現役世代の被用者にとって,最も多く利用する機会があるのは,健康保険です。
そのため,健康保険に関する出題は多いです。
絶対に押さえておきたい領域です。なじみがある領域だから覚えるのは比較的簡単でしょう。
それにしても,1984年までは,健康保険の被保険者は10割給付だったために,本人負担がなかったというのはすごいですね。
第26回・問題55 健康保険の給付に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 健康保険組合は,人間ドックなどの健康診査を療養の給付の対象とすることができる。
2 受診時の自己負担の額は,被保険者本人については3割であるが,被扶養者である義務教育就学前の児童については1割となっている。
3 高額療養費は,1年間に被保険者が支払った健康保険と介護保険の自己負担額の合計が基準額を超えた場合に支給される。
4 薬事法上は承認されたが,薬価基準に収載されておらず医療保険が適用されない医薬品を用いて治療を行う場合,保険外併用療養費が支給されることがある。
5 被保険者本人が出産した場合には,出産手当金が支給されるため,出産育児一時金は支給されない。
正解は,選択肢4です。保険外併用療養費は必ず覚えておきたいです。
日本の診療報酬では,いわゆる混合診療と呼ばれる保険診療と保険外診療を一緒に提供することは認められていません。
保険外診療が提供されると,保険診療もすべて自己負担となります。
混合診療を認めるものではないですが,すべて自己負担とならないようにするための制度として,保険外併用療養費というものがあります。
現在は,評価療養,選定療養,患者申出療養の3種類があります。
評価療養は,簡単に言うとまだ保険適用となっていない治験や先進医療を用いたものです。
選定療養は,簡単に言うと患者が選べるもの,具体的には差額ベッド代などです。
患者申出療養は,2016年に導入された制度で,先進医療にも治験にも対象となっていないものを利用したいと患者が申し出て認められると保険診療と併用することができるものです。
保険外の部分はすべて自己負担なので,とても負担があります。そのために民間の保険会社では,保険外併用療養費を対象とするものも出てきています。
それでは,ほかの選択肢も解説します。
1は,人間ドックなどの健康診査は,療養の給付(現物給付)にはできません。
<療養の給付(現物給付)の範囲>
①診察
②薬剤・治療材料
③処置・手術など
④在宅療養
⑤入院療養
健保組合には,協会けんぽには認められていない「付加給付」があるので,人間ドックなどの健康診査は,付加給付の対象とすることができます。
健康保険の法定給付には,現物給付である「療養の給付」のほかに,現金給付があります。
現金給付の種類には,傷病手当金,出産育児一時金,出産手当金などがあります。
傷病手当金は,健康保険では法定給付ですが,国民健康保険では任意となっており,市町村国民健康保険では,給付しているところは1か所もありません。
国保組合では半分くらいが給付しています。
なお,療養の給付は,被扶養者に給付される場合は「家族療養費」と言います。
2は,被扶養者である義務教育就学前の児童は,2割給付です。
市町村によって無料であったり定額であったりしますが,それは市町村の施策によって,市町村が負担しているからです。法制度上は,2割負担です。
3は,高額療養費ではなく,高額介護合算療養費です。これらは,「保健医療サービス」で詳しく学ぶ範囲です。
5は,出産手当金と出産育児一時金は併給できます。
出産育児一時金は,医療保険の被保険者本人と被扶養者の出産の際に給付されるものです。
出産手当金は,被保険者が出産して,産前産後に仕事ができなかったために給料がもらえない場合の所得保障です。
しっかり違いを押さえておきましょう。