2018年8月26日日曜日

国試問題を分析してみた

現行カリキュラムは,第22回から始まっています。

障害者に対する支援と障害者自立支援制度は,第22~24回は専門科目の中で出題されて,第25回から共通科目に引っ越した科目です。

社会福祉士の国家試験は,一部精神保健福祉士と共通です。

精神保健福祉士にもこの科目を出題するための引っ越しなのです。

その第25回国試は,実は悪夢のような魔の国試になりました。

合格基準点は,過去最低の72点。合格率は18.8%です。

つまり,72点以上得点できた人は,18.8%しかいなかったということです。

第30回国試の合格基準点は,99点,合格率は30.2%でした。

試験センターは,受験者の得点データは一切発表していません。

しかし,データがなくても,この2回はまったく別な問題なのだろう,ということが予想できるでしょう。

第30回国試は,合格基準点が90点程度,合格率を30%程度に近づけるべくチャレンジしたと思われます。

そこに,受験料値上げがあり,いわゆる記念受験組が受験しなかったという別の要素が加わったことが思惑よりも大きく上方に振れてしまったと考えています。

第25回は,かなり試験センターは反省したのではないかと思います。

そのため,第26回は,試験委員が大きく入れ替わっています。

第31回の試験委員は,第30回とほとんど変わっていないので,試験センター内ではあまり問題視されていないように思うのです。

そこが第30回国試の基本ラインとそれほど変更しないだろうという根拠です。


さて,それでは,悪夢の第25回問題を見てみましょう。

第25回・問題59 障害者就労を支援する連携機関,専門職及び事業に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 地域の関係機関との連携による障害者就労支援チームは,障害者職業センターが中心となって設置する。
2 公共職業安定所(ハローワーク)は,職場適応援助者(ジョブコーチ)の養成,研修を行っている。
3 障害者就労支援基盤整備事業は,福祉施設や学校等の関係者に対する,一般雇用についての理解の促進,就労支援に関する理解,ノウハウの向上を図り,障害者の福祉から一般雇用への移行を推進する基盤を整備することを目的とする。
4 障害者職業カウンセラーは,障害者就業・生活支援センターに配置され,就業に関する相談支援等を行う。
5 公共職業安定所(ハローワーク)は,精神障害者及び事業主に対して,主治医等の医療関係者との連携のもと,新規雇入れ,職場復帰,雇用継続等のための支援ニーズに対して,専門的・総合的な援助を行う精神障害者総合雇用支援事業を実施している。


この問題の文字数は,365字です。選択肢3と選択肢5が特に長いです。

答えは,選択肢3です。

試験委員は,障害者就労支援基盤整備事業がとても重要だと考えて,この選択肢を正解にしたと思います。

この問題の難易度はとても難しいですが,その理由はあります。

選択肢5の精神障害者総合雇用支援事業も同じように重要だと考えて,勉強した人でも知らない事業を2つ出題してしまったことにあります。

第25回以前の国試の特徴は,正解選択肢が他の選択肢よりも長くなる傾向にありました。

つまり,みんなに知ってもらいたいものは,力が入って長くなってしまったのではないでしょうか。

それだけ試験委員は純粋でまじめだということです。

内容が分からなくても,制度の内容を丁寧に紹介したものは,正解になりがちだったということです。

近年の傾向に従って,この問題を書き換えてみるとこんな感じになります。

1 障害者就労支援チームは,障害者職業センターが中心となって設置する。
2 公共職業安定所(ハローワーク)は,職場適応援助者(ジョブコーチ)の養成,研修を行っている。
3 障害者就労支援基盤整備事業は,障害者の福祉から一般雇用への移行を推進する基盤を整備することを目的とする。
4 障害者職業カウンセラーは,障害者就業・生活支援センターに配置される。
5 公共職業安定所(ハローワーク)は,精神障害者総合雇用支援事業を実施している。

これでも207字です。しかし,それぞれの選択肢には特別な色合いがなくなって,今風になったのではないでしょうか。

第30回問題と比べてみましょう。

第30回・問題58 「障害者総合支援法」で位置づけられている施設として,正しいものを1つ選びなさい。
1 地域活動支援センター
2 身体障害者福祉センター
3 児童発達支援センター
4 地域障害者職業センター
5 市町村保健センター

必要最低限の言葉で,構成されていることが分かるでしょう。

文字数がどうのこうのというレベルではなくなっています。

選択肢1が正解です。


<今日のまとめ>

国家試験がどうなろうと,合格基準点が上がろうとも下がろうとも,受験生がやらなければならないのは,たった一つです。

題基準として示されているものを一つひとつ確実に押さえていくこと

今は,おかしな言い回しはほとんどないので,基礎力をいかにつけるか,ということが合格に必要なのです。

合格基準点が上がったり下がったりするのは,受験生にとって迷惑な話です。

それをもろともしないような点数がとれるように頑張りましょう。

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