国試に合格するために必要なことは
基本事項をしっかり覚えること
ひたすらコツコツしっかり身につけていくことです。
国試の特徴は・・・
少しずつ重なっていて,少しずつ違う
8~9割は過去に出題されたものの範囲から出題されます。
過去に出題されたものとは,旧カリ時代の国試を含めたものであり,直近の3年間という意味ではありません。
1~2割は,今まで出題されたことのないものを混ぜて出題されています。
それが,
少しずつ重なっていて,少しずつ違う
という意味です。
このタイプの問題には,2つのタイプがあります。
①誰もが解けなくて良いタイプ
②しっかり基礎が身についていれば解けるタイプ
①は,対策を取りようがないタイプです。
全体の正解率や合格基準点をそろえるために出題されるのではないかと思います。
つまり,正解は教科書や参考書に載っていないものを配置するものです。
合格基準点が99点という過去最高点となった第30回にはほとんど見られませんでした。
合格基準点が上がった要素はいくつかありますが,その一つがこれだと思います。
②は,新しいものが含まれていても,正解選択肢は,今までに出題実績のある内容のものが設定されます。
基本事項をしっかり押さえれば必ず得点できます。
国試合格のためには,基本事項をしっかり押さえることが何よりも大切です。
先生によっては
「基本的な内容だけだと応用が利かない。深い理解がなければ,得点できない」
と指導される方もいらっしゃると聞きます。
しかし,近年の国試の傾向を考えると,深い理解がなければ解けない問題はほとんどありません。
正解選択肢は重要なので,正解選択肢として出題されます。
多くの試験委員が大切だと考えるポイントは,大きく変わりません。
そのため,正解選択肢は,過去にも出題されたことのある内容になる傾向があるのです。
すべての選択肢の正誤を分かるためには,深い理解が必要かもしれませんが,それは過去問題集を作成する先生に任せておけばよいです。
国試に合格するためには,正解選択肢が分かればよいのです。
さて,今日の問題です。この問題は②のタイプです。
第29回・問題66 現行の生活保護基準に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 生活扶助基準第一類は,所在地域によらず設定されている。
2 生活扶助基準第一類は,男女の性別ごとに設定されている。
3 生活扶助基準第一類は,年齢によらず設定されている。
4 生活扶助基準第二類は,世帯人員別に設定されている。
5 生活扶助基準第二類は,生活保護の受給期間に応じて設定されている。
第29回の問題なので,無駄な言い回しはなくなっています。
文字数は,141字で,前回よりも32字減っています。
無駄な言い回しがないことは,日本語的に破たんすることがないので,知識がない人は解きにくいものとなります。
今回の問題は,生活扶助の基準生活費の第一類と第二類に限定した問題です。
今まで,基準生活費について,最も多く出題されてきたのは,
第1類は,個人別
第2類は,世帯人員別
というものでした。
2つある場合は,両方覚えるとあいまいになりがちなので,片方だけをしっかり覚えましょう,と呼びかけました。
そうすると,覚えていないものはそれとは違うもの,と認識できるので絶対にあいまいになりません。
この問題の難易度はそんなに易しいものではありません。
なぜなら,選択肢5が参考書などには出ていないものだからです。
なぜ出ていないのでしょう?
それでは,解説です。
1 生活扶助基準第一類は,所在地域によらず設定されている。
保護費には,給地区分というものがあり,地域別によって3給地に分かれていて6区分となっています。
生活扶助,住宅扶助,葬祭扶助の3つの扶助に給地区分があります。よって間違いです。
2 生活扶助基準第一類は,男女の性別ごとに設定されている。
実は,以前は男女の性別で違っていました。
なぜ違っていたかと言えば,男女では必要な栄養量が差異があるからでした。
現在では男女の体格差が少なくなっていることから,男女差は廃止されています。よって間違いです。
3 生活扶助基準第一類は,年齢によらず設定されている。
第一類は,個人別の経費です。男女差はなくなっても,年代によって必要な栄養量等には違いがあります。よって間違いです。
4 生活扶助基準第二類は,世帯人員別に設定されている。
これが正解です。
第二類は,世帯人員別,つまり世帯の人数別によって設定されています。
第一類と第二類のどちらを覚えるかは,個人の好みですが,あいまいにならないようにしっかり覚えることが大切です。
5 生活扶助基準第二類は,生活保護の受給期間に応じて設定されている。
受給期間に応じて設定されていません。よって間違いです。
勉強不足の人は,これを正解だと思う人もいるでしょう。
なぜなら,受給抑制のための政策によって設けられたのではないか,と思えるからです。
しかし,基本原理には「最低生活の原理」があります。
もし,支給費を引き下げるのなら,収入が増えたときです。
受給期間が長くなることによる逓減性が設けられると最低生活の原理に反してしまいます。
原理は,例外のないルールです。政策ににって変更できるものではありません。
受給期間による保護費が参考書等に出ていないのは,でたらめだからです。
しっかり勉強した人にとってはそんなに難しくないものであっても,このような選択肢を入れ込むことで,正解率は大きく下がります。