2018年7月25日水曜日

障害者福祉の発展過程(その1)~福祉関係八法改正(1990)

日本の福祉の発展過程には,いくつかの節目があります。

その一つは,1990・平成2年のいわゆる「福祉関係八法改正」でしょう。

この改正では,近く到来するであろう高齢社会(高齢化率14%)に向けて,住民に身近な市町村が在宅福祉サービスと施設福祉サービスを一元的に提供するために,老人福祉法と身体障害者福祉法の施設入所措置を都道府県から権限移譲しました。

また,在宅福祉サービスを第2種社会福祉事業として規定しました。

この辺りから,福祉公社や市町村社会福祉協議会が在宅福祉サービスを提供し始めて,在宅福祉の担い手になっていきます。

福祉関係八法改正は,現行カリキュラムでは,第22・23・24・26・27・29回に出題されています。

さすがは,節目の改正だけに頻出度が高いです。

絶対に覚えておきたいです。

それでは,今日の問題です。

第23回・問題13 障害者制度の発展過程に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 昭和45年心身障害者対策基本法が施行され,障害者福祉制度は急激に発展し,障害種別による施設入所施策の強化の方向性が強く示された。

2 「国連・障害者の十年」は,我が国の障害者福祉制度に大きな影響を与え,その結果,重症心身障害児施設が制度化された。

3 昭和59年の宇都宮病院事件は,病院における非人道的な処遇が国際的にも注目され,昭和62年の精神衛生法の成立に影響を与えた。

4 平成2年の福祉関係八法改正により,身体障害者福祉行政について,在宅福祉と施設福祉の市町村への一元化が図られた。

5 平成12年の社会福祉事業法等の改正により,障害者福祉制度に支援費制度が導入され,身体障害,知的障害,精神障害の3障害の制度格差が解消された。


知識がなければ,絶対に正解できない問題だと思います。

正解は,選択肢4です。福祉関係八法改正で,老人福祉法と身体障害者福祉法に基づく入所措置事務は,市町村に移譲されて在宅福祉と施設福祉は市町村に一元化されています。


それでは,他の選択肢を見ていきましょう。

1の心身障害者対策基本法は,1993・平成5年に改正されて,障害者基本法となっています。

基本法という名称の法律なので,具体的なものではなく,障害者福祉の理念を示したものです。

障害者福祉は,それ以前にできた,身体障害者福祉法,精神薄弱者福祉法,児童福祉法によって発展してきました。

心身障害者対策基本法は,それらの基本法となるものとして,障害者福祉の理念を規定したものです。

障害種別が一元化されるのは,障害者自立支援法の成立まで待たなければなりません。

2の重症心身障害児施設は,1961・昭和36年,島田療育園が設立されたところに始まり,1967・昭和42年に児童福祉法の改正で規定されています。

「重症心身障害児施設ができたのはいつか」ということを問われることがこのほかにも数回あります。

細かい年は覚える必要はありません。

「日本の重度障害児・者の施策は1960年代に成立した」

これだけで良いです。この流れは後日詳しく紹介します。

3は,宇都宮病院事件がきっかけとなり,成立したのは「精神保健法」です。この時に任意入院が制度化されています。

現在の精神保健福祉法は

精神衛生法 → 精神保健法 → 精神保健福祉法

と変遷しています。


4は正解です。

5の支援費制度は,2003~2005年のわずか3年間のみの制度でした。

これによって,ようやく障害者福祉も措置から契約制度に変わりました。

しかし,精神障害者は支援費制度の対象ではありませんでした。

精神障害者が含められたのは,障害者自立支援法です。



<今日の一言>

障害者福祉の発展過程は,現行カリキュラムでは,第26回を除いて毎回出題されています。

しかし,出題されるのはたった1問です。

歴史を覚えるのが苦手だと思う人は捨てても1点,取れても1点です。

しかし,まだ捨てるのは早いです。

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