2018年8月4日土曜日

障害者総合支援法を整理しよう~その2

障害者総合支援法は,障害種別に分かれていたサービスを一元化して提供していることに特徴があります。

その分,覚えるのはシンプルになったと言えるでしょう。

しかし,他領域の人にとってはなじみがない用語も多いと思います。

ここで注意というか,勉強のコツを一つお知らせします。

勉強中に「ハッと」思うようなこと,「覚えにくい」と最初に思ったところは,しるしをつけておきましょう。

自分が思うことは,多くの人も同じように思うはずです。

そこが国試で問われるポイントになります。

多くの場合は,それは正解選択肢ではなく,間違い選択肢として上手に使われることになります。

そこをうまくすり抜けて正解にたどり着けた人だけが得点できます。

それでは今日の問題です。

第23回・問題131 障害者総合支援法に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。(現在の制度に合わせて一部改変)

1 生活介護は,障害者等に対して居宅において入浴,排せつ又は食事の介護等を提供する。

2 地域活動支援センターは,障害者等をセンターに通わせ,創作的活動又は生産活動の機会の提供,社会との交流の促進等を担う施設である。

3 訓練等給付費及び特例訓練等給付費の支給は,自立訓練,就労移行支援,就労継続支援,共同生活援助,施設入所支援の給付である。

4 自立支援医療費の支給対象者と認定された障害者等は,自ら医療機関を選び,その医療機関を市町村等に届けなければならない。

5 都道府県は,指定特定相談支援事業者から計画相談支援給付費の請求があったとき,審査した上で指定相談支援に要した費用を支払う。


制度を覚えていなければ,ほとんど得点できないかもしれません。

それでは解説です。


1 生活介護は,障害者等に対して居宅において入浴,排せつ又は食事の介護等を提供する。

これは間違いです。これが「はっと」するものの筆頭のように思います。

生活介護という名称から,居宅での介護のように思われやすいと思います。

しかし,介護保険サービスの訪問介護に当たるものは,障害福祉サービスでは「居宅介護」と言います。

生活介護は,何と施設で行う介護です。

ここが介護保険と違う大きな特徴です。

それはなにかと言うと,夜間と日中活動に分かれていることです。

施設入所は,施設入所支援ですが,それは主に夜間に実施されるものであり,日中活動は別のサービスとして提供されます。

つまり,施設入所している場合は,日中はいろいろなサービスが選べることとなります。
その中の一つが「生活介護」です。

利用パターンとしては

施設入所支援 + 生活介護

施設入所支援 + 就労継続支援

といったことが考えられます。

このため,障害福祉サービスでは,施設入所していても,居宅生活を送っていても,ケアマネジメント機関である「指定特定相談支援事業者」がケアマネジメントを行います。

ここが,介護保険サービスでは,居宅では居宅ケアマネが担当し,施設では施設ケアマネが担当する,というように分けられているのと違う点です。

違うと言えば,重度訪問介護の訪問先には医療機関があります。これは2018年から加わったものですが,障害者の場合は,その利用者のことをよく知っているヘルパーの方がサービスを提供しやすい(逆に言うと重度障碍者の場合は知らないと介護が難しい)という現実があるためです。


2 地域活動支援センターは,障害者等をセンターに通わせ,創作的活動又は生産活動の機会の提供,社会との交流の促進等を担う施設である。

これが正解です。

地域活動支援センターの基本サービスは,創作的活動又は生産活動の機会の提供,社会との交流の促進等です。

Ⅰ型からⅢ型まであり,それぞれ基本サービスに加えて,Ⅰ型は相談支援等,Ⅱ型は機能訓練・入浴サービス,Ⅲ型は授産をそれぞれ行います。

地域活動支援センターは,介護給付,訓練等給付ではなく,地域生活支援事業の市町村の必須事業です。


3 訓練等給付費及び特例訓練等給付費の支給は,自立訓練,就労移行支援,就労継続支援,共同生活援助,施設入所支援の給付である。


今の国試問題は,文章が短くなっているので,このような列挙するような問題はあまり出題されないと思いますが,従来では,列挙型は3つくらいまでは正解,4つ以上は間違いという傾向がありました。ここではそうなっていませんが最後の部分が「及び〇〇」が怪しかったのです。

今はおそらくこの手の出題はほとんどしてこないと思われるので,難易度は一段高くなったと言えるでしょう。
昔話は,この辺くらいにしておくことにして,本題に戻ります。

自立訓練,就労移行支援,就労継続支援,共同生活援助は,訓練等給付

施設入所支援は,介護給付
です。よって間違いです。

この当時ならではの問題でしょう。


4 自立支援医療費の支給対象者と認定された障害者等は,自ら医療機関を選び,その医療機関を市町村等に届けなければならない。

自立支援医療は,今まで何度も紹介してきましたが,提供する医療機関はどのようになっているのかについては,この時一回だけの出題です。

答えは間違いです。自立支援医療受給者証には,有効期間と医療機関名が書かれているので,そこで医療を受けます。

日本の医療保険はフリーアクセス(自由に医療機関を選べる)が特徴ですが,医療保険ではないのでフリーアクセスではないのです。


5 都道府県は,指定特定相談支援事業者から計画相談支援給付費の請求があったとき,審査した上で指定相談支援に要した費用を支払う。

これは本当に間違いやすいので,今後もずっと出題されるのではないかと思います。


計画相談支援 → 指定特定相談支援事業者 → 市町村

地域相談支援 → 指定一般相談支援事業者 → 都道府県

よって間違いです。


<今日の一言>

障害福祉サービスになじみがない方は,表になったものなど整理されたもので覚えることをおすすめします。

国試では,深くは出題されないので,全体像を押さえおくことが何よりも大切です。

合格するには,毎日少しずつでも勉強することが大切です。

何となく勉強するのがいやだなあ,と思っているとあっと言う間に何日も過ぎ去ります。




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