2018年8月21日火曜日

障害者基本法の徹底理解

今回は障害者基本法を学びます。

障害者基本法は,1970年・昭和45年に心身障害者対策基本法として成立したものを1993年・平成5年に改正したものです。

障害者基本法は,その名のとおり,障害者施策に関する理念法です。

そのため細かい施策は他法で定めているため,障害者基本法はわずか36条からなるものとなっています。


障害者基本法のポイント

・目的は「障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進すること」。

・所管は内閣府(厚生労働省ではない)。

ここで分かることは,自立と社会参加支援であることから,障害者施策は多岐にわたり,厚生労働省の所管ではなく,各省庁を通したものとして想定されているということです。

実際に近年成立の障害者優先調達推進法は,自治体に対する努力義務を課していることから,地方自治に踏み込むため,総務省の協力なしには進まないことになります。

バリアフリー新法は国土交通省,といったように関係各省庁との連携によって,自立と社会参加が実現します。

ほかにも選挙への配慮,防災・防犯,消費者としての保護,国際協調など,社会保障の一環として,給付,あるいは福祉サービスの提供によってニーズ充足する厚生労働省の範疇をはるかに超えます。

そのため内閣府に「障害者政策委員会」が置かれて,障害者基本計画の実施状況を監視させています。

さて,それでは今日の問題です。


第22回・問題135 障害者基本法に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 国及び地方公共団体の責務規定として,障害者の福祉を増進し,及び障害を予防することが定められている。

2 都道府県及び市町村は,それぞれ都道府県障害者計画又は市町村障害者計画を策定するよう努めることとされている。

3 国及び地方公共団体は,「障害者の日」の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならない。

4 自立への努力として,障害者は,その有する能力を活用することにより,進んで社会経済活動に参加するよう努めなければならない,と規定されている。

5 国及び地方公共団体は,障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによって,その相互理解を促進しなければならない。


1993年に作られた障害者基本法は,2004年と2011年に大きな改正がなされています。


それでは解説です。


1 国及び地方公共団体の責務規定として,障害者の福祉を増進し,及び障害を予防することが定められている。

「障害者の福祉を増進し,及び障害を予防すること」は,2004年改正以前のものです。現在は,
障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に実施する責務を有する。

と変更されています。よって間違いです。

以前のものは覚える必要はありません。今のものを覚えておけば,間違いだと分かるからです。

2 都道府県及び市町村は,それぞれ都道府県障害者計画又は市町村障害者計画を策定するよう努めることとされている。

障害者計画は,都道府県・市町村ともに策定義務があります。よって間違いです。


3 国及び地方公共団体は,「障害者の日」の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならない。

障害者の日ではなく,障害者週間です。よって間違いです。


4 自立への努力として,障害者は,その有する能力を活用することにより,進んで社会経済活動に参加するよう努めなければならない,と規定されている。

現在はこの規定はありません。よって間違いです。


5 国及び地方公共団体は,障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによって,その相互理解を促進しなければならない。

これが正解です。このような規定はいかにも理念法である障害者基本法らしいです。

教育は文部科学省の管轄になります。

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