明らかに問題の作り方が違うことが分かるでしょう。
今回はさらに古い問題を紹介したいと思います。
第15回・問題21 イギリスにおける貧困と公的扶助に関する次の記述を古いものから年代順に並べた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A ラウントリー(Rowntree,B.)は,ヨーク市の貧困調査を通じて労働者家族がその一生の中で経過する貧困の循環(ライフサイクル)を指摘した。
B 新救貧法において,労働能力のある貧民の救済は労役場への収容を原則とし,院外救済を禁止した。
C マルサス(Malthus,T.)は,『人口論』(初版)で,人口は幾何級数的に増加するが,食物は算術級数的にしか増加しないとし,人口増加の「自然法則」を根拠に,救貧法に異議を唱えた。
D ギルバート法では,労役場の非人間的な状況を改善するため,労役場を労働能力のない貧民の救済の場とし,労働能力のある貧民は救貧法外の雇用若しくは院外救済で行うとした。
1 「B→C→A→D」
2 「C→B→A→D」
3 「C→B→D→A」
4 「C→D→A→B」
5 「D→C→B→A」
旧カリキュラム時代には,このような歴史の問題のようなものが出題されていました。
このような問題が出題されたことがあるので,年号を覚えるための語呂合わせがあるのだと思います。
この問題を正しく並べることは,とても難しいです。
しかし,答えは分かります。
なぜなら,最も新しい時代の出来事は,ラウントリーによる貧困調査なので,選択肢3と5が残ります。
そして,次に新しい出来事は,新救貧法です。
その時点で,選択肢3が消去できて,選択肢5が残ります。
この問題の答えは,選択肢5です。
このような組み合わせ問題は,第20回国試を最後になくなりました。
カリキュラムは,第22回から今のものになりましたが,第21回国試は,既に新しい国試を見据えて作られています。
新しいカリキュラムはこのように出題します
ということをその前に示唆して,新しい国試に切り替わったと言えます。
さて,話を戻します。
旧カリキュラムの時の出題は,答えがはっきり分からなくても解ける問題があったということを示したいのです。
それは,あまり良い試験ではありません。
第15回国試は,国試の正答と合格基準点を公表した初めての国試です。
第15回国試では,合格基準点が91点,合格率は31.4%。
ただし,不適切問題が4問あったため,全員に4点加点されています。
現在の国試問題も正解がすぐ分かる問題であれば他の選択肢がよく分からなくても正解することはできます。
しかし,順番の並び替えは,ポイントさえ押さえておけば,今日の問題のように正解できます。
内容については問われていないからです。
第30回国試でも実は似たような問題が出題されています。
第30回・問題131 高齢者に関わる保健医療福祉施策に関する次の記述のうち,施策の開始時期が最も早いものを1つ選びなさい。
1 老人福祉法による70歳以上の者に対する老人医療費支給制度
2 老人保健制度
3 老人福祉法による65歳以上の者に対する健康診査
4 介護保険制度
5 高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)
正解は選択肢3です。
最も早いものはどれか,という出題は,今まで見られなかったタイプの問題スタイルです。
試験委員も苦労してさまざまな新しいスタイルの問題を出題してきます。
国家試験問題をつくるということはとても大変なことなのだと思います。
第15回と第30回国試問題をみると,年号を覚えなければならないと思うかもしれません。
もちろん年号を覚えていれば,安心でしょう。不安材料はなるべく消去しておきたいです。
しかし,本当に時間をかけて勉強しておきたいのは,法制度です。
優先度合いを間違うと,取り返しのつかないことになってしまいます。
年号をきっちり覚えることに時間はかけていてはもったいないです。
少なくても第15回のような問題は出題されないと断言できます。
2つの問題はタイプが似たように見えるかもしれませんが,内容はまったく違います。
第30回の出題スタイルは,これからも出題されるかもしれませんが,このような問題を正解するためには,年号を覚えるのではなく,その施策の内容を覚えることです。
第30回の国試のポイントは,老人保健は当初老人福祉法に含まれていたということです。
頭を柔らかくして問題を見てみると,老人医療費無料化は,老人福祉法を改正することで実現したことを考えると,答えにつながるヒントはあったかもしれません。
<今日のまとめ>
歴史は多くの人が苦手としています。
そういった問題で得点できれば,ほかの人と差をつけられるのは間違いありません。
しかし,ほかの人が正解できる問題を確実に正解していくことが,実は本当は一番大切なことなのです。
いつの時代も国試は難しいです。なぜなら試験委員は手を変え品を変え出題してくるからです。
それでも,出題基準の範囲をしっかり確実に覚えていけば,合格基準点を超えられます。
そこが最も重要なことです。