2018年7月23日月曜日

社会保障の徹底攻略法~傷病手当金

今回も健康保険を続けたいと思います。

傷病手当金とは・・・

医療保険の被保険者が,けがや病気のために仕事に就けないために,給与が支払われない場合に給付されるものです。

ただし4日目からという条件があります。

傷病手当金は,健康保険と共済は法定給付で,国民健康保険は任意給付です。

市町村国民健康保険で給付しているところはありません。国保組合では半分くらいが給付しています。

それでは今日の問題です。

第29回・問題54 事例を読んで,Dさんの保険給付に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

〔事 例〕
 健康保険の被保険者であるDさんは,勤務先の業務がない日に自動車の運転を誤って電柱に衝突し,骨折したため病院に人院し,翌日から会社を休んだ。

1 Dさんには労働者災害補償保険から休業補償給付が支給される。

2 Dさんの骨折の治療には自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)が適用される。

3 Dさんには,雇用保険から基本手当が支給される。

4 Dさんが協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の被保険者である場合,健康保険の傷病手当金は,受給できない。

5 Dさんが二日間入院して退院し,その翌日から休業せずに勤務を続けた場合,健康保険の傷病手当金は支給されない。


正解は,選択肢5です。傷病手当金は,4日以降の休業に対して給付されます。


4日以降の休業に対して給付されるのは,労働者災害補償保険の休業補償給付(休業給付)と同じです。

もしこの事例が,業務のある日のけがだとしたら,休業補償給付が優先され,傷病手当金は給付されません。どちらも同じ事由による所得保障だからです。

ただし,休業補償給付で受け取る金額が傷病手当金で受け取る金額よりも低かった場合は,その差額が傷病手当金として給付されます。


それでは,他の選択肢も解説します。

1は,業務がない日のけがなので,労災には適用されません。

労災保険には,メリット制と呼ばれる災害率によって保険料が上下する制度があるので,業務のある日のけがでも業務のない日にけがをしたことにして「労災隠し」をする事業者がいます。

しかし,労災隠しは犯罪です。


2は,自賠責保険は,民間保険ですが,自動車損害賠償保障法によって実施されている特殊な保険です。

保障内容は対人に限定されています。現在の補償額は死亡の場合1,200万円です。

対物や運転手本人のけがは保障されません。


3は,雇用保険の基本手当は失業した場合に給付されます。この場合は休業であり,失業ではありません。


4は,健康保険である協会けんぽには,傷病手当金があります。傷病手当金がないのは,市町村国民健康保険の場合です。


<今日のおまけ>~ここまで覚えることはない

傷病手当金は,仕事以外のけが・病気の場合,給料の2/3(67%)相当が給付されます。

休業補償給付は,仕事上のけが・病気の場合,給料の60%相当が給付されます。

同じ休業の所得保障なのに,給付率が違うところが不思議な感じがします。


傷病手当金の給付期間は,最大1年6か月です。

1年6か月と聞いて「何かにもあったなぁ」と思った人はかなり勉強が進んでいると思います。

障害基礎年金の障害認定日は初診日から1年6か月です。

障害のために休業している場合,1年6か月までは傷病手当金がカバーします。

1年6か月を経過した時,国民年金法の障害等級1・2級に該当する場合は,障害基礎年金と障害厚生年金が給付されます。

3級に該当する場合は障害厚生年金が給付されます。

傷病手当金は,退職しても給付されますが,退職日に出勤してしまうと労働可能とみなされ,それ以降は給付されません。休業したまま退職することが条件です。


一方労災保険の休業補償給付は,1年6か月を経過した時,労働者災害補償保険法の障害等級の1~3級に該当する場合,傷病補償年金(傷病年金)が給付されます。

該当しない場合は,引き続き休業補償給付が給付されます。

休業補償給付も受給中に退職しても,引き続き休業補償給付を受けることができます。

「社会保障」は,今回で終わりです。

次回からは,「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」に移ります。

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