資本主義の発展とともに,その仕組みによって,貧困が生まれていきます。
資本主義国は,経済政策の一環として,所得保障を行っていきました。
現在では,所得保障のみならず,福祉サービスも提供するようになり,資本主義国は,福祉国家となっていきました。
エスピン-アンデルセンは,福祉国家の成り立ちを分析して,福祉レジームとして分類しました。
それぞれの国々の事情によって発展してきたもので,どれが良いか悪いか,といったものではありません。
社会福祉士は,社会福祉士及び介護福祉士法によって,「相談援助を業とする者」と規定されています。
顕在化している問題だけではなく,その背後にあるもの,潜在ニーズ解説を図ろうとすると,マクロ的な視点も必要です。
リッチモンドに始まるミクロソーシャルワークは,欧米で発展していきました。
しかし,今はソーシャルワークもその国々に合ったものが求められています。
社会福祉全般を学ぶ国家資格は,社会福祉士しかありません。
そのために覚えることは広範囲にわたりますが,社会福祉士の資格を持ったソーシャルワーカーは,より国民のニーズを解決できる力を身につけることができます。
これから,国試までは短いようですが,とても長いです。
勉強して何になるのだろうか,という疑問も生まれていくことでしょう。
しかし,今勉強していることは,ソーシャルワーカーとしてのバックボーンとなるものです。
自問自答しながらもしっかり前を向いて,目標に突き進んでください。
チームfukufuku21は,社会福祉士を目指すすべての人を応援しています。
さて,被保護者の権利及び義務は,今回が最終回です。
生活保護,不正受給があると,社会の批判にさらされることが多くあります。人気芸能人の身内が生活保護受給者であったことがバッシングを受けたことは,記憶に新しいと思います。
不正受給や無駄なものは,徹底して排除しなければなりません。多くの被保護者はスティグマを感じながら,生活しています。不正受給者ではありません。
保護の現業員は,社会福祉主事でなければなりません。社会に出てから社会福祉主事任用資格を得ようとするとかなり大変です。大学に進学した人なら,実は社会福祉主事任用資格はとても簡単に取得することができます。
指定科目を3科目以上履修することで取得できるからです。
せっかく福祉事務所で社会福祉主事として働いているなら,社会福祉士を目指してほしいと思います。人事異動で保護事務を行っている人もいると思いますが,福祉を学んで保護事務に当たってくれたら,この国はもっともっと豊かな国になれるように思います。
前置きが長くなりましたが,今日の問題です。
第28回・問題68 生活保護法における被保護者の権利及び義務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 被保護者は,保護を受ける権利を相続させることができる。
2 被保護者が急迫の場合等で資力があるにもかかわらず保護を受けたときであっても,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内の金額を返還する義務はない。
3 国民健康保険料(税)の滞納を理由とする保護金品の差押えは許されている。
4 保護の実施機関は,保護施設に入所中の被保護者が,保護施設の管理規程に従わない場合には,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。
5 被保護世帯の高校生のアルバイト収入は,届出の義務はない。
第28回の問題なので,今の出題スタイルにかなり近くなってきていますが,表現にばらつきがあるところがまだ洗練されていないように感じます。
それはさておき,解説です。
1 被保護者は,保護を受ける権利を相続させることができる。
譲渡禁止です。
今回は,「〇〇に限り」といった付け加えがありません。
あってもなくても,譲渡はできないので間違いですが,余計な言い回しがないと,日本語としての引っかかりがないので,知識がないと解けない問題となります。
逆に知識のある人は,すぐ分かります。
2 被保護者が急迫の場合等で資力があるにもかかわらず保護を受けたときであっても,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内の金額を返還する義務はない。
費用返還義務です。
もちろん費用は変換しなければなりません。よって間違いです。
3 国民健康保険料(税)の滞納を理由とする保護金品の差押えは許されている。
差押禁止です。
差し押さえはいかなる場合であっても禁止されています。よって間違いです。
4 保護の実施機関は,保護施設に入所中の被保護者が,保護施設の管理規程に従わない場合には,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。
これが正解です。指示等に従う義務です。
今までの出題と違って「直ちに」となっていないところがとても憎らしいと思いませんか?
指示等に従う義務
被保護者は,保護の実施機関が,被保護者に対し,必要な指導又は指示をしたときは,これに従わなければならない。
2 保護施設を利用する被保護者は,その保護施設の管理規程に従わなければならない。
3 保護の実施機関は,被保護者が前二項の規定による義務に違反したときは,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。
4 保護の実施機関は,前項の規定により保護の変更,停止又は廃止の処分をする場合には,当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては,あらかじめ,当該処分をしようとする理由,弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。
第26回でも出題されていたものが,今回は正解になっています。
出題範囲が狭いので,同じものの表現を少し変えて,正解にしたり間違いにしたり,いろいろ行っていることがよく分かるでしょう。
過去問を中途半端に勉強した人は,
被保護者が文書による指導・指示に従わない場合は,保護の実施機関は直ちに保護の停止・廃止の処分を行わなくてはならない。
が間違いなので,今回の
保護の実施機関は,保護施設に入所中の被保護者が,保護施設の管理規程に従わない場合には,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。
も間違いだと早合点してしまいそうな出題です。
この問題で確実に正解できることが合格をつかみます。
決して深い理解も応用力も求められているわけではありません。
5 被保護世帯の高校生のアルバイト収入は,届出の義務はない。
これねも間違いです。
届出の義務です。
高校生のアルバイトも収入です。もちろん届け出ることが必要です。
<今日の一言>
被保護者の権利と義務を4回にわたって紹介してきました。
すべて同じような問題だったことが分かるでしょう。
社会福祉士の国家試験問題は,出題範囲が広いことが特徴です。
しかし,一つひとつの科目をよく見てみると,実はそれほどは広くはありません。
しかも深い知識は必要とされていません。
基本事項が押さえられれば,必ず正解できます。
国試までの期間は,十分とは言えませんが,合格するために必要な基本事項を覚えるための時間はあります。
今,本格スタートすればまだ間に合います。
受験するか,しないか迷っているのは,実にもったいないことです。