前回と違うのは,今回は事例問題であることです。
社会福祉士の専門科目(午後の問題)は,「事例があるから簡単」だと思っているとしたら大間違いです。
知識なしで解ける事例問題は,「相談援助の理論と方法」のほんの一部です。
それらは,誰もが解ける問題です。
社会福祉士は,得点の上位30%の人が合格できる試験です。
誰もが解ける問題が正解できるのは当然のことです。
ここで間違うと大変です。
事例には,制度を問うものもあります。
これは,一般的な問題と何ら変わることはありません。
事例のスタイルを取っているだけで,法制度の知識があって正解できるものです。
まずは,前回の振り返りです。
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/12/blog-post_24.html
それでは今日の問題です。
第29回・問題141 事例を読んで,児童扶養手当に関する担当者の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
T市に居住するBさんは,障害基礎年金を受給している。最近,夫と離婚して小学生(11歳)の子どもを引き取った。今後の生活のため,手当のことについて市役所の担当部署に相談に行った。
1 児童扶養手当の支給によって子どもに対する父親の扶養義務はなくなる。
2 障害基礎年金と児童扶養手当は併給できないため,Bさんはどちらかを選択する必要がある。
3 Bさんに障害があるため,児童扶養手当は子どもが20歳になるまで支給される。
4 母子生活支援施設に入所する場合であっても,支給要件を満たす限り,児童扶養手当は支給される。
5 児童扶養手当の支給は,子どもが13歳に達した日の翌月から減額される。
この事例のポイントは「Bさんは,障害基礎年金の受給者であること」です。
子どもは,障害があるかどうかはわかりません。
そこを整理しておかないとこんなに短い事例でも間違いますので,注意が必要です。
さて,この問題の正解は,選択肢4です。
4 母子生活支援施設に入所する場合であっても,支給要件を満たす限り,児童扶養手当は支給される。
児童扶養手当は,児童が施設入所すると,支給されません。
ただし,母子生活支援施設を利用する場合には,支給されます。
母子生活支援施設は,児童福祉施設に規定される児童福祉施設ですが,ほかの児童福祉施設と違うのは,母子で利用するところです。
そのために,児童が施設入所すると支給されない児童扶養手当であっても,例外的に母子生活支援施設に入所する場合には,支給されるのです。
それではほかの選択肢も確認しましょう。
1 児童扶養手当の支給によって子どもに対する父親の扶養義務はなくなる。
実は,この「父親の扶養義務」については,過去に以下のように出題されています。
第22回
児童扶養手当の支給は,婚姻を解消した父等が児童に対して履行すべき扶養義務の程度を軽減する。
これは間違いです。児童扶養手当の支給は,扶養義務の程度又は変更するものではない,と規定されています。
第20回
Q 児童扶養手当の支給は,婚姻を解消した父等が児童に対して履行すべき扶養義務の程度又は内容を変更するものではない。
これが正解です。
といういうことで,児童扶養手当が支給されようがされまいが,父親の扶養義務の程度は何ら変わるものではありません。
2 障害基礎年金と児童扶養手当は併給できないため,Bさんはどちらかを選択する必要がある。
以前は,公的年金を受給していると児童扶養手当は受給できませんでした。しかし,2014(平成26)年に改正があり,児童扶養手当の額よりも公的年金の受給額が低額だった場合は,その差額を受給できるようになりました。
3 Bさんに障害があるため,児童扶養手当は子どもが20歳になるまで支給される。
児童扶養手当が20歳になるまで支給されるのは,障害児の場合です。
Bさんの子どもに障害があるかどうかは事例からは読み取れませんが,この選択肢には「Bさんに障害があるため」と明記しているので,間違いです。
5 児童扶養手当の支給は,子どもが13歳に達した日の翌月から減額される。
児童扶養手当が減額されるのは,前年の所得が一定額以上だった場合です。
年齢によって,減額されるような規定はありません。
<今日の一言>
専門科目が合格の決め手!
専門科目は,事例があるために,簡単だと思う人がいますが,それは間違いだと述べました。
相談援助の理論と方法の事例は,比較的簡単であることは間違いありません。
しかし,それであっても確実に正解することは決して簡単なものではありません。
多くの受験者の方は,共通科目よりも専門科目に時間をかけるという人は少ないと思います。
それどころか,共通科目に時間をかけすぎて,専門科目にはほとんど手をつけることができずに,国家試験に臨む人もいます。
社会福祉士の国家試験は,決して難しくはありませんが,勉強が不十分な人が運よく合格できるような試験ではありません。
出題範囲をきっちり押さえて,国家試験に臨んだ人は合格する権利があります。
共通科目は難解な問題もあるので高い得点は難しいです。
専門科目は,きっちり押さえると点数が取れます。
共通科目で40点しか取れなくても,専門科目で50点取れれば合格できます。
そういった意味で,専門科目は重要です。