旧法は,欠格条項や保護請求権が認められていないといった欠陥があったためです。
現行法で,ようやく本来の無差別平等となり,そして保護請求権が認められています。
さて,今回から生活保護の実施について取り組んでいきたいと思います。
今までの知識でも十分対応可能だと思います。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題65 生活保護の実施に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 保護の実施機関は,厚生労働省の地方厚生局である。
2 保護の実施機関は,被保護者に対して生活の維持のための指導をしてはならない。
3 保護の実施機関は,被保護者であった者について,保護を受けていた当時の雇主から報告を求めることができない。
4 扶養義務者がいる要保護者は,生活保護を受給することができない。
5 生業扶助には,高等学校就学費が含まれる。
勉強が進んでいる人にとっては,答えはすぐ分かることでしょう。
それでは解説です。
1 保護の実施機関は,厚生労働省の地方厚生局である。
これは間違いです。現行法の保護の実施機関は,福祉事務所の設置者,つまり都道府県知事,市長,福祉事務所を設置する町村長です。
歴史をひもとけば,実施機関は以下のようになっています。
恤救規則 → 内務省
救護法 → 市町村長
旧・生活保護法 → 市町村長
現・生活保護法 → 都道府県知事,市長,福祉事務所を設置する町村長
恤救規則が成立した1874年・明治7年は,まだ市町村制がなかった時代です。
市町村制が敷かれたのは1889年・明治22年です。ただし北海道,沖縄県,島嶼に市町村制が導入されるのはもう少し先の話です。
2 保護の実施機関は,被保護者に対して生活の維持のための指導をしてはならない。
被保護者の権利及び義務には,「指示等に従う義務」があります。
被保護者に対し,必要な指導又は指示をしたときには,これに従わなければならない,と規定されています。
もちろん,指導も指示も行うことができます。
よって間違いです。
3 保護の実施機関は,被保護者であった者について,保護を受けていた当時の雇主から報告を求めることができない。
被保護者が保護を受けていた当時の雇主に報告を求めることができます。
よって間違いです。
保護を決定する際も雇主に報告を求めることができますが,受給期間中にも報告を求めることができます。
4 扶養義務者がいる要保護者は,生活保護を受給することができない。
保護の補足性の原理では,「扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」としていますが,扶養義務者がいることは,保護の受給要件ではありません。
よって間違いです。
5 生業扶助には,高等学校就学費が含まれる。
これが正解です。
何度も何度も繰り返し出題されている通り,高等学校就学費は,生業扶助から給付されています。
繰り返し出題されているのは,生活保護は,単に最低限度の生活保障だけではなく,自立助長も目的にしていることを広く知ってほしい,という試験委員の意図が見えてくるような気がします。
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