いよいよ大詰めになってきました。
さて,今回は各法規における障害者の定義をまとめていきたいと思います。
障害者基本法・障害者差別解消法・障害者優先調達推進法
<障害者>
身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの。
障害者雇用促進法
<障害者>
身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるため,長期にわたり,職業生活に相当の制限を受け,又は職業生活を営むことが著しく困難な者。
障害者総合支援法
<障害者>
身体障害,知的障害,精神障害,難病のある者のうち,18歳以上の者。
身体障害者福祉法
<身体障害者>
身体上の障害がある18歳以上の者であって,都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けた者。
知的障害者福祉法
<知的障害者>
規定なし。
精神保健福祉法
<精神障害者>
統合失調症,精神作用物質による急性中毒又はその依存症,知的障害,精神病質その他の精神疾患を有する者。
発達障害者支援法
<発達障害者>
発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受ける者。
※発達障害とは?
自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
障害者手帳には3種類があります。
身体障害者手帳(身体障害者)
療育手帳(知的障害者)
精神障害者保健福祉手帳(精神障害者)
このうち,障害者の定義で,手帳を持っていることをもって,障害者だとされるものは,身体障害者のみです。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題61 障害者の法律上の定義に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 障害者基本法における「障害者」には,一時的に歩行困難になった者も含まれる。
2 発達障害者支援法における「発達障害者」とは,発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいう。
3 「障害者総合支援法」における「障害者」は,20歳以上の者とされている。
4 知的障害者福祉法における「知的障害者」とは,児童相談所において知的障害であると判定された者をいう。
5 「精神保健福祉法」における「精神障害者」とは,精神障害がある者であって精神障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいう。
(注) 「精神保健福祉法」とは,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことである。
このように並べられると,すべてが正しく見えてくるものです。
「福祉行財政と福祉計画」と同じ原理ですね。
しかし,援助対象者はたまたま障害をもっている「Aさん」という一人のクライエントです。
障害で縦割りになっていても,対象者が変わるわけではありません。
そういった面で,障害者総合支援法が,3障害の福祉サービスを一元化したというのは,日本の福祉行政の中では,活気的なものだと言えるでしょう。
それでは,解説しながら,それぞれをしっかり押さえていきましょう。
1 障害者基本法における「障害者」には,一時的に歩行困難になった者も含まれる。
障害者基本法の障害者の定義
身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの。
「継続的に」です。「一時的」ではありません。よって間違いです。
2 発達障害者支援法における「発達障害者」とは,発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいう。
これが正解です。社会的障壁とは,いわゆるバリアを意味します。障害者基本法の2011年の改正で初めて加わったものに続き,発達障害者も2016年改正で加わりました。
3 「障害者総合支援法」における「障害者」は,20歳以上の者とされている。
障害者総合支援法の障害者は,18歳以上が対象です。よって間違いです。
それ未満は,児童福祉法が適用されます。
4 知的障害者福祉法における「知的障害者」とは,児童相談所において知的障害であると判定された者をいう。
知的障害者福祉法では,知的障害者の定義はありません。
よって間違いです。
5 「精神保健福祉法」における「精神障害者」とは,精神障害がある者であって精神障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいう。
精神保健福祉法の精神障害者は,統合失調症,精神作用物質による急性中毒又はその依存症,知的障害,精神病質その他の精神疾患を有する者です。
<今日のまとめ>
障害にはさまざまなものがあります。
定義を間違いなく,理解していくのは,とても大変だと思いますが,ポイントを押さえましょう。
<社会的障壁が定義に含まれるもの>
障害者基本法の障害者(障害者差別解消法・障害者優先調達推進法)
※この3法は定義がまったく一緒です。
知的障害者福祉法の発達障害者
<障害者手帳の交付が条件になっているもの>
身体障害者
同じところ,違うところに着目することで,効率よく覚えることができて,さらには間違いにくくなります。