障害者福祉は発展過程で見てきたように,障害別に制度がつくられて来ました。
その大きな要因は,最初にできた法制度が身体障害者の職業リハビリテーションを目的とした身体障害者氏福祉法だからです。
3障害がようやく一元化したのが,障害者自立支援法です。
障害者分野以外の人には,一元化されても分かりにくいかもしれませんが,一元化されたことで制度がとてもシンプルになっています。
その分,覚えるポイントも極めて少なくなっています。
障害者総合支援法は,障害者自立支援法を改正して,2012年に成立し,2018年に初めて改正されています。
それでは早速今日の問題です。
第26回・問題57 「障害者総合支援法」に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 就労移行支援は,通常の事業所に雇用されることが困難な障害者に対して,雇用契約の締結等による就労の機会を提供するとともに,必要な訓練等の便宜を供与することである。
2 障害福祉サービスの利用者負担額と補装具の利用者負担額を合算して一定の額を超える場合,特定障害者特別給付費が支給される。
3 市町村は,地域生活支援事業としてサービス管理責任者研修を実施し,事業所や施設のサービスの質の確保を図らなければならない。
4 市町村は,介護給付費の支給申請があったときは,障害者又は障害児の心身の状況,その置かれている環境等について調査を実施し,要介護認定を行わなければならない。
5 障害者又は障害児の保護者の居住地が明らかでないとき,介護給付費の支給決定は,現在地の市町村が行う。
今まで学んできたことで分かるものと分からないものがあるかもしれません。
すぐさま消去できるのは,選択肢3でしょう。
それでは解説です。
1 就労移行支援は,通常の事業所に雇用されることが困難な障害者に対して,雇用契約の締結等による就労の機会を提供するとともに,必要な訓練等の便宜を供与することである。
障害者総合支援法の特徴は,就労支援施策が強化されていることです。
就労移行支援
就労継続支援(A型・B型)
就労定着支援(2018年に追加)
このうち
雇用契約 → 就労継続支援A型
この図式は頭に叩き込みましょう。
よって間違いです。
2 障害福祉サービスの利用者負担額と補装具の利用者負担額を合算して一定の額を超える場合,特定障害者特別給付費が支給される。
特定障害者特別給付費は,低所得者が施設入所した時にいわゆるホテルコストの負担を軽減するために給付されるものです。
よって間違いです。
この時1回しか出題されたことがありません。
3 市町村は,地域生活支援事業としてサービス管理責任者研修を実施し,事業所や施設のサービスの質の確保を図らなければならない。
研修事業は,サービス管理責任者(サビ管)に限らず,都道府県の役割です。よって間違いです。
4 市町村は,介護給付費の支給申請があったときは,障害者又は障害児の心身の状況,その置かれている環境等について調査を実施し,要介護認定を行わなければならない。
これはうっかりすると間違ってしまいそうですね。
要介護認定ではなく,障害支援区分認定です。
よって間違いです。
5 障害者又は障害児の保護者の居住地が明らかでないとき,介護給付費の支給決定は,現在地の市町村が行う。
これが最も難しいものだったと思います。
結果的にこれが正解です。
消去法でもこれが残ると思いますが,ヒントはあります。
なぜなら,障害者総合支援法の実施主体は市町村なので,障害者又は障害児の保護者の居住地が明らかでないときの介護給付費の支給決定は,都道府県ではなさそうだ,と想像できるからです。
<今日の一言>
得点力を上げるためのコツは,もちろんしっかり覚えることが大切です。
しかし,それと同時に高めなければならないのは,推測力です。
多くの問題を解くことで,似たような事象から,推測していきます。
これを意識することで,あと数点の壁は必ず越えることができます。
逆に言うと,これができないとあと数点の壁に泣きます。