2018年9月12日水曜日

生活保護の原理・原則~その4

今日も生活保護の原理・原則を続けます。

基本原理
①国家責任の原理
②無差別平等の原理
③最低生活の原理
④保護の補足性の原理

基本原則
①申請保護の原則
②基準及び程度の原則
③必要即応の原則
④世帯単位の原則


早速問題です。

第26回・問題64 生活保護法で規定されている基本原理,原則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 保護は,個人を単位としてその要否及び程度を定めるものとされている。ただし,これによりがたいときは,世帯を単位として定めることができる。

2 生活保護法により保障される最低限度の生活は,肉体的な生存を維持する程度とされている。

3 保護の申請は,要保護者,その扶養義務者のほか,要保護者の同居の親族がすることができる。

4 保護は,都道府県知事の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度のものとされている。

5 生活保護法は,最低限度の生活を保障するとともに,社会的包摂を助長することを目的とすると定めている。


同じような出題が続きます。

それでは解説です。


1 保護は,個人を単位としてその要否及び程度を定めるものとされている。ただし,これによりがたいときは,世帯を単位として定めることができる。

世帯単位の原則に関する出題です。

④世帯単位の原則
「保護は,世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し,これによりがたいときは,個人を単位として定めることができる」と規定されています。

よって間違いです。


2 生活保護法により保障される最低限度の生活は,肉体的な生存を維持する程度とされている。

最低生活の原理に関する出題です。

③最低生活の原理
「この法律により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と規定されています。

よって間違いです。


3 保護の申請は,要保護者,その扶養義務者のほか,要保護者の同居の親族がすることができる。

申請保護に関する出題です。これが正解です。

①申請保護の原則
 保護は,要保護者,その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し,要保護者が急迫した状況にあるときは,保護の申請がなくても,必要な保護を行うことができる。


4 保護は,都道府県知事の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度のものとされている。

基準及び程度の原則に関する出題です。

②基準及び程度の原則
「保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする」と規定されています。

よって間違いです。


5 生活保護法は,最低限度の生活を保障するとともに,社会的包摂を助長することを目的とすると定めている。

生活保護法の目的に関する問題です。

「この法律は,日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き,国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とする」と規定されています。

よって間違いです。

もう一問です。

第27回・問題64 生活保護法の目的,基本原理,原則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 生活保護が目的とする自立とは,保護の廃止を意味する経済的自立のことである。

2 窮迫の状況の場合でも,申請の手続きをとらなければ保護を行うことはできない。

3 保護基準は,社会保障審議会が定める。

4 必要即応の原則とは,要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において保護を行うことをいう。

5 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,生活保護に優先して行われる。

同じような問題ですが,少しずつ変えてくるのが国試の常とう手段です。

ここであわててしまうと,正解できる問題も正解できなくなってしまうので要注意です。

進学塾では,同じような問題を何度も何度も繰り返し解き,そして模擬試験も受けまくります。

そのようにして,確実な実力をつけていきます。


それでは,解説です。

1 生活保護が目的とする自立とは,保護の廃止を意味する経済的自立のことである。

これが今までと違うものです。

生活保護の目的は,「最低限度の生活保障」と「自立の助長」だと覚えていて,この問題を見た時,自立の内容が分からないと思ったら,試験委員に負けます。

どんなに勉強しても知らないものは出題されます。第30回はそのようなものが少なかったために,正解率が極端に上がってしまったのです。

第31回国試以降は,必ず同じような出題があるでしょう。

さて,問題に戻ります。

自立には,就労による経済的自立(就労自立)のみならず,健康で生活を管理できる日常生活自立,社会の一員として生活できる社会生活自立もあります。

よって間違いです。


2 窮迫の状況の場合でも,申請の手続きをとらなければ保護を行うことはできない。

申請保護の原則に関する問題です。

①申請保護の原則
「保護は,要保護者,その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し,要保護者が急迫した状況にあるときは,保護の申請がなくても,必要な保護を行うことができる」と規定されています。

よって間違いです。


3 保護基準は,社会保障審議会が定める。

基準及び程度の原則に関する問題です。

②基準及び程度の原則
「保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする」と規定されています。

保護基準を定めるのは,社会保障審議会ではなく,厚生労働大臣です。

よって間違いです。


4 必要即応の原則とは,要保護者の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において保護を行うことをいう。

必要即応の原則と基準及び程度の原則に関する問題です。

選択肢3の解説のように,不足分を補う程度の保護を行うことを規定しているのは,基準及び程度の原則です。

よって間違いです。

③必要即応の原則
 保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行うものとする。


5 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,生活保護に優先して行われる。

これが正解です。保護の補足性の原理に関する問題です。

④保護の補足性の原理
「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」と規定されています。


<今日の一言>

国試は,いつも少しずつスタイルを変えて出題される。

国試問題は,出題基準に沿って出題されます。

つまり,出題基準にあるものの中から,手を変え品を変え出題してくるのです。

勉強がある程度進んでいる人は,今日の問題の2問目の選択肢1の解説を読んでピンと来た人もいることでしょう。

「経済的自立」「日常生活自立」「社会生活自立」は,生活保護受給者に対して実施している自立支援プログラムの目的です。

自立の概念は,経済的自立にとどまらないのです。これも合わせて覚えておきましょう。

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