障害者雇用率とは,障害者雇用促進法に規定される制度で,国,地方公共団体,民間企業に一定の割合以上の障害者を雇用を義務づけたものです。
少なくとも5年ごとに定めることになっています。平成30年に改定されました。
・国・地方公共団体,特殊法人(44人以上) →2.5%。
・都道府県等の教育委員会(50人以上) → 2.4%。
・一般の民間企業(45.5人以上) → 2.2%。
これらは,従来よりも0.2%ずつ引き上げられています。
この法定雇用率は,以下のように計算されます。
労働者(労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、安定した職業に就くことができない状態にある者を含む)の総数に対する,対象障害者である労働者(労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、安定した職業に就くことができない状態にある対象障害者を含む)の総数の割合
から算定されています。この対象障害者に今年から精神障害者が含まれることになったので,法定雇用率が改定されたのです。
雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会を実現するための制度です。
おバカな政治家が
障害者に限りがあるから,障害者が取り合いになるだろう。だから官庁が障害者雇用率を達成できなくても仕方がない。
といったような発言をしています。
それは採用の努力した結果ならまだしも,そうではないので問題になっているのだと思います。
いずれにしても,昨今の話題で,すっかり国民に障害者雇用率について浸透したと思います。
社会福祉士の国家試験を受験する人も興味深く報道を見守っているので,制度に対してとても詳しくなっているはずです。
そのために,多くの人が正解できるはずですから,絶対に落とさないようにしたいです。
それでは今日の問題です。
第27回・問題146 障害者雇用率制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 「障害者雇用促進法」の改正により,精神障害者が法定雇用率の算定基礎に加えられることになった。
2 障害者雇用納付金を納付すれば,障害者雇用義務が免除される。
3 身体障害者手帳1級を所持する障害者を雇用した場合,1人をもって3人分として実雇用率を算定できる。
4 法定雇用率が未達成の場合には,自動的に企業名が公表される。
5 特例子会社とは,事業内容を勘案して障害者の雇用義務を課さないと認められた子会社のことである。
3年前の問題なので,まだ精神障害者の雇用義務の部分が施行されていない時点でのものとなっています。
施行される前のものが出題されることはほとんどありませんが,精神障害者が算定基礎に加わるという出題は,第27回と第30回の2回も出題されています。
勉強している人は,とても簡単な問題だったと思います。
さて,それでは解説です。
1 「障害者雇用促進法」の改正により,精神障害者が法定雇用率の算定基礎に加えられることになった。
これが正解です。
今までは,身体障害者+知的障害者の一定割合から算定していましたが,
平成30年4月からは,
身体障害者+知的障害者+精神障害者の一定割合から算定されています。
これによって平成30年4月から障害者雇用率が引き上げられています。
2 障害者雇用納付金を納付すれば,障害者雇用義務が免除される。
101人以上を雇用する一般企業は,雇用しなければならない障害者の不足分に対して,障害者雇用納付金を納付しなければなりません。
納付をもって雇用義務がなくなるわけではなく,雇用義務を果たしていないための違反金です。
よって間違いです。
納付金を財源として,雇用率を上回った企業には調整金(101人以上の企業),報奨金(100人以下の企業)が給付されます。
3 身体障害者手帳1級を所持する障害者を雇用した場合,1人をもって3人分として実雇用率を算定できる。
障害者雇用率は,ダブルカウント,ハーフカウントという算定方法があります。
重度障害者を雇用した場合,1人を2人として算定。よって間違いです。
短時間の雇用の場合は,1人を0.5人として算定。
重度障害者の雇用促進,数多く障害者を雇用するための制度です。
4 法定雇用率が未達成の場合には,自動的に企業名が公表される。
自動的ではなく,改善が見られない場合です。
よって間違いです。
5 特例子会社とは,事業内容を勘案して障害者の雇用義務を課さないと認められた子会社のことである。
特例子会社は,要件を満たす子会社で雇用した障害者を親会社,あるいはグループ全体の雇用として算定できる制度です。
よって間違いです。職種によっては,数多く障害者を雇用できるものもあります。そこに着目した制度です。