2018年9月18日火曜日

生活保護法の徹底理解~扶助の種類~その5

今回も扶助の種類に取り組みたいと思います。

それでは早速今日の問題です。

第25回・問題66 生活保護における各種の扶助に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 生活扶助には,基準生活費に当たる第1類費や第2類費のほか,各種の加算があり,うち,母子加算は,母子世帯のほか父子世帯も対象としている。

2 生活扶助は,個々人に必要な生活費としての側面もあるため,世帯員が複数の場合,個人に対して金銭が給付されるのが原則である。

3 教育扶助は,高校や大学での修学にも対応できるよう,義務教育終了後においても支給される。

4 医療扶助は,医療保険制度による指定医療機関に委託して行われ,現物給付を原則としている。

5 生業扶助は,現に就いている生業の維持を目的とするため,生業に就くために必要な技能の修得はその範囲に含まれない。

この問題は,合格基準点が過去最低の72点となった第25回のものです。

近年とは,問題の感じが違うと思いませんか。

問題文が説明的になっているのです。

今風に,問題をつくり直してみましょう。

第25回・問題66 生活保護における各種の扶助に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 生活扶助の母子加算は,父子世帯も対象としている。
2 生活扶助は,世帯員が複数の場合,個人に対して金銭が給付されるのが原則である。
3 教育扶助は,義務教育終了後においても支給される。
4 医療扶助は,医療保険制度による指定医療機関に委託して行われる。。
5 生業扶助は,生業に就くために必要な技能の修得はその範囲に含まれない。

文字数では110字ほど短縮されています。

文字数が短くなれば,文章の不自然さがなくなるので,日本語的に解けることはまずありません。

知識がある人は解ける。

知識がない人は解けない。



知識がなくても解けるような問題ではだめなのです。

また

知識があっても解けない問題ではだめなのです。

受験する人にとっては過酷ですが,正しい国試のすがたになってきたと言えるでしょう。

それでは解説です。

1 生活扶助には,基準生活費に当たる第1類費や第2類費のほか,各種の加算があり,うち,母子加算は,母子世帯のほか父子世帯も対象としている。

これが正解です。

母子加算は,当初は母子家庭を対象としていましたが,一時期廃止されて,それが復活した際,母子家庭も対象としました。

第1類費は,個人の消費のために支給されます。年齢別によって金額が異なります。

第2類費は,世帯の消費のために支給されます。世帯人数によって金額が異なります。


2 生活扶助は,個々人に必要な生活費としての側面もあるため,世帯員が複数の場合,個人に対して金銭が給付されるのが原則である。

生活保護の原理・原則の中に「世帯単位の原則」があります。

原則は世帯単位,例外事項は個人単位です。

よって間違いです。


3 教育扶助は,高校や大学での修学にも対応できるよう,義務教育終了後においても支給される。

教育扶助は,義務教育に支給されます。高校等は,生業扶助の高等学校等就学費が支給がされます。


4 医療扶助は,医療保険制度による指定医療機関に委託して行われ,現物給付を原則としている。

これを正解にした人が多かったと思いますが,正解ではありません。

医療扶助=現物給付

の部分は合っていますが,医療扶助を行う指定医療機関は,医療保険制度ではなく,生活保護法の指定医療機関,あるいは医療保護施設で実施します。

今では考えられない引っ掛けです。


5 生業扶助は,現に就いている生業の維持を目的とするため,生業に就くために必要な技能の修得はその範囲に含まれない。

生業扶助は,被保護者の就労支援なので,極めて重要です。

生業扶助は

生業に必要な資金,器具又は資料

生業に必要な技能の修得

就労のために必要なもの

とされています。

生業に就くために必要な技能の修得も含まれます。

よって間違いです。



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