2019年12月20日金曜日

母子保健法の諸規定~定義&事業

今回は,母子保健法を学びましょう。

母子保健法は,1965(昭和40)年に成立しています。

母子保健法の主な規定は以下の通りです。

定義

妊産婦
妊娠中又は出産後一年以内の女子
新生児
出生後二十八日を経過しない乳児
乳児
一歳に満たない者
幼児
満一歳から小学校就学の始期に達するまでの者
未熟児
身体の発育が未熟のまま出生した乳児であつて,正常児が出生時に有する諸機能を得るに至るまでのもの
保護者
親権を行う者,未成年後見人その他の者で,乳児又は幼児を現に監護する者
母子保健の向上に関する措置
(実施は市町村)
・新生児の訪問指導
・健康診査(1歳6か月健診&3歳児健診) 
・妊娠の届出
・母子健康手帳
・妊産婦の訪問指導等
・低体重児の届出
・未熟児の訪問指導
・養育医療 など
母子健康包括支援センター
設置は,市町村の努力義務

母子保健法が規定している事業の実施主体は,市町村です。

なお,母子健康包括支援センターは,以前は「母子保健センター」という名称だったものが2016年の法改正で変更されたものです。

母子健康包括支援センターは,母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進に関する包括的な支援を行うことを目的として,以下の業務を行います。


母子健康包括支援センターの業務
・母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進に関する支援に必要な実情の把握。
・母子保健に関する各種の相談に応じる。
・母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導。
・母性及び児童の保健医療又は福祉に関する機関との連絡調整その他母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進に関し,厚生労働省令で定める支援
・健康診査,助産その他の母子保健に関する事業


それでは,今日の問題です。

第22回・問題138 母子保健法の規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村は,妊娠の届出をした者に対して母子健康手帳を交付しなければならない。

2 市町村は,母子保健センターを設置しなければならない。

3 新生児の訪問指導を行う者は,保健師の資格を有していなければならない。

4 市町村は,満1歳を超え満1歳6か月に達しない幼児に健康診査を行わなければならない。

5 妊産婦とは,妊娠中又は出産後1か月以内の女子をいう。


正解は,選択肢1です。

1 市町村は,妊娠の届出をした者に対して母子健康手帳を交付しなければならない。


母子保健に関する事業は,市町村の役割です。

社会福祉士の国家試験で出題される手帳類を整理すると以下のようになります。



手帳の種類
交付
母子健康手帳
市町村
健康手帳
身体障害者手帳
都道府県
療育手帳
精神障害者保健福祉手帳

手帳の交付に関して,市町村と都道府県の違いは,都道府県は等級を定めるものであるのに対して,市町村が交付するものは,申請があった者に対して交付するものです。


それでは,ほかの選択肢の見てみましょう。


2 市町村は,母子保健センターを設置しなければならない。

母子保健センターは,現在「母子健康包括支援センター」と名称を変えていますが,設置は,市町村の努力義務です。


3 新生児の訪問指導を行う者は,保健師の資格を有していなければならない。

新生児の訪問指導は,医師,保健師,助産師又はその他の職員が行います。



4 市町村は,満1歳を超え満1歳6か月に達しない幼児に健康診査を行わなければならない。

幼児の健康診査は,市町村に実施義務があります。


健康診査の種類
対象
1歳6か月健診
満一歳六か月を超え満二歳に達しない幼児
3歳児健診
満三歳を超え満四歳に達しない幼児

母子保健法により,市町村が実施しなければならない健康診査は,この2つだけです。


妊産婦健診を含めて,このほかの健康診査を行っている市町村もありますが,それらは市町村の独自事業として実施しているもので,実施義務はありません。

法では,以下のように規定されています。

市町村は,必要に応じ,妊産婦又は乳児若しくは幼児に対して,健康診査を行い,又は健康診査を受けることを勧奨しなければならない。
 

5 妊産婦とは,妊娠中又は出産後1か月以内の女子をいう。

妊産婦は,妊娠中又は出産後1年以内の女子をいいます。


<今日の一言>


根拠法を押さえよう



母子保健法は,新生児の訪問指導を規定しています。

新生児の訪問指導(母子保健法)
育児上必要があると認めるとき,医師、保健師、助産師又はその他の職員が当該新生児の保護者を訪問し,必要な指導を行う。

これに関連した事業として,児童福祉法に「乳児家庭全戸訪問事業」が規定されています。

乳児家庭全戸訪問事業(児童福祉法)
原則として全ての乳児のいる家庭を訪問することにより,子育てに関する情報の提供並びに乳児及びその保護者の心身の状況及び養育環境の把握を行うほか,養育についての相談に応じ,助言その他の援助を行う事業。


新生児の訪問指導 → 母子保健法

乳児家庭全戸訪問事業 → 児童福祉法



この2つの事業は,関連しているので,児童福祉法では,「新生児の訪問指導」あるいは「未熟児の訪問指導」と合わせて,乳児家庭全戸訪問事業を実施することができると規定されています。

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