2018年9月21日金曜日

生活保護法の徹底理解~被保護者の権利及び義務~その1

今回から,被保護者の権利及び義務に取り組みたいと思います。

現行カリキュラムで出題されたのは,第24回,第26回,第28回の3回です。

この順番でいくと,第30回で出題されても良かったはずですが,出題されませんでした。

そうなるとしばらく出題されない可能性もありますが,しっかり押さえておきたいです。

権利
「不利益変更の禁止」「公課禁止」「差押禁止」「譲渡禁止」

義務
「生活上の義務」「届出の義務」「指示等に従う義務」「費用返還義務」

このように書くと種類だけを一生懸命覚える人がいると思いますが,国試では
被保護者の権利は,「不利益変更の禁止」「公課禁止」「差押禁止」である。

といったように,種類を減らしたり,増やしたりするような出題はされません。

それぞれの内容が問われます。

それでは,法の確認です。


不利益変更の禁止
被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保護を,不利益に変更されることがない。

公課禁止
被保護者は,保護金品を標準として租税その他の公課を課せられることがない。

差押禁止
被保護者は,既に給与を受けた保護金品又はこれを受ける権利を差し押えられることがない。

譲渡禁止
保護又は就労自立給付金の支給を受ける権利は,譲り渡すことができない。

生活上の義務
被保護者は,常に,能力に応じて勤労に励み,自ら,健康の保持及び増進に努め,収入,支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り,その他生活の維持及び向上に努めなければならない。

届出の義務
被保護者は,収入,支出その他生計の状況について変動があったとき,又は居住地若しくは世帯の構成に異動があったときは,すみやかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

指示等に従う義務
被保護者は,保護の実施機関が,被保護者に対し,必要な指導又は指示をしたときは,これに従わなければならない。
2 保護施設を利用する被保護者は,その保護施設の管理規程に従わなければならない。
3 保護の実施機関は,被保護者が前二項の規定による義務に違反したときは,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。
4 保護の実施機関は,前項の規定により保護の変更,停止又は廃止の処分をする場合には,当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては,あらかじめ,当該処分をしようとする理由,弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。

費用返還義務
被保護者が,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたときは,保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して,すみやかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

内容自体は,一度頭に入れておけば,それほど複雑なものではないので,国試では対応できることでしょう。

さて,それでは今日の問題です。

第20回・問題25 被保護者の権利及び義務に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 収入,支出その他生計の状況について変動があったときは,すみやかに保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

2 どのような理由であっても,既に決定された保護は不利益に変更されることはない。

3 既に給与を受けた保護金品を差し押さえられることはあっても,保護金品を受ける権利を差し押さえられることはない。

4 給与を受けた保護金品のうち現金については,租税その他の公課を課せられる。

5 直系血族及び兄弟姉妹の絶対的扶養義務者に限り,保護を受ける権利を譲渡することができる。

この問題は,旧カリ時代のものです。

この科目は旧カリ時代からも出題の内容がほとんど変わりません。変化が少ない科目なのです。

さて,早速解説です。

1 収入,支出その他生計の状況について変動があったときは,すみやかに保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

これが正解です。「届出の義務」ですね。

2 どのような理由であっても,既に決定された保護は不利益に変更されることはない。

権利のうちの「不利益変更の禁止」です。「どのような理由があっても」ではなく,「正当な理由がなければ」です。よって間違いです。

正当な理由とは,被保護者の収入が増えた,世帯人員が減ったなどの理由です。


3 既に給与を受けた保護金品を差し押さえられることはあっても,保護金品を受ける権利を差し押さえられることはない。

権利のうちの「差押禁止」です。

差押はどのような場合であっても認められません。よって間違いです。


4 給与を受けた保護金品のうち現金については,租税その他の公課を課せられる。

権利のうちの「公課禁止」です。よって間違いです。


5 直系血族及び兄弟姉妹の絶対的扶養義務者に限り,保護を受ける権利を譲渡することができる。

権利のうちの「譲渡禁止」です。誰であろうと,譲渡は禁止されています。よって間違いです。


<今日の一言>

覚え方のミスマッチ

法制度は,基本を押さえれば,正解にたどりつくことができます。

得点力を上げるには,それしかありません。

しかし,そこには「覚え方のミスマッチ」という恐ろしい落とし穴があります。

このブログでは,過去問を使って解説を繰り返しています。

その理由は,国試で問われるポイントはいつも一緒である,ということからです。

先述のような

被保護者の権利は,「不利益変更の禁止」「公課禁止」「差押禁止」である。
といったように,種類を減らしたり,増やしたりするような出題はされません。

これが「覚え方のミスマッチ」です。

国試問題をしっかり押さえていれば,ミスマッチは起きません。

チームfukufuku21は,正しい覚え方を伝えていきますので,ぜひご参考にしていただけましたら幸いです。

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