演繹法
セオリー・法則から,個別の事象を考える
帰納法
個別の事実を積み重ねることで,セオリー・法則を導き出す
私たちチームfukufuku21は,過去に行われた国試を分析して,法則性を見つけ出しています。
その意味では,帰納法と言えるでしょう。
国,都道府県,市町村の役割は,もしかすると地方自治法あたりに根拠があるのかもしれません。
しかし,法律の専門家ではないので,そこから個別の事象を考える演繹法はチームfukufuku21には使えません。
そこで,ずっと行ってきているのが,帰納法です。
例えば
サービス管理責任者(障害者総合支援法)の研修は都道府県が行う。(事実)
介護支援専門員(介護保険法)の研修は都道府県が行う。(事実)
児童指導員(児童福祉法)の研修は都道府県が行う。(事実)
だから
研修事業は,都道府県が行うのではないか(推論)。
相談支援専門員(障害者総合支援法)の研修はどこが行うのだろう?(疑問)
調べたら,やっぱり都道府県だった。(事実)
しかし,すべての研修事業は都道府県が行っているのだろうか?(新たな疑問)
市民後見人の研修は市町村が行っている。(事実)
これらの事実を積み重ねると
専門職に対する研修は都道府県が行う。
市民に対する研修は市町村が行う。
といった推論ができます。
これで,ほとんどのものは対応できます。
もし,基本を押さえておいて,それ以外のものが出てきた場合は,その例外事項を覚えるだけです。
覚える量は格段に減ります。
そして
間違える率も格段に減ります。
帰納法は,基本と例外を整理することができます。
楽に覚えるコツがここにあります。
楽に覚えるのは,手抜きをすることではありません。
コツをつかんで覚えていくことです。
さて,それでは今日の問題です。
第29回・問題58 「障害者総合支援法」における自治体の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 市町村は,精神通院医療について支給認定を行う。
2 市町村長は,自立支援給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針を定める。
3 都道府県は,障害児通所給付費の給付決定を行う。
4 都道府県知事は,介護給付費等に係る処分の審査請求事案を取り扱う。
5 都道府県知事は,指定特定相談支援事業者の指定を行う。
(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
第29回国試問題ですから,問題の文章は,余計な言い回しは一切存在していません。
<基本>
障害者総合支援法に規定する障害福祉サービスの支給認定は,基本的には市町村の役割です。
障害福祉サービス事業者の指定は,基本的には都道府県の役割です。
あとは「基本的に」ではない「例外事項」を覚えるだけのことです。
それでは解説です。
1 市町村は,精神通院医療について支給認定を行う。
まずは,支給決定は基本的に市町村が行っています。
自立支援医療は,育成医療,更生医療,そして精神通院医療があります。
例外事項は,このうちの「精神通院医療」です。
これは都道府県が行います。
いわゆるライシャワー事件のあとに,精神衛生法が改正されてできたのが「精神通院医療」です。
市町村が行うには,荷が重すぎるのです。
よって間違いです。
2 市町村長は,自立支援給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針を定める。
「基本指針」「基本計画」など「基本」がつくものを定めるのは,基本的に国です。
よって間違いです。
「基本」がついていても,「基本構想」とつくものは,地方自治体がつくります。
これは地方自治法に根拠があります。
3 都道府県は,障害児通所給付費の給付決定を行う。
支給決定は,基本的には市町村が行っています。障害児通所給付費の支給決定は市町村が行います。
よって間違いです。
精神通院医療は,都道府県の役割という例外事項でしたが,児童福祉法に基づくものにも例外事項はあります。
障害児通所給付費の支給決定は市町村です。
しかし
障害児入所給付費の支給決定は,都道府県です。
障害児が入所するのは,親から引き離されることを意味するので,高度な判断が求められます。
そのために市町村が行うには,荷が重すぎるのです。
4 都道府県知事は,介護給付費等に係る処分の審査請求事案を取り扱う。
これが正解です。
ここで注意が必要なのは,審査請求先は「障害者介護給付等不服審査会」ではないということです。
介護保険法の要介護認定等の審査請求は,都道府県に設置される介護保険審査会に対して行うのとはちょっと違っています。
この違いは,介護保険審査会は都道府県に必置であるのに対し,障害者介護給付等不服審査会は都道府県に任意設置であることによります。
5 都道府県知事は,指定特定相談支援事業者の指定を行う。
事業者の指定は,基本的に都道府県です。
介護保険法では,地域密着型サービスがあるのでちょっと複雑ですが,障害者総合支援法の例外事項は,指定特定相談支援事業者の指定だけです。
これだけは,市町村が行います。
障害者総合支援法には,相談支援事業者が2種類あります。
地域相談支援 → 指定一般相談支援事業者 → 都道府県が指定
計画相談支援(ケアマネジメント) → 指定特定相談支援事業者 → 市町村が指定
さすがにもう覚えたことでしょう。
<今日の一言>
介護保険法も基本は,都道府県知事が指定します。
例外事項は,地域密着型サービスと居宅介護支援事業者(ケアマネジメント)は市町村が指定します。
居宅介護支援事業者の指定は,平成30年4月から市町村に変わったことで,障害者総合支援法も介護保険法もケアマネジメントを行う事業者の指定は市町村に統一されたことになります。
受験生にとっては覚えやすくなったと言えるでしょう。