2019年12月31日火曜日

児童委員の職務を整理しよう

児童委員は,民生委員が兼務します。

民生委員は,民生委員法という特別法が定めています。
児童委員は,児童福祉法の中で定めています。

このような違いは,民生委員の成り立ちに関係します。

民生委員の源流は,岡山県の済世顧問制度,大阪府の方面委員制度です。
どちらもドイツのエルバーフェルト制度を参考にして創設されています。

その後,方面委員は全国に広がり,救護法では,補助機関となります。

そして,1936(昭和11)年に,「方面委員施行令」が公布されます。

戦後,1946(昭和21)年に,同令が廃止されて,「民生委員令」が公布され,旧・生活保護法では,民生委員は「補助機関」となります。

1947(昭和22)年にできた児童福祉法は,すでにあった民生委員を児童委員に充てることとなったのです。

その後,民生委員令に変わって,1948(昭和23)年に「民生委員法」が制定されて現在に至ります。

1950(昭和25)年の現・生活保護法では,民生委員は「協力機関」であると定められました。

現在の補助機関は,民生委員に変わって,社会福祉主事です。

国家試験では,「補助機関」「協力機関」とは出題されず,法律通りに

事務の執行に補助するものとする。  (社会福祉主事)
事務の執行に協力するものとする。  (民生委員)

と出題されます。たった2文字違いなので,気をつけないとミスをしてしまうので,細心の注意が必要です。

さて,児童福祉法は,児童委員について以下のように定めています。

児童委員(児童福祉法)
民生委員との兼務
民生委員法による民生委員は,児童委員に充てられたものとする。
児童委員の職務
児童及び妊産婦の生活及び取り巻く環境の状況の適切な把握。
児童及び妊産婦の保護,保健その他福祉に関し,サービスを適切に利用するために必要な情報の提供その他の援助及び指導。
児童及び妊産婦に係る社会福祉を目的とする事業を経営する者又は児童の健やかな育成に関する活動を行う者と密接に連携し,その事業又は活動の支援。
児童福祉司又は福祉事務所の社会福祉主事の行う職務への協力。
その他。
主任児童委員
厚生労働大臣は,都道府県知事によって推薦された児童委員のうちから,主任児童委員を指名する。
主任児童委員の職務
児童の福祉に関する機関と児童委員との連絡調整を行うとともに,児童委員の活動に対する援助及び協力を行う。
この規定は,主任児童委員が児童委員の職務を行うことを妨げるものではない。

その他の機関等との関係
指揮監督
児童委員は,その職務に関し,都道府県知事の指揮監督を受ける。
指示
市町村長は,児童委員に必要な状況の通報及び資料の提供を求め,並びに必要な指示をすることができる。
通知および意見
児童委員は,その担当区域内における児童又は妊産婦に関し,必要な事項につき,その担当区域を管轄する児童相談所長又は市町村長にその状況を通知し,併せて意見を述べなければならない。
児童委員が,児童相談所長に前項の通知をするときは,緊急の必要があると認める場合を除き,市町村長を経由するものとする。
調査
児童相談所長は,その管轄区域内の児童委員に必要な調査を委嘱することができる。
研修の実施
都道府県知事は,児童委員の研修を実施しなければならない。

民生委員・児童委員は,都道府県知事の指揮監督下にあります。

指揮監督は,その所属する機関の長の指揮監督を受けるのでわかりやすいですが,民生委員・児童委員はそういった機関に配置されるものではないので,注意が必要です。

民生委員・児童委員が配置されるのは,機関ではなく,市町村の区域です。

それでは,今日の問題です。


第30回・問題141 児童委員の職務として,正しいものを1つ選びなさい。

1 児童及び妊産婦について,生活や取り巻く環境の状況を把握する。

2 養育医療の給付を行う。

3 乳児院に入所させる。

4 一時保護を決定する。

5 里親への委託を行う。


児童委員が持っているものは,児童相談所長又は市町村長に対して意見を述べる「意見具申権」のみです。

何かを決定する「決定権」はもちません。


さて,この問題の正解は,選択肢1です。

1 児童及び妊産婦について,生活や取り巻く環境の状況を把握する。

そんなに難しくはないかもしれませんが,ほかの選択肢も確認してみましょう。


2 養育医療の給付を行う。

養育医療は,母子保健法が定める未熟児に対する医療です。
給付を行うのは,市町村です。


3 乳児院に入所させる。

児童の入所は,専門的な判断が求められるものです。
専門機関である児童相談所が判断し,都道府県知事の措置によって入所します。


4 一時保護を決定する。

一時保護を決定するのは,児童相談所長です。

一時保護の期間は,原則2か月を超えない範囲で実施されます。
それを超えて,引き続き一時保護を行おうとするときは,家庭裁判所の承認を得なければなりません。


5 里親への委託を行う。

里親への委託は,都道府県知事が行います。


<今日の一言>

今日の問題は,それほど難しくはないものかもしれません。

もし,まったく見当がつかない問題が出題された場合は,グループ分けしてみるのも一つの方法です。

今日の問題なら,


1 児童及び妊産婦について,生活や取り巻く環境の状況を把握する。

2 養育医療の給付を行う。
3 乳児院に入所させる。
4 一時保護を決定する。
5 里親への委託を行う。


選択肢1と選択肢2~5はまったく内容が異なることがわかるでしょう。
今日の問題は,答えを1つ選ぶものですが,2つ選ぶ問題の場合は,グループ分けはより効果的になります。2:3に分けられて,そのうつの2が正解になります。

まったく内容がわからないときのために,ぜひ覚えておくとよいでしょう。

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