2018年9月19日水曜日

生活保護法の徹底理解~扶助の種類~その6

「低所得者に対する支援と生活保護制度」は,覚えるべき法制度は,基本的に生活保護法だけです。

この法律は大きな改正はないので,過去問を使って勉強することが有効的です。

今まで見てきたように,出題されるポイントは,ほとんど変化していません。


国家試験に出題される問題には意味がある!


社会福祉士の国試で問うこと,それぞれの問題を出題することは,社会福祉士に求められる,価値,知識,介入(技術)でなければなりません。


そのため,この科目は法制度がほとんど固定しているため,同じような問題になるのではないかと考えています。


制度は,変わったところが出題される

といった意味のアドバイスをする方がいます。

しかし,制度改正に関しては,その制度の根本にかかわる変更でなければ,すぐ出題されることはありません。

制度の根本とは,例えば,定義,保険者,支給要件,理念法といったものです。

それらにしても,すぐ出題されるものは極めて少ないものです。

4月改正のものがその年度に出題されるものは,1問あるかないか,というレベルです。

もちろん制度改正は知っておかなければなりません。

しかし,それは国試のため,というよりも社会福祉士として最新の法制度をアップデートしておくためのものと言えます。

制度改正があって,すぐ出題されたものとしては,

発達障害者福祉法における発達障害者の定義があります。

これは根本です。

制度改正があっても,施行前のものもめったに出題されることもありません。

近年では,障害者虐待防止法(定義),生活困窮者自立支援法(法律の名称),障害者雇用促進法(精神障害者が算定基礎に加わる)の3つのみです。

これからを知っている人なら

最新の法制度はほとんど出ないよ

と言うのではないでしょうか。


多くの科目は,7問しかないので,出題基準に沿ってまんべんなく出題しようとすると,最新の制度改正を組み込む余地が少ない,ということも関係しているように思います。


これからの時期は,あれも覚えなければならない,これも覚えなければならない,という焦りが高まってくる時です。

模擬試験を受けると,最新の制度改正が多く出題されています。

そのため余計な焦りが高まります。

「この制度は知らない。勉強不足だ」と思ってしまうでしょう。

ある程度,ボリュームがある参考書なら,施行前の法制度でもすでに予測して掲載されています。

模試に出題されていても,参考書に掲載されていないものは,それほど重要ではない,と言えます。

「こういった制度改正があるのか」といったくらいに,模試についている解説を押さえておく程度で良いと思います。それ以上深める必要はありません。

模試には,このような特徴があるので,本試験よりも点数が低くなります。

国試は,社会福祉士にとって必要だから出題されます。

もし,知らない法制度が出題されたとしたら,出題者の意図を考えてみましょう。

なぜその問題を出題しようと思ったのか,その選択肢の組み立てはどうしてこのようなものになっているのか。

それらを考えることで得点力は確実に上がります。

過去問に取り組むときも,これを意識することをおすすめします。

模試の中には,国試の組み立てと違う問題もあるので,出題意図を考える訓練をするなら,過去問でなければなりません。

それでは,今日の問題です。

第27回・問題65 生活保護の種類と内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 生活扶助は,衣食住その他日常生活の需要を満たすために必要なものを給付する。

2 居宅において生活扶助を行う場合の保護金品は,被保護者に対し個々に交付することを原則とする。

3 住宅扶助は,宿所提供施設を利用する現物給付によって行うことを原則とする。

4 出産扶助は,金銭給付によって行うことを原則とする。

5 医療扶助は,金銭給付によって行うことを原則とする。


第27回の国試問題です。

文字数がかなり短くなり,余計な言い回しはほとんど見られなくなってきています。

前回の問題と比べると一目瞭然です。

第25回・問題66 生活保護における各種の扶助に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 生活扶助には,基準生活費に当たる第1類費や第2類費のほか,各種の加算があり,うち,母子加算は,母子世帯のほか父子世帯も対象としている。
2 生活扶助は,個々人に必要な生活費としての側面もあるため,世帯員が複数の場合,個人に対して金銭が給付されるのが原則である。
3 教育扶助は,高校や大学での修学にも対応できるよう,義務教育終了後においても支給される。
4 医療扶助は,医療保険制度による指定医療機関に委託して行われ,現物給付を原則としている。
5 生業扶助は,現に就いている生業の維持を目的とするため,生業に就くために必要な技能の修得はその範囲に含まれない。

第25回は273字,第27回は173字です。

たった100字だと思うかもしれませんが,知識のある人にとっては大きく違います。

この問題では,答えが分かる人は瞬時に正解を選べることでしょう。

それでは解説です。


1 生活扶助は,衣食住その他日常生活の需要を満たすために必要なものを給付する。
これは間違いです。

国試会場では,これを正解にした人もいたのではないかと思います。

どこが間違っているかと言えば,

生活扶助は,「衣食」の需要に給付されるものです。

「住」の需要は,住宅扶助が給付されます。


2 居宅において生活扶助を行う場合の保護金品は,被保護者に対し個々に交付することを原則とする。

生活扶助は,世帯に対して給付されます。よって間違いです。これは落ち着いて読めば消去できるでしょう。


3 住宅扶助は,宿所提供施設を利用する現物給付によって行うことを原則とする。

ここから,現物給付,金銭給付の選択肢が続きます。

原則,現物給付なのは「医療扶助」「介護扶助」のみです。

それ以外は,すべて金銭給付です。

住宅扶助ももちろん金銭給付です。よって間違いです。


4 出産扶助は,金銭給付によって行うことを原則とする。

出産扶助は,原則金銭給付です。よって正解です。


5 医療扶助は,金銭給付によって行うことを原則とする。

医療扶助は,原則現物給付です。よって間違いです。


<今日の一言>

第27回の合格基準点は,88点でした。

88点でもそれまでよりは高いのですが,第30回国試に比べると,10点も低くなっています。

その違いは,いくつか述べることができますが,その一つには,第27回は,問題文が短くなったとは言え,選択肢1,2はまだ少し長めだったこともあると思います。

今は,各選択肢の長さには,大きなばらつきがありません。

今は,さらに短い問題があり,とうとう文章問題ではないものも登場しています。

それについては,今後解説する機会もあるでしょう。

それはさておき,国試問題はしっかり基礎を覚えたら,確実に得点できます。

なぜなら,試験委員が変わっても,国試に出題したいポイントはそれほど大きくは変わらないからです。

もし出題意図がピンボケな問題があった場合は,国試には使われずお蔵入りとなることでしょう。



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