児童に関する手当に関する出題は
第22回 社会保障&児童と家庭
第24回 社会保障&児童と家庭
第27回 社会保障&児童と家庭
第29回 児童と家庭
第30回 社会保障
で出題されています。かなり高頻度であることが分かります。しかも「社会保障」,「児童と家庭」の2科目にわたって出題されているだけに絶対に押さえなければなりません。
それでは今日の問題です。
第30回・問題55 児童手当,児童扶養手当に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 児童手当の支給対象となる児童の年齢は,12歳到達後の最初の年度末までである。
2 児童手当の費用は,国と地方自治体が50%ずつ負担している。
3 児童手当の支給額には,物価スライド制が適用されている。
4 児童扶養手当の費用は,国が全額負担する。
5 児童扶養手当の支給対象となる児童の年齢は,障害がない子どもの場合,18歳到達後最初の年度末までである。
正解は,選択肢5です。
1は,15歳到達後の最初の年度末までです。
2は,国が3分の2,地方が3分の1です。
3は,児童手当には,物価スライド制はありません。
4は,国が3分の1,都道府県,市及び福祉事務所設置している町村は3分の2を負担です。
児童手当と負担割合が逆になっていることに着目しましょう。
5が正解です。
<今日の問題で注目すべき点>
国試は,布石を打ってくる!!
国試は,初めて出題する内容は,間違い選択肢として先に出題しておく傾向があります。
そのため,国試では混乱しやすいですが,落ち着けば消去できます。
問題は,その後です。それを足掛かりにして,出題範囲を少し広げてきます。
このような傾向になるのは,試験委員は変わっても,重要な点は同じだということなのでしょう。
今日の問題で注目すべき点は2点です。
<物価スライド制(物価の上下によって支給額も変わる仕組み)が導入されているもの>
児童扶養手当
特別児童扶養手当(障害児福祉手当も特別障害者手当も)
特別障害給付金(無年金の障害者救済のための一時金)
物価スライド制があるもの → 児童扶養手当,特別児童扶養手当
物価スライド制がないもの → 児童手当
<児童に関する手当の費用負担>
児童手当 → 国:3分の2,地方:3分の1 ※事業主の拠出あり。
児童扶養手当 → 国:3分の1,地方:3分の2
特別児童扶養手当 → 国:4分の3,地方:4分の1
複雑そうに思えるかもしれませんが,基本的な考え方は簡単です。
国の責任の重さの違いが如実に出ていることに着目しましょう。
特別児童扶養手当(国の責任は大)
障害者に対する施策は国際的なものです。障害者基本法の所管は内閣府,障害者政策委員会も内閣府に置かれるなど,特別な位置づけにあります。
児童手当(国の責任は中)
子育て支援は,今後の日本のために重要です。そのため,事業主にも拠出してもらいます。
児童扶養手当(国の責任は小)
両親の離婚,あるいは死亡は,個別的な特別ニーズです。障害のある児童に給付される特別児童扶養手当,所得制限があっても規定の範囲の児童すべてを対象とする児童手当のように,普遍的なニーズのものとはちょっと異なっています。
力技で覚えるよりも,こういった工夫一つで,とてもシンプルに覚えられるようになります。
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