社会福祉士の国家試験の合格率は,第30回が高くなったとは言え,それでも30%程度です。
試験を実施している社会福祉振興・試験センターが今後どのように方針を変えるか分かりませんが,少なくても40%や50%も合格させるつもりはないだろうと思います。
つまり,同じ福祉の国家資格である介護福祉士や精神保健福祉士とは違うということです。
そこを押さえておくことは自分が合格するためにとても大切です。
さて,今日も国試にかかわる都市伝説を続けます。
3か月あれば合格できる
試験合格者によるアドバイスで最もありがたくないのは,これだと思っています。
チームfukufuku21は,このことについて何度か書いてきましたが,とても根強いものです。
試験勉強で大切なのは,かけた時間ではなく,どんな勉強をしたのかです。
3か月神話を鵜呑みにすると大変なことになります。
3年間の過去問を3回繰り返せば合格できる
「3か月で合格できる」よりは,少し具体的な方法論だと思います。
しかし,3年間の過去問を本当に丁寧に解けばよく分かりますが,繰り返し出題されているものは,ほんの一部です。数えたことはありませんが,3年間の問題で重なっているものは,5分の1もないでしょう。
50歳代の合格率は3%
国家試験センターは,合格者の年代別の割合は発表していますが,受験者の年代別の割合は発表していません。
つまり,年代別の合格率は分かりません。
ここに恣意的なものを感じるのです。
もしかすると,大学生が大半を占める20歳代の合格率よりも,それ以上の年代の方が合格率が高いのではないかと思うのです。
30歳代以上の受験者の多くは,一般養成施設で受験資格を得た人だと思います。
学校別の合格率が発表されていますが,全受験者の合格率よりも下回る大学は半分くらいありますが,一般養成施設でその数字を下回っているところはほとんどありません。
そこから想像すると,20歳代よりも30歳代以上の方が合格率が高いかもしれない,という仮説はあながち間違いではないように思います。
どちらにしても50歳代の合格率が3%というデータを表すものは発表されていないわけですから,完全なデマであることは間違いありません。
前回と今回の2回にわたり,都市伝説をまとめてみました。
合格に必要なものは,地道な勉強しかありません。
そこに必要なのは,一つひとつを確実に覚えていくための工夫です。
介護福祉士の資格を持っている人も多いと思いますが,国試問題の作られ方はまったく違うので,その延長で考えると失敗のもとです。
制度をいかに正確に押さえていくかは,合否を分ける要素です。
次回からは,また問題を解きながら,勉強法をお伝えしていきたいと思います。
制度間でつながる法則性,歴史問題を押さえるための時間軸など,過去問はヒントの宝庫ですが,それらは3年間の過去問を3回解くだけでは分かり得ないものです。
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