2018年8月11日土曜日

障害者総合支援法の徹底理解~相談支援

障害福祉サービスになじみがない人にとっては,障害者総合支援法は難しく感じることでしょう。

その中でも,相談支援は,介護保険制度と違って2本立てになっているために,しっかり整理することが求められます。

<相談支援事業>
地域相談支援 病院等に入院等をしている障害者の地域移行のための相談支援です。

計画相談支援 障害福祉サービス利用のためのケアマネジメントです。

このほかに児童福祉法に規定される障害児のケアマネジメントを行う障害児相談支援があります。

まずは,地域相談支援です。
もともとは,精神障害者の地域移行事業から始まったものです。
地域相談支援では
基本相談支援 
地域移行支援
地域定着支援
を行います。

それぞれは名称のまま内容です。基本相談支援は,基本的な相談支援,地域移行支援は,病院等に入院等をしている障害者が地域生活に移行するための相談支援,地域定着支援は,地域移行して地域で生活を送る障害者の地域生活を継続できるように支援します。
具体的な相談内容については,国試では出題されません。ぞれぞれの内容がわかっていれば対応できます。

ここからが混乱のもとになることです。

地域相談支援を行う事業者は,指定一般相談支援事業者です。

指定するのは,都道府県です。

歴史でみたように,ライシャワー事件をきっかけに,日本の精神障害者は施設収容が処遇の中心となりました。

精神障害者の地域移行は,障害者の権利を守るために重要ではあるものの,国にとってまたライシャワー事件のようなことが起きたら大変なことになります。

そこで,指定は市町村ではなく,都道府県が行っているというのが本音のところかと思います。

もう一度繰り返します。

地域相談支援 → 指定一般相談支援事業者 → 指定は都道府県

紙に書いて,トイレにでも貼っておきましょう。

さて,次は計画相談支援です。

計画相談支援は,
基本相談支援
サービス利用支援
継続サービス利用支援

基本相談支援は,地域相談支援と内容は同じです。
サービス利用支援は,ケアマネジメントです。
継続サービス利用支援は,モニタリングを行って,サービス等利用計画(ケアプラン)を見直します。

介護保険の居宅介護支援と違うのは,施設入所支援を利用しても,計画相談支援を行う点です。

介護保険は施設入所すると施設ケアマネがかかわり,居宅ケアマネの手から離れます。
障害者総合支援法の特徴がここに現れていると言えます。

というのは,日中活動と夜間サービスが分かれているのです。

施設入所である施設入所支援は,主に夜間にサービスを行うものであり,日中は,生活介護や就労支援サービスなど別なサービスを利用します。

そのため,施設入所支援を利用しても,ケアマネジメントを行う理由です。

さて,計画相談支援を行う事業者は,指定特定相談支援事業者です。
指定は市町村です。

地域計画支援が「一般相談支援」,計画相談支援が「特定相談支援事業」になっている理由は,地域計画支援事業が先に行われていたために,地域相談支援を「一般」にして,後からできた計画相談支援を「特定」にしたというものです。

計画相談支援はケアマネジメントです。介護保険のケアマネジメントを行う居宅介護支援も2018年から指定が市町村に移行されて,介護保険と障害福祉サービスのケアマネジメントを行う事業者の指定はどちらも市町村に統一されたことになります。覚えやすくなったと言えます。

さて,それでは今日の問題です。

第25回・問題57 障害者総合支援法のもとでの相談支援に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 支給決定プロセスにおいて,サービス等利用計画案は支給決定がなされた後に作成されるものである。

2 相談支援専門員は,指定計画相談支援においてサービス等利用計画を作成し,地域移行支援と地域定着支援を行う。

3 地域定着支援は,障害者支援施設に入所している障害者や精神科病院等に入院している精神障害者に対して,住居の確保や新生活の準備等について支援するものである。

4 相談支援専門員は,サービス利用支援においてサービス等利用計画を変更するとともに,関係者との連絡調整を行う。

5 基幹相談支援センターは,虐待防止等権利擁護のために必要な援助を行うことが期待されている。

難しいかもしれませんが,内容が分からなくても選択肢5が正解っぽく感じるはずです。

ここだけ文章が違っています。今の国試はこんなほころびはほとんどありませんから,内容をしっかり覚えておかなければ得点には絶対に結びつきません。

正解はもちろん選択肢5です。基幹相談支援センターは,市町村に任意設置の機関で,介護保険の地域包括支援センターと同様の役割があります。

さて。解説です。

1 支給決定プロセスにおいて,サービス等利用計画案は支給決定がなされた後に作成されるものである。

サービス等利用計画は,介護保険の居宅サービス計画です。

支給決定の前にサービス等利用計画案が作成されて,支給決定した後にサービス等利用計画が作成されます。よって間違いです。

2 相談支援専門員は,指定計画相談支援においてサービス等利用計画を作成し,地域移行支援と地域定着支援を行う。

計画相談支援では,サービス利用支援と継続サービス利用支援を行います。地域移行支援と地域定着支援を行うのは,地域相談支援です。よって間違いです。

3 地域定着支援は,障害者支援施設に入所している障害者や精神科病院等に入院している精神障害者に対して,住居の確保や新生活の準備等について支援するものである。

障害者支援施設に入所している障害者や精神科病院等に入院している精神障害者に対して,住居の確保や新生活の準備等について支援するのは,地域移行支援です。よって間違いです。

4 相談支援専門員は,サービス利用支援においてサービス等利用計画を変更するとともに,関係者との連絡調整を行う。

サービス等利用計画を変更するのは,継続サービス利用支援です。よって間違いです。

5 基幹相談支援センターは,虐待防止等権利擁護のために必要な援助を行うことが期待されている。

これが正解です。

どうでしたか。

内容が分かれば,難しそうであっても得点できます。

すべての問題は,こんな感じです。

決して尻込みすることなく,こつこつ頑張っていきましょう。

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