今回から3回にわたって,障害児に対する支援をご紹介していきます。
障害児の支援は,児童福祉法に規定されています。
そのために,18歳以上の知的障害者のために1960年に精神薄弱者福祉法(現・知的障害者福祉法)が作られたのでしたね。
https://fukufuku21.blogspot.com/2018/07/blog-post_24.html
障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)にも,かつて児童を対象としたサービスがありました。
それは児童デイサービスです。
障害児支援が大きく変わった2012年の児童福祉法改正の際に,児童デイサービスは廃止されて,新たに児童福祉法で放課後等デイサービスに改変されています。
障害児支援も成人と同じように障害別に発展してきましたが,このこの改正では障害別を廃止して,一元化されました。
2018年にまた改正があり,医療を必要とする児童のケアに関して改正されています。
障害児支援を押さえていきましょう。
2012年の改正で,
障害児通所支援と障害児入所支援
の2つに再編されています。
障害児通所支援は,市町村が支給決定します。
障害児入所支援は,都道府県が支給決定します。
この違いは,児童の入所は親から切り離されることになるため,極めて高度な判断が求められるために,都道府県の役割なのです。
さて,まずは障害児通所支援からです。
障害児通所支援
・児童発達支援
・医療型児童発達支援
・居宅訪問型児童発達支援(2018年に加わったもの)
・放課後等デイサービス
・保育所等訪問支援
この5つです。
数があるものは数も一緒に覚えておくと,問題を解きやすくなります。
児童発達支援とは,通所で日常生活の基本動作の指導,知識技能の付与,集団生活への適応訓練などを行います。医療型はこれに治療が加わります。
医療型児童発達支援とは,肢体不自由児に対して,通所で児童発達支援と治療を行います。
居宅訪問型児童発達支援とは,通所できない児童の家に訪問して児童発達支援を行うものです。
放課後等デイサービスとは,放課後や休日に,生活能力向上のための訓練,社会交流の促進などを行います。
保育所等訪問支援とは,障害児が利用している保育所等を訪問して,障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的支援を実施します。
2018年改正では,訪問先に乳児院と児童養護施設が追加されています。
障害児通所支援は以上です。旧制度では「児童デイサービス」「知的障害児通園施設」「難聴幼児通園施設」「肢体不自由児通園施設」「重症心身障害児通園事業」だったものです。これから整理されて児童通所支援に再編されました。
障害児通所支援を利用する場合は,障害児相談支援(ケアマネジメント)を利用できます。
障害児入所支援を利用する場合は,障害児相談支援は利用しません。
先述のように児童の入所は高度な判断が求められるからです。
さて,次は障害児入所支援です。
障害児入所支援
福祉型障害児入所支援と医療型障害児入所支援があります。
入所して日常生活の基本動作の指導,知識技能の付与,集団生活への適応訓練などを行います。医療型はこれに治療が加わります。
<覚え方ポイント>
児童発達支援という名称は,障害児通所支援の名称です。
児童発達支援は通所サービスであるにもかかわらず,「入所」といった文言があった場合は,即刻消去できます。
児童発達支援=通所
これをしっかり頭に叩き込みまょう!!
児童発達支援という名称には通所も入所もイメージできる言葉が含まれていないので,こういったところが国試ではねらわれるポイントとなります。
それでは,ようやく今日の問題です。
第25回・問題61 児童福祉法における障害児支援サービスに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。(一部改変)
1 この法律で,障害児とは,身体に障害のある児童又は知的障害のある児童をいう。
2 放課後等デイサービスは,就学している障害児につき,放課後又は休業日に主に見守りの支援を行うものである。
3 障害児通所支援とは,放課後等デイサービス,児童発達支援,医療型児童発達支援のことをいう。
4 保育所等訪問支援は,障害児の指導に経験のある保育士等が保育所等を訪問して,障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援等を行うものである。
5 障害児相談支援とは,障害児入所施設への入所の相談に応じて障害児支援利用計画を作成することをいう。
苦手意識があると難しく感じると思いますが,整理して押さえておけば何とかなります。
それでは解説です。
1 この法律で,障害児とは,身体に障害のある児童又は知的障害のある児童をいう。
いきなり定義で,びっくりした人もいるでしょう。
正解は何かはすぐ分からなくても,間違いだとは何となく分かるのではないでしょうか。発達障害がない,と思えるからです。
もちろん間違いです。
身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む),難病等がその範囲です。
2 放課後等デイサービスは,就学している障害児につき,放課後又は休業日に主に見守りの支援を行うものである。
放課後等デイサービスは,見守り支援ではありません。
就学している障害児につき,放課後又は休業日に主に生活能力向上のための訓練,社会交流の促進などを行います。よって間違いです。
3 障害児通所支援とは,放課後等デイサービス,児童発達支援,医療型児童発達支援のことをいう。
障害児通所支援は,5つの種類がありました。
この3つのほかに,保育所等訪問支援と居宅型児童発達支援が加わります。
よって間違いです。
4 保育所等訪問支援は,障害児の指導に経験のある保育士等が保育所等を訪問して,障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援等を行うものである。
これが正解です。
2018年改正で,保育所等訪問支援の訪問先には,乳児院と児童養護施設が加わっています。
5 障害児相談支援とは,障害児入所施設への入所の相談に応じて障害児支援利用計画を作成することをいう。
障害児相談支援は,障害児通所支援を行う場合に利用するケアマネジメントです。障害児入所支援では利用しません。よって間違いです。
障害児入所支援の場合に利用しないのは,障害児の入所は親から引き離すことを意味するので,極めて高度な判断が求められるからです。
<今日のまとめ>
以下,ポイントをもう一度まとめます。
障害児支援
障害児の支援に関するものは,児童福祉法に規定されます。
障害児通所支援と障害児入所支援に分けられます。
障害児通所支援
障害児通所支援には5つの種類があります。
①児童発達支援
②医療型児童発達支援
③居宅型児童発達支援
④放課後等デイサービス
⑤保育所等訪問支援
障害児入所支援
障害児入所支援には2つの種類があります。
①福祉型障害児入所施設
②医療型障害児入所施設
障害児相談支援
障害児相談支援は,障害児通所支援を利用する場合に利用します。
障害児入所支援を利用する場合は利用しません。
障害児入所支援では障害児相談支援を利用しない理由は,障害児の入所は高度な判断が求められるからです。
これだけはしっかり押さえておきましょう。
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