2018年9月3日月曜日

日本の救貧制度のあゆみ~その2

わが国の救貧制度の発展過程を理解するのに必要な法制度は

恤救規則(1874)
救護法(1929)
旧・生活保護法(1946)
現・生活保護法(1950)

の4つです。

恤救規則の救済は,「人民相互の情誼(じょうぎ)」=相互扶助です。今流に言えば「互助」です。

そのうえで互助の対象にならない,「無告の窮民」(頼るべき人がいない人)を救済しました。

極貧の障害者,70歳以上の老衰者,病人,13歳以下の孤児が対象です。救済したのは国です。

救護法の救済対象は,高齢者が65歳に引き下げられています。

この法では,扶助の種類が決められました。

生活扶助,医療扶助,助産扶助,生業扶助,それに埋葬費です。

救護機関は,市町村,補助機関は方面委員です。

養老院,孤児院などが救護施設として規定されましたが,基本は居宅での救済です。

旧・生活保護法は,GHQの指令書「SCAPIN775」に基づいて「無差別平等」が規定されました。

しかし実際には,能力があるにもかかわらず勤労の意思のない者は保護しないという欠格条項が設けられました。

この時までは,保護は職権で行われるものであり,保護を受ける権利は認められていませんでした。

旧・生活保護法の保護機関は市町村,補助機関は民生委員と定められています。

残る最後は,現在の生活保護法です。

日本国憲法第25条の生存権規定に基づき成立したもので,この時初めて保護請求権と不服申立制度が規定されています。

また欠格条項をなくして,本来の「無差別平等」が実現しています。

また,保護機関は福祉事務所,補助機関は社会福祉主事,協力機関は民生委員です。

それでは今日の問題です。

第28回・問題63 現在の生活保護法成立前の公的扶助制度に関する記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 恤救規則(1874年(明治7年))は,高齢者については65歳以上の就労できない者を救済の対象とした。

2 救護法(1929年(昭和4年))は,救護を目的とする施設への収容を原則とした。

3 救護法(1929年(昭和4年))における扶助の種類は,生活扶助,生業扶助,助産の3種類であった。

4 旧生活保護法(1946年(昭和21年))は,勤労を怠る者は保護の対象としなかった。

5 旧生活保護法(1946年(昭和21年))は,不服申立ての制度を規定していた。

日本の救貧制度のあゆみがよく分かるよい問題だと思います。

それでは解説です。


1 恤救規則(1874年(明治7年))は,高齢者については65歳以上の就労できない者を救済の対象とした。

老衰した高齢者の対象年齢は

恤救規則 → 70歳以上
救護法 → 65歳以上

よって間違いです。

孤児はいずれも13歳以下です。


2 救護法(1929年(昭和4年))は,救護を目的とする施設への収容を原則とした。

救護法では,救護施設を規定しましたが,居宅救護が原則です。よって間違いです。

居宅保護を原則とするのは,今も昔も共通です。


3 救護法(1929年(昭和4年))における扶助の種類は,生活扶助,生業扶助,助産の3種類であった。

扶助の種類は

救護法 → 生活扶助,医療扶助,助産扶助,生業扶助,それに埋葬費。よって間違いです。

旧・生活保護法 → 生活扶助,医療扶助,助産扶助,生業扶助,葬祭扶助。

現・生活保護法 → 生活扶助,医療扶助,助産扶助,生業扶助,葬祭扶助。+ 教育扶助,住宅扶助。現在はそれにさらにブラスして介護扶助が加わります。


4 旧生活保護法(1946年(昭和21年))は,勤労を怠る者は保護の対象としなかった。

これが正解です。

旧・生活保護法は,無差別平等の原則を規定していましたが,同時に欠格条項も規定されていました。


5 旧生活保護法(1946年(昭和21年))は,不服申立ての制度を規定していた。

保護請求権と不服申立制度が規定されたのは,現・生活保護法です。よって間違いです。

旧法までは,保護を受ける権利は認められず,職権によって保護を行いました。


<今日の一言>

公的救済の国の費用負担割合

救護法 → 2分の1

旧・生活保護法 → 10分の8

現・生活保護法 → 4分の3

現・生活保護法の国の負担の4分の3は,生活困窮者自立支援法の必須事業の負担割合と一緒です。

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