2018年8月22日水曜日

障害者基本法の徹底理解~その2

試験センターが発表する出題基準が示している法制度は「児童と家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」は11で多いですが,「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」も同じように11の法律が示されています。

出題基準の範囲をしっかり押さえていくことが合格に欠かせない勉強法となります。

出題基準で示されている法制度

・障害者総合支援法
・身体障害者福祉法
・知的障害者福祉法
・精神保健福祉法
・児童福祉法(障害児支援関係)
・発達障害者支援法
・障害者基本法
・障害者虐待防止法
・医療観察法
・バリアフリー法
・障害者雇用促進法


歴史や人名を覚えるのが苦手

という受験生は多いですが,歴史や人名は出題されても1科目1問程度です。

そこに時間をかけすぎて,本来しっかり覚えなければならず,そして分量が多い法制度にかける時間が足りなくなる,というのは絶対に避けなければなりません。


障害者に対する支援と障害者自立支援法は実に11もの法制度が示されています。

その中でも最もボリュームのあるものは,障害者総合支援法です。障害福祉サービスを規定しているので覚える分量も出題される分量も多くあります。


前回から取り上げている障害者基本法は,障害者施策の方向性を定めるものです。

低所得者,児童,地域,などの分野論の法律も理念を定めていますが,それぞれの施策の方向性を示す基本法があるのは,障害者だけです。

障害者施策はそれだけ多岐にわたるものだと言えるでしょう。

地域も地域共生社会を標榜するなら,本当は内閣府が所管するような基本法があってしかるべきところです。

地域共生社会を実現するためには,厚生労働省の範疇では収まらないように思ったりもしています。

内閣府が所管する法律には,子ども・子育て支援法もあります。

子ども・子育て支援も厚生労働行政のみではうまく進まないからでしょう。

さて,障害者基本法は,出題基準でも最後のほうに示されているので地味な印象がありますが,障害者施策を下で支える重要な位置づけとなっています。


国試では,障害者基本法単体の出題は多くはありませんが,この科目で得点力を上げるためには,法律の性格を知っておくことが大切です。

そうすると知らない内容が出題されても慌てることなく,落ち着いて問題に取り組むことができます。

それでは今日の問題です。


第28回・問題62 現行の障害者基本法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会的障壁の除去について規定されている。

2 中央心身障害者対策協議会を置くことが規定されている。

3 市町村の行う地域生活支援事業について規定されている。

4 心身障害者本人に対する自立への努力について規定されている。

5 市町村障害者計画の策定は,市町村の判断に委ねると規定されている。

障害者基本法の性格を押さえている良い問題だと思います。

さて,解説です。


1 社会的障壁の除去について規定されている。

障害者基本法は,1993年に成立し,2004年と2011年に改正されています。

2004年改正では,障害者差別の禁止が盛り込まれたことが特徴です。

2011年改正では,障害者権利条約の批准に向けて合理的配慮が盛り込まれたことが特徴です。
社会的障壁の除去は,2011年改正によって加わったものです。よって正解です。
社会的障壁(いわゆるバリア)の除去のために合理的配慮が必要なのです。


2 中央心身障害者対策協議会を置くことが規定されている。

心身障害者対策という名称で心身障害者対策基本法の時代のものでありそうな感じがすると思います。その通りです。

現在は,障害者政策委員会と名称が変わっています。

この委員会は,障害者施策の推進を監視するために内閣府に置かれています。


3 市町村の行う地域生活支援事業について規定されている。

実際の事業は,理念法である障害者基本法には示されていません。

よって間違いです。

障害者総合支援法に示されています。


4 心身障害者本人に対する自立への努力について規定されている。

これは前回の問題と同じです。

今は削除されている事項です。

よって間違いです。


5 市町村障害者計画の策定は,市町村の判断に委ねると規定されている。

障害者計画は,策定義務があります。よって間違いです。


<今日の一言>

今日の問題は,実に端的にまとめた問題だと思います。

まず余計な言い回しは一切ありません。言い回しで煙に巻くような試験ではなくなっていることがよく分かるでしょう。そして障害者基本法の性格がしっかり分かるものとなっています。


知っている人は解ける

知らない人は解けない

勉強した人も解けないような問題もありますが,それらは勉強していない人も解けません。


別な言い方をすると,言い回しで煙に巻くような問題は,文章に破たんをきたすことがあるので,勘の良い人は,勉強が足りなくても解けてしまいます。

今は,国語的に解ける問題はほとんどなくなっていると言っても良いと思います。

合格に必要なことは,出題基準に沿ってしっかり学んでいくことです。

試験委員は,第30回と第31回ではほとんど入れ替わっていないので,今の路線が大きく変わることはないと考えて良いです。

最新の記事

子ども・子育て支援法

  子ども・子育て支援法は,これまでにも出題されてきましたが,正式に出題基準に含まれたのは,第37回国家試験です。 子ども・子育て支援制度は,市町村が実施主体になっています。 支給申請は,市町村に対して行います。 児童福祉法には,入所系があるので都道府県の役割がありますが,子ども...

過去一週間でよく読まれている記事