2018年9月22日土曜日

生活保護法の徹底理解~被保護者の権利及び義務~その2

前回から,被保護者の権利及び義務に入りました。

まずは,復習からです。

権利は,「不利益変更の禁止」「公課禁止」「差押禁止」「譲渡禁止」です。

義務は,「生活上の義務」「届出の義務」「指示等に従う義務」「費用返還義務」です。

不利益変更の禁止
被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保護を,不利益に変更されることがない。

公課禁止
被保護者は,保護金品を標準として租税その他の公課を課せられることがない。

差押禁止
被保護者は,既に給与を受けた保護金品又はこれを受ける権利を差し押えられることがない。

譲渡禁止
保護又は就労自立給付金の支給を受ける権利は,譲り渡すことができない。

生活上の義務
被保護者は,常に,能力に応じて勤労に励み,自ら,健康の保持及び増進に努め,収入,支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り,その他生活の維持及び向上に努めなければならない。

届出の義務
被保護者は,収入,支出その他生計の状況について変動があったとき,又は居住地若しくは世帯の構成に異動があったときは,すみやかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

指示等に従う義務
被保護者は,保護の実施機関が,被保護者に対し,必要な指導又は指示をしたときは,これに従わなければならない。
2 保護施設を利用する被保護者は,その保護施設の管理規程に従わなければならない。
3 保護の実施機関は,被保護者が前二項の規定による義務に違反したときは,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。
4 保護の実施機関は,前項の規定により保護の変更,停止又は廃止の処分をする場合には,当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては,あらかじめ,当該処分をしようとする理由,弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。

費用返還義務
被保護者が,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたときは,保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して,すみやかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

決して,難しい内容ではないので,2~3回目に入れれば十分に頭に入ると思います。

それでは,今日の問題です。

第24回・問題60 被保護者の権利義務に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 急迫の場合等において資力があるにもかかわらず保護を受けたときは,受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

2 保護金品を標準として租税その他の公課を課せられないという権利があるが,過去の税滞納を理由とする保護金品の差し押さえは許されている。

3 勤労に励み支出の節約を図るなど生活の維持向上に努めている場合,保護の実施機関による指導又は指示に従う義務が免除される。

4 収入,支出その他生計の状況について変動があった場合には届出義務が課せられており,これを果たさなかった場合,直ちに保護は変更,停止又は廃止される。

5 正当な理由がなければ保護を不利益に変更されないという権利があるが,地方公共団体における予算の不足はこの正当な理由に当たる。

前回出題されたのは,

権利
不利益変更
差押禁止
公課禁止
譲渡禁止

義務
届出の義務

今回の問題では

権利
不利益変更の禁止
差押禁止
公課禁止

義務
生活上の義務
指示等に従う義務
費用返還義務

と出題されて,2回合わせて権利と義務がそろいました。

重なっているものもありますが,不利益変更の禁止に少しひねりが加わっているので,正解するのは決して簡単ではないです。

それでは,解説です。

1 急迫の場合等において資力があるにもかかわらず保護を受けたときは,受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

これが正解です。

費用返還義務です。


2 保護金品を標準として租税その他の公課を課せられないという権利があるが,過去の税滞納を理由とする保護金品の差し押さえは許されている。

これは間違いです。

公課禁止は,保護金品に対して,税金がかけられないという意味です。

差押禁止は,とのようなものに対しても差押禁止です。

公課禁止とは言っても,消費税等の間接税は免除されているわけではありません。所得税などがかけられることはないという意味です。


3 勤労に励み支出の節約を図るなど生活の維持向上に努めている場合,保護の実施機関による指導又は指示に従う義務が免除される。

これは間違いです。

生活等の義務です。

義務は,何があったからと言って,免除されるわけではありません。


4 収入,支出その他生計の状況について変動があった場合には届出義務が課せられており,これを果たさなかった場合,直ちに保護は変更,停止又は廃止される。

これは間違いです。

届出の義務です。

「直ちに」というところで間違いだと思えると思います。

うっかりミスもあります。直ちに変更,停止又は廃止されるものではなく,まずは指導などが行われます。


5 正当な理由がなければ保護を不利益に変更されないという権利があるが,地方公共団体における予算の不足はこの正当な理由に当たる。

これは間違いです。

不利益変更の禁止です。

不利益変更を禁止しているのは,保護の実施機関の裁量によって,変更されてしまうと生活が安定しなくなってしまうからです。

正当な理由は,保護の実施機関側の都合ではなく,被保護者側の状況の変化によるものです。例えば,世帯人員が減った,収入が増えた,といった極めて合理的な理由です。

予算不足は正当な理由には当たりません。なぜなら,保護は「国家責任」で行われるものだからです。

もし予算が不足した場合は,補正予算を組んで,地方公共団体の財政支援を行わなければなりません。


<今日の一言>

被保護者の増加に伴い,保護費が上昇している,と言われます。

しかし,実際に保護費は,約3兆8千億円くらいです。

そのうち,半分は医療扶助に使われています。

無駄な与薬,ジェネリック医薬品の使用などによって,抑制できるのではないでしょうか。

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