第30回国試は,合格基準点が過去最高の99点になったことで,さまざまな論議を呼び起こしました。
第31回国試は,それを受けてどのように変わるのかは分かりませんが,試験委員の構成メンバーはほとんど入れ替わっていないことから,基本的なことは踏襲されると思います。
基本ライン(チームfukufuku21の考察の結果による)
①問題文の中に,3つ以上の要素は作らない。
②誰でも間違いだと分かるような言い回しをしない。
③表現はそろえる。
といった内容です。
①については,
Aは,Bをいう。
という表現にする,ということです。
Aは,〇〇なので,Bである。
Aは,BやCをいう。
AはBであるが,CはAでない。
という問いかけはほとんど見られません。
②については,
「すべて」「のみ」などの表現はほとんど見られなくなってきています。
第30回で,「のみ」が使われているのは,たった一か所
育児休業中,C さんの厚生年金保険の保険料は,事業主負担分のみ免除される。
です。
「すべて」は一か所も使われていません。
現行カリキュラム第1回の第22回では
のみ 3か所
すべて 4か所
といった感じです。
旧カリキュラムの第15回をみると
のみ 8か所
すべて 5か所
間違い選択肢の常とう手段である表現を入れなくても作問できる技術を持ち始めたということなのだと思います。
③については
1 〇〇ではない。
2 〇〇ではない。
3 〇〇ではない。
4 〇〇である。
5 〇〇である。
というような表現のばらつきは避ける傾向にあるようです。
第30回では
1 勉強不足に原因がある。
2 問題が難しかったことに原因がある。
3 電車が遅れ遅刻したことに原因がある。
4 運が悪かったことに原因がある。
5 教師の指導力不足に原因がある。
これは「原因がある」とそろっています。
1 都道府県は,発達障害者支援センターを設置しなければならない。
2 都道府県は,身体障害者更生相談所を設置しなければならない。
3 市町村は,児童相談所を設置しなければならない。
4 市町村は,婦人相談所を設置しなければならない。
5 市町村は,保健所を設置しなければならない。
これは「設置しなければならない」とそろっています。
表現をそろえられると迷いやすくなります。
これらの基本ラインは踏襲しつつも,点数が取りにくい問題をつくるとすると,間違い選択肢は,思いっきりでたらめなものを組み込む方法があります。
受験生は,それをされるとさに混乱します。
たった1つの選択肢で,問題の難易度は大きく変わるのです。
国試は,本来は学んだことを問うものです。
五者択一(あるいは択二)でなければ,でたらめな出題をする必要はありません。
そういう面では,試験委員にとっては,でたらめ選択肢を入れることは,心苦しいものなのかもしれません。
しかし,①~③の基本ラインで出題してくれるなら,正解選択肢はシンブルになっているので,知識のある人は正解できるものとなります。
知識の差で,点数は大きく差がつく試験となります。
最新の記事
キャプランによる予防の概念
人名は覚える必要はありませんが,危機理論を提唱したキャプランは,予防の概念である予防モデルを提唱しています。 今日では,広くさまざまな分野で用いられています。 予 防モデル 一次予防 問題を発生させないこと。 ...
過去一週間でよく読まれている記事
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
今日から新年度です。 気持ちを新たにスタートです。 当学習部屋を開設以来,ほぼ毎日新しい情報を出して来ました。 ずっとご覧になっていた方は,間が空いたことが不思議に思ったでしょう。 実は,今年の国家試験が終わったところから,ペースを変えて,2日に1回にしようと計画していました。 ...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
前回まで, ①役割期待 ②役割距離 を紹介してきました。 そのうちの②役割距離は,ちょっと難しい概念でしたが,理解できましたでしょうか。 役割距離とは, 人は役割期待に対して,ちょっと距離を置いた行動をとること。 理解しきれていない人は,もう一度前回を確...
-
前回に引き続き,今回もヴェーバーの社会的行為です。 目的合理的行為 価値合理的行為 伝統的行為 感情的行為 目的を達成するために行う行為。 行動そのものに意味がある行為。結果は重視されない。 慣習や習慣によって行う行為。 感情によって行う行為。 それでは,今日の問...
-
ICFで用いられる用語の定義 健康状態 疾病,変調,傷害など 心身機能 身体系の生理的機能(心理的機能を含む) 身体構造 身体の解剖学的部分 ...
-
保護観察は,保護観察対象者の改善更生を図ることを目的として,「指導監督」と「補導援護」を行うことで実施されます。 指導監督の 方法 ・面接その他の適当な方法により保護観察対象者と接触を保ち,その行状を把握すること。 ・保護観察対象者が一...