2018年9月8日土曜日

生活保護制度の特質~その3

今回は,生活保護制度の特質の最終回です。

生活保護制度の特質とは・・・

・事前の拠出を前提としない。
・個別のニーズに合わせて給付される。
・救貧的に機能する。
・資力調査(ミーンズテスト)を行う。

2回の国試問題のエッセンスはこのようになります。

さて,それでは今日の問題です。

第29回・問題67 日本の公的扶助と公的年金保険の特質に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 公的扶助は扶養義務者の扶養を優先するが,公的年金保険は扶養義務者の扶養を優先することなく給付される。

2 公的扶助は個人単位で給付されるが,公的年金保険は世帯単位で給付される。

3 公的扶助は画一的に給付されるが,公的年金保険は所得に応じて給付される。

4 公的扶助は原則として金銭で給付されるが,公的年金保険は原則として現物により給付される。

5 公的扶助は貧困予防のための給付であるが,公的年金保険は貧困救済のための給付である。


設問が毎回少しずつ違っていることに気が付きましたか?

第22回 社会保険と生活保護
第25回 社会保険と公的扶助
第29回 公的扶助と公的年金保険

設問はとてもうまいと思います。

結局は,同様のことを問うわけですが,設問を変えるとそれに振り回される人が出てくるからです。

公的扶助は英語のPublic Assistanceを訳したもので,日本では生活保護に当たります。

それでは解説です。


1 公的扶助は扶養義務者の扶養を優先するが,公的年金保険は扶養義務者の扶養を優先することなく給付される。

これが正解です。新しい内容が出てきました。

扶養義務者の扶養が優先されるということです。

ただし,優先されるのであって,扶養義務者の扶養を受けることが生活保護受給の要件ではないことに注意しましょう。

つまり,以下のような間違い選択肢のパターンです。

扶養義務者の扶養を受けることが優先されるので,扶養を受けないと生活保護は受給できない

といったことです。

現在の国試問題は極力短く作られるので,

生活保護は,扶養義務者の扶養が受けられない者は受給できない。

といったものになるかもしれません。

扶養義務者の扶養が優先されることは「補足性の原則」といいます。


2 公的扶助は個人単位で給付されるが,公的年金保険は世帯単位で給付される。

さて,またまた新しいものが出てきました。

公的扶助は,世帯単位で給付されます。よって間違いです。

世帯単位で給付することを「世帯単位の原則」といいます。


3 公的扶助は画一的に給付されるが,公的年金保険は所得に応じて給付される。

これは,今までに出題されたものと同じですね。

公的扶助は,個別のニーズに合わせて給付されます。

よって間違いです。


4 公的扶助は原則として金銭で給付されるが,公的年金保険は原則として現物により給付される。

これは,特質とは言えないので,エッセンスには入れませんでしたが,今までに出題されたものと同じですね。

公的年金も現金給付です。

よって間違いです。

5 公的扶助は貧困予防のための給付であるが,公的年金保険は貧困救済のための給付である。
これも今までと同じです。公的扶助は救貧的に機能します。よって間違いです。

今日の問題で出題されたものを補足してまとめます。


生活保護の特質とは・・・

・事前の拠出を前提としない。

・個別のニーズに合わせて給付される。

・救貧的に機能する。

・資力調査(ミーンズテスト)を行う。

・扶養義務者の扶養を優先する(補足性の原理)

・世帯を単位として給付する(世帯単位の原則)

このようにまとめることができますが,次回から紹介する生活保護の原理・原則を使えば,同様の問題は多様に変化させて出題することができます。

ということで,今日はこれで終わりです。

次回からは,生活保護の原理・原則に関する問題を徹底的に分析していきます。
出題ポイントは決まっていますので,しっかり押さえていきましょう。

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