2018年9月13日木曜日

生活保護の原理・原則~その5

今日が生活保護の原理・原則の最終回です。

基本原理・基本原理は以下の通りです。

基本原理
①国家責任の原理
②無差別平等の原理
③最低生活の原理
④保護の補足性の原理

基本原則
①申請保護の原則
②基準及び程度の原則
③必要即応の原則
④世帯単位の原則


早速問題です。

第28回・問題64 生活保護法が規定する基本原理,原則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 すべて国民は,この法律及び地方公共団体の条例の定める要件を満たす限り,この法律による保護を受けることができる。

2 この法律による保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行われる。

3 この法律は,地方公共団体が生活に困窮するすべての住民に対し,必要な保護を行い,その自立を助長することを目的としている。

4 生活保護の基準は,最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,且つ,これをこえるものでなければならない。

5 この法律は,生活困窮に陥った原因によって,保護するかしないかを定めている。

前回までとほとんど変わらない出題スタイルが続きます。

落ち着いて読めば,正解できることでしょう。

しかし,国試会場では,平常心でいられるのは本当に難しいものです。

試験会場独特の雰囲気,静寂の中で発生する周りの受験者や試験官の音,など,緊張感を高めるための要素満載です。

それに勝つには,「これだけ勉強したのだから,私は大丈夫だ」と思える強い心です。
そう思えるようにベターを尽くしましょう!!

それでは解説です。


1 すべて国民は,この法律及び地方公共団体の条例の定める要件を満たす限り,この法律による保護を受けることができる。

無差別平等に関する問題です。

②無差別平等の原理
 すべて国民は,この法律の定める要件を満たす限り,この法律による保護を,無差別平等に受けることができる。

「この法律」は正しいですが,そのあとの「地方公共団体」が余計です。よって間違いです。


2 この法律による保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行われる。

これが正解です。

必要即応の原則に関する問題です。

3 この法律は,地方公共団体が生活に困窮するすべての住民に対し,必要な保護を行い,その自立を助長することを目的としている。

国家責任の原理に関する問題です。

①国家責任の原理
 この法律は,日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き,国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とする。

目的は,最低限度の生活保障自立の助長です。

よって間違いです。

4 生活保護の基準は,最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,且つ,これをこえるものでなければならない。

基準及び程度の原則に関する問題です。

②基準及び程度の原則
 保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
2 前項の基準は、要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて,且つ,これをこえないものでなければならない。

「こえるもの」ではなく,「こえないもの」でなければなりません。よって間違いです。


5 この法律は,生活困窮に陥った原因によって,保護するかしないかを定めている。

無差別平等の原理に関する問題です。

②無差別平等の原理
 すべて国民は,この法律の定める要件を満たす限り,この法律による保護を,無差別平等に受けることができる。

現・生活保護法は,欠格条項のない本来の無差別平等です。

この場合の無差別平等とは,困窮に陥った理由にかかわらず,困窮の事実に基づいて保護を実施するという意味です。

よって間違いです。

原則は例外のあるルールですが,原理は例外のないルールです。

無差別平等の原理は,例外のない無差別平等なのです。


もう一問です。

第30回・問題65 現行の生活保護法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 保護は,個人を単位として行われるが,特別の場合には世帯を単位として行うこともできる。

2 補足性の原理により,素行不良な者は保護の受給資格を欠くとされている。

3 保護の基準は,国会の審議を経て,法律で定めることとなっている。 

4 「要保護者」とは,現に保護を受けている者と定義されている。

5 最低限度の生活を保障するとともに,自立を助長することを目的としている。


第30回国試問題です。現時点での最新の問題ですが,第20回に出題された問題と比べてもまったく出題スタイルが変わっていないことが分かります。

若干違うとすれば,今の国試スタイルである,各選択肢の長さはどれもほぼ同じといったところでしょうか。

選択肢1がほかの選択肢に比べると若干長くなっていますが,これ以上短くすることができないぎりぎりラインだったのでしょう。

それでは解説です。


1 保護は,個人を単位として行われるが,特別の場合には世帯を単位として行うこともできる。

世帯単位の原則に関する問題です。

④世帯単位の原則
 保護は,世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し,これによりがたいときは,個人を単位として定めることができる。

原則は世帯単位です。個人は例外です。

よって間違いです。


2 補足性の原理により,素行不良な者は保護の受給資格を欠くとされている。

補足性の原理及び無差別平等の原理に関する問題です。

これは間違いです。

④保護の補足性の原理
 保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は,急迫した事由がある場合に,必要な保護を行うことを妨げるものではない。

また,現行の生活保護法は,欠格条項のない無差別平等によって保護を行います。

欠格条項が設けられていたのは,旧・生活保護法です。


3 保護の基準は,国会の審議を経て,法律で定めることとなっている。 

基準及び程度の原則に関する問題です。

②基準及び程度の原則
 保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
2 前項の基準は、要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて,且つ,これをこえないものでなければならない。

保護基準は,厚生労働大臣が定めます。法で定めるものではありません。


4 「要保護者」とは,現に保護を受けている者と定義されている。

これは今まで出題されたことがないものです。

要保護者とは・・・
「要保護者」とは,現に保護を受けているといないとにかかわらず,保護を必要とする状態にある者をいう。

よって間違いです。


5 最低限度の生活を保障するとともに,自立を助長することを目的としている。

法の目的に関する問題です。

①国家責任の原理
 この法律は,日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き,国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とする。

法の目的は,最低限度の生活保障と自立の助長です。

よって正解です。


<今日の一言>

「生活保護の原理・原則」と聞くととても難しそうに感じるでしょう。

勉強していない人は,ほとんど得点できないと思います。

しかし,しっかり勉強すれば得点できます。

こういう問題を確実に正解できることが合格できる30%の中に入るために極めて重要です。

原理は,例外のないルール

原則は,例外のあるルール

これを頭の片隅に入れておくと,試験委員は苦労して問題を作っていることが実感できることでしょう。

「試験委員の皆さん,ご苦労さん」と思えるでしょう。

心に余裕をもつことは,最後の最後に大きな力を生み出します。

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