2018年9月23日日曜日

生活保護法の徹底理解~被保護者の権利及び義務~その3

前々回と前回で被保護者の権利及び義務の出題は,すべて網羅しました。

ここで終わっても良いのですが,今回も続けたいと思います。

権利は,「不利益変更の禁止」「公課禁止」「差押禁止」「譲渡禁止」です。

義務は,「生活上の義務」「届出の義務」「指示等に従う義務」「費用返還義務」です。

この言葉を見て,だんだんどんなことを意味しているのか分かってきたのではないでしょうか。

法制度は・・・

知っている人は解ける。
知らない人は解けない。

はっきり差が出る領域です。

さて,それでは今日の問題です。

第26回・問題66 生活保護法で規定されている被保護者の権利及び義務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 被保護者は,給付される保護金品に対して租税その他の公課を課せられることがない。

2 被保護者が文書による指導・指示に従わない場合は,保護の実施機関は直ちに保護の停止・廃止の処分を行わなくてはならない。

3 収入,支出その他生計の状況について変動があったときは,速やかに被保護者の住所地を担当する民生委員に届け出なければならない。

4 被保護者は,絶対的扶養義務関係にある同居の親族に限り,保護を受ける権利を譲り渡すことができる。

5 被保護者が生活の維持向上に向けて努力を怠っていると認められる場合は,福祉事務所長はその費用の全部又は一部を,その者から徴収することができる。

国試は,

少しずつ重なっていて,少しずつ違う

チームfukufuku21がずっと主張してきたものです。

先生によっては,応用力が大切だ,とおっしゃる方もいます。

「少しずつ違う」の部分に着目しての指導でしょう。

しかし,多くの場合は,「少しずつ重なっている」部分に正解があります。

そのため,「少しずつ違う」の部分は,内容がよく分からなくても,基本をしっかり押さえれば,答えは分かることになります。

基礎力がついていることを試すのが国試です。それが6割程度の合格基準です。

応用力がなければ正解にたどり着けない問題は存在しない,と言い切れます。

あくまでも基礎力が必要なのです。正しい理解が必要なのです。

愚直ですが,出題基準に沿って作られた参考書をひたすら覚えていくことです。
それ以上の知識が必要ではありませんし,深い理解が必要なわけではありません。

ひたすら覚えていくだけです。基礎力があれば,6割ラインは必ず越えられます。

今日の問題もそんな問題です。

それでは解説です。


1 被保護者は,給付される保護金品に対して租税その他の公課を課せられることがない。

これが正解です。

公課禁止です。

勉強している人は,すぐ正解できるでしょう。


2 被保護者が文書による指導・指示に従わない場合は,保護の実施機関は直ちに保護の停止・廃止の処分を行わなくてはならない。

これは間違いです。

指示等に従う義務
被保護者は,保護の実施機関が,被保護者に対し,必要な指導又は指示をしたときは,これに従わなければならない。
2 保護施設を利用する被保護者は,その保護施設の管理規程に従わなければならない。
3 保護の実施機関は,被保護者が前二項の規定による義務に違反したときは,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。
4 保護の実施機関は,前項の規定により保護の変更,停止又は廃止の処分をする場合には,当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては,あらかじめ,当該処分をしようとする理由,弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。

長い規定になっているのは,極めて重要だからです。

流れは

被保護者が指導・指示に従わなかった

 ↓  ↓

処分の理由の通知

 ↓  ↓

弁明の機会

 ↓  ↓

弁明が認められなければ,保護の変更等を行う

といった流れになります。

ちゃんと弁明の機会が設けられているのです。

「直ちに」に保護の変更等が行われるようなものではないことが分かることでしょう。


3 収入,支出その他生計の状況について変動があったときは,速やかに被保護者の住所地を担当する民生委員に届け出なければならない。

これは間違いです。

届出の義務ですが,うっかりちゃんは,引っかかってしまうような作問です。

届出の義務
被保護者は,収入,支出その他生計の状況について変動があったとき,又は居住地若しくは世帯の構成に異動があったときは,すみやかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

届出するのは,民生委員ではなく,保護の実施機関又は福祉事務所長です。

近年の問題は,文字数が少なくなっているので,最後にどんでん返しがあるような作問はありませんが,この当時はこのようないやらしい問題があったのです。


4 被保護者は,絶対的扶養義務関係にある同居の親族に限り,保護を受ける権利を譲り渡すことができる。

これは間違いです。

譲渡の禁止です。

第20回の問題とそっくりです。

直系血族及び兄弟姉妹の絶対的扶養義務者に限り,保護を受ける権利を譲渡することができる。

しかし少し違います。しかし応用などではなく,保護を受ける権利は,誰にも譲り渡すことはできません。譲渡禁止が,被保護者の権利に含まれる理由は,禁止しないと,貧困ビジネスのようなものがはびこってしまうからだと考えています。

しかし譲渡禁止は,誰に対しても譲渡禁止は譲渡禁止なのです。貧困ビジネスの相手だけではなく,扶養義務者であっても譲渡禁止は譲渡禁止です。


5 被保護者が生活の維持向上に向けて努力を怠っていると認められる場合は,福祉事務所長はその費用の全部又は一部を,その者から徴収することができる。

これは間違いです。

被保護者から,費用を徴収することは絶対にありません。

生活保護の原理の中には「最低生活の原理」があります。

最低限度の生活保障ですから,費用を徴収することは,最低生活の原理に反してしまいます。

もし徴収することがあるとしたら,不正受給の場合でしょう。


<今日の一言>

「低所得者に対する支援と生活保護制度」は覚えるべき法制度は少ないので,科目としての難易度はそれほど高くはありません。

それでも,国試会場では答えを選ぶ時に迷うことがあるでしょう。

その時は,生活保護の原理・原則を思い出すのもよいかもしれません。

生活保護法は,日本国憲法第25条の生存権規定に基づくと明記されています。

そのため,生存権を脅かすような制度にはなっていないのです。

基礎力を養うことで,6割ラインは必ず越えられます。

これからは,どれだけ勉強しても,焦りが高まってくる時です。

模試を受けた時に,知らないものが出題されたとき,勉強不足を実感するかもしれません。

それが参考書に載っていないものだったら,自分が選んだ参考書が間違いだったと思ってしまうかもしれません。

しかし,参考書に載っていないのは,それはそれほど重要なものではないからです。

基礎力を養えば,必ず合格ラインは超えられます。

チームfukufuku21は,そのための考え方の基礎となるものもお伝えしていきたいと考えています。

決して焦らず,できることを精いっぱい頑張っていきましょう。





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