスを行っている。
こんな問題を見ると,
「〇〇白書に目を通さなきゃ」
と思うことでしょう。
しかし,学校の勉強なら,〇〇白書に目を通すのは必須かもしれませんが,国試勉強では,目を通さなくても対応可能です。
別の言い方をすると,白書に目を通したくらいで点数は取れません。
さて,この問題の答えは,選択肢5が正解です。
社会保障の分野の中には,持続可能な社会の担い手となる次世代の育成を支える給付・サービスの保障があり,子どもの健やかな育成や子育て支接に関する現金給付やサービスを行っている。
これが正解だと知った後で,もう一度問題を読んでみましょう。
1 社会保障の分野の中には,自立した生活の経済的基盤となる所得の保障があり,これには年金や介護サービス,障害者への自立支援サービス等がある。
2 社会保障の分野の中には,地域生活や家庭生活を支える社会サービスの保障があり,これには医療サービスや警察などの秩序維持サービス等がある。
3 社会保障の基本的な考え方は,自らが「自助」で生活することを応援する仕組みで,連帯して支え合う「共助」,困窮時の「公助」を対象とするものではない。
4 社会保障は所得の再分配機能があり,低所得者を救済する役割を果たすが,この機能は現金給付だけに該当する。
5 社会保障の分野の中には,持続可能な社会の担い手となる次世代の育成を支える給付・サービスの保障があり,子どもの健やかな育成や子育て支接に関する現金給付やサービスを行っている。
選択肢5だけが,少し趣きが違うことに気がつくことでしょう。
正解選択肢は,その問題の中で最も重要な内容です。
そこにはメッセージが盛り込まれます。
今後覚える意味のないようなものは,正解選択肢には配置されません。
覚える意味のないようなものが正解選択肢に配置されるような問題があった場合は,その問題の質は悪すぎです。
その視点で,問題を眺めると,正解選択肢は,キラキラして見えてくることがあります。
過去問を読むときには,適度な距離感で眺めるとそこに気が付きやすくなるでしょう。
近づき過ぎるとそこが見えづらくなるので注意です。
それでは,間違い選択肢を解説します。
1 社会保障の分野の中には,自立した生活の経済的基盤となる所得の保障があり,これには年金や介護サービス,障害者への自立支援サービス等がある。
平成20年度版の厚生労働白書では,社会保障の3分野として,
①所得の保障
②社会サービス
③次世代の育成を支える保障
と整理しています。
これは,一般的な
①所得保障(現金給付するもの)
②医療保障(医療サービスを給付するもの)
③社会福祉サービス(福祉ニーズを充足するもの)
という分類とはちょっと違います。
しかし,所得保障は現金給付,社会福祉サービスは現物給付という構造が基本です。
つまり,所得保障には,年金は含まれますが,介護サービス,障害者への自立支援サービス等は,社会サービス(白書の分類による)に含まれます。
2 社会保障の分野の中には,地域生活や家庭生活を支える社会サービスの保障があり,これには医療サービスや警察などの秩序維持サービス等がある。
日本では社会サービスという用語はあまり使われることがなく,時代によって分類のされ方も変わってくるものですが,そこに引っかかるとこの選択肢の本筋を見失うことになります。
社会保障の分野の中には,狭義の社会保障にも,広義の社会保障にも,警察などの秩序維持サービスに当たるものはありません。
3 社会保障の基本的な考え方は,自らが「自助」で生活することを応援する仕組みで,連帯して支え合う「共助」,困窮時の「公助」を対象とするものではない。
共助は社会保険,公助は社会扶助に当たります。
どちらも社会保障制度ですね。
4 社会保障は所得の再分配機能があり,低所得者を救済する役割を果たすが,この機能は現金給付だけに該当する。
所得の再分配機能には,前回勉強したように,
①垂直的所得再分配機能
所得の高い者から低い者へ再分配するもの
②水平的所得再分配機能
稼働能力のある者から稼働能力のない者へ再分配するもの。
があります。
①垂直的所得再分配機能は,現金給付が中心です。
②水平的所得再分配機能は,社会福祉サービスなどにみられるように現物給付が中心です。
現金給付だけが該当するものではありません。
〈今日の一言〉
「社会保障は苦手」という人がいます。
今日の問題を見ると,「現代社会と福祉」で出題されても良いようなものかもしれません。
つまり,「社会保障」は「現代社会と福祉」につながっていると言えるでしょう。
苦手な人が多いということは,他の人と差をつけるチャンスともなります。
「現代社会と福祉」「福祉行財政と福祉計画」「社会保障」の3科目は,どれも同じくらいに点数が取りにくい科目かもしれません。
しかし,この3科目に共通して言えることは,根幹を押さえれば,決して得点するのは難しくないということです。
「心理学理論と心理的支援」や「社会理論と社会システム」に必要以上の時間をかけてはだめです。
多くの人は,そこに時間をかけすぎて,その先に進めなくてつまづきます。
このブログを読んでいる方は,ぜひ前を向いて突き進んでほしいと思います。