2018年9月14日金曜日

生活保護法の徹底理解~扶助の種類~その1

「低所得者に対する支援と生活保護制度」で,覚えるべき法制度の中心は,生活保護法です。前回まで,基本原理・原則を取り上げましたが,ほとんど同じ内容で出題されていることが分かることでしょう。

基本原理が4つ,基本原則が4つ,合わせて8つを入れ替わり立ち代わり出題するだけなので,似たようなものになるのは当然のことでしょう。

今回からは扶助の種類を学んでいきます。

扶助の種類も8つです。

8つの種類を覚えるのは面倒な感じがしますが,歴史的変遷をたどって覚えると比較的頭に入りやすいと思います。


救護法(1929) 
生活扶助,医療扶助,助産扶助,生業扶助,それに埋葬費


旧・生活保護法(1946) 
救護法の4種類に葬祭扶助が加わる。


現・生活保護法(1950) 
旧法の5種類に,住宅扶助と教育扶助が加わる。現在はさらに介護扶助が加わって8種類となる。

決め手は,出発点の救護法の4種類をしっかり覚えておくことでしょう。

それでは,前説なしに問題に入りたいと思います。

第19回・問題24 生活保護制度における扶助の種類と範囲に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 教育扶助は,義務教育に伴って必要な教科書その他の学用品及び通学用品について行うものであり,学校給食については該当しない。

2 医療扶助は,診察,薬剤,医学的処置,手術及び治療並びに施術,看護等について行うものであり,治療材料については該当しない。

3 要介護者に対する介護扶助は,居宅介護支援計画に基づく居宅介護,福祉用具,住宅改修,施設介護,移送について行うものであり,介護保険料については該当しない。

4 生業扶助は,生業に必要な資金や技能の修得,就労のために必要なものについて行うものであり,高等学校等就学費については該当しない。

5 葬祭扶助は,死体の運搬,火葬,納骨その他葬祭のために必要なものについて行うものであり,埋葬については該当しない。

これは,旧カリキュラム時代の問題です。しっかり理解しておけば,決して難しくはないですが,日本語的に解けないように表現や語尾をそろえているのが,現在の国家試験のスタイルに近いので,勉強不足の人はまず解けない良問だと思います。

このような問題で得点できるかできないかが,合格できる30%に入るか入らないかの大きな分かれ道となります。

それでは解説です。


1 教育扶助は,義務教育に伴って必要な教科書その他の学用品及び通学用品について行うものであり,学校給食については該当しない。

教育扶助は,現・生活保護法で規定されたものです。

教育扶助でいつも問われるのは,義務教育にかかる経費が対象であって,高校等は対象にならないことです。

高校は,後から出てくる生業扶助の高等学校等就学費が対応しています。

さて,問題に戻ると,教育扶助は学用品,通学用品,そして学校給食も該当します。

よって間違いです。


2 医療扶助は,診察,薬剤,医学的処置,手術及び治療並びに施術,看護等について行うものであり,治療材料については該当しない。

医療扶助は,救護法で規定されたものです。

医療扶助は,診療費,薬剤費,治療材料費,施術費,移送費等を給付するものです。

よって間違いです。


3 要介護者に対する介護扶助は,居宅介護支援計画に基づく居宅介護,福祉用具,住宅改修,施設介護,移送について行うものであり,介護保険料については該当しない。

介護扶助は,介護保険法に伴い規定されたもので,8種類の中では最も新しいものです。

結論をいうと,これが正解です。

介護扶助は,介護保険サービスを利用した時の自己負担分を給付するものです。

生活保護受給者は,第2号被保険者ではありませんので,介護保険料の納付はありません。

しかし,65歳になると第1号被保険者となるので,介護保険料の納付が必要となります。

介護保険料は,生活扶助の介護保険料加算が対応します。

介護保険サービスの本人負担分 → 介護扶助。

介護保険料 → 生活扶助の介護保険料加算。

しっかり整理して覚えましょう。


4 生業扶助は,生業に必要な資金や技能の修得,就労のために必要なものについて行うものであり,高等学校等就学費については該当しない。

生業扶助は,救護法ですでに規定されていたものです。

生活保護の目的の一つである「自立の助長」のためには,極めて重要なものです。

教育扶助は,義務教育でかかる学用品費等に対応するものなので,高校については対象外です。
しかし,現在は高校の進学率は100%に近くなっており,高校卒業でなければ職種や求人数は限定されてしまいます。

そこで,現在は高校進学は自立の助長という観点から,生業扶助の高等学校等就学費が対応しています。

よって間違いです。

高校就学にかかる費用は,生業扶助が支給されることをしっかり押さえましょう。

何度も何度も繰り返し出題されています。


5 葬祭扶助は,死体の運搬,火葬,納骨その他葬祭のために必要なものについて行うものであり,埋葬については該当しない。

葬祭扶助が規定されたのは,旧・生活保護法です。しかし,救護法では,埋葬費が支給されていました。そこから埋葬費も含まれるという想像ができるでしょう。

もちろん埋葬費も含まれます。

よって間違いです。

今日の問題で出題されたのは,8つのうち

教育扶助
医療扶助
介護扶助
生業扶助
葬祭扶助

の5つです。

特に覚えておきたいのは


義務教育 → 教育扶助

高校 → 生業扶助の高等学校等就学費

介護保険サービスの自己負担分 → 介護扶助

介護保険料 → 生活扶助の介護保険料加算

高等学校等就学費に「等」がついているのは,高校のほかに高等専門学校(高専)や専修学校(中卒で入学できるもの)などが含まれるからです。



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