普通養子は,養親とともに実親とも親子関係がありますが,特別養子は,実親との親子関係がなくなるところに違いがあります。
この理由は,特別養子は,養子が安定した家庭生活を送るための制度だからです。
そのため,戸籍には「養子」の記載がされません。
民法には,以下のように規定されています。
家庭裁判所の役割
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家庭裁判所は,養親となる者の請求により,実方の血族との親族関係が終了する縁組(「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
養子の利益のため特に必要があると認めるときは,家庭裁判所は,養子,実父母又は検察官の請求により,特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
※特別養子縁組を成立させるには,養親となる者が養子となる者を6か月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。
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養親の要件
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養親となる者は,配偶者のある者でなければならない。
夫婦の一方は,他の一方が養親とならないときは,養親となることができない。ただし、夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く)の養親となる場合は、この限りでない。
25歳に達しない者は,養親となることができない。ただし,養親となる夫婦の一方が25歳に達していない場合は,20歳以上であればよい。
※特別養子縁組の成立には,養子となる者の父母の同意がなければならない。
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養子の年齢
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原則,6歳未満。
※民法の改正によって,原則15歳未満に拡大されることが決まっています。
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実親との関係
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養子と実父母及びその血族との親族関係は,特別養子縁組によって終了する。
養子と実父母及びその血族との親族関係は,特別養子縁組の離縁の日から,特別養子縁組によって終了した親族関係と同一の親族関係を生ずる。
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これを押さえて,まずは一問目です。
第31回・問題140 民法の規定に基づいて,養親となる者の請求により特別養子縁組を成立させることができる組織・機関の名称として,正しいものを1つ選びなさい。
1 法務省
2 児童相談所
3 福祉事務所
4 家庭裁判所
5 地方検察庁
正解は,家庭裁判所です。
もう一問です。
第31回・問題78 特別養子縁組制度に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 特別養子は,15歳未満でなければならない。
2 縁組後も実親との親子関係は継続する。
3 特別養子は,実親の法定相続人である。
4 配偶者のない者でも養親となることができる。
5 養親には離縁請求権はない。
この問題は,近い将来には,成立しないものとなります。
正解は,選択肢5です。
5 養親には離縁請求権はない。
離縁請求権のあるものは
・養子
・実父母
・検察官
に限定されます。
養親には離縁請求権はありません。なぜなら,離縁させる条件は,以下のとおりだからです。
一 養親による虐待,悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。
二 実父母が相当の監護をすることができること。
それでは,ほかの選択肢も確認しましょう。
1 特別養子は,15歳未満でなければならない。
この選択肢は近い将来,正解になります。
現時点では,6歳未満ですが,15歳未満に引き上げられるからです。
2 縁組後も実親との親子関係は継続する。
特別養子縁組によって,実親との親子関係は終了します。
3 特別養子は,実親の法定相続人である。
普通養子の場合は,実親との親子関係があるので,実親の法定相続人になることができます。
しかし,特別養子の場合は,実親との親子関係がなくなるので,法定相続人になることができません。
4 配偶者のない者でも養親となることができる。
配偶者のない者は養親となることができません。
<今日の一言>
特別養子縁組が国家試験に出題されたのは,第31回国家試験が初めてでした。
それまで出題されたことがありませんでしたが,出題されたとたん2問も出題されています。
とても珍しいことです。
国が特別養子の普及に力を入れているからでしょう。
今日の問題にはありませんでしたが,特別養子縁組を成立させるときには,6か月以上の監護した状況を考慮する必要があります。
国家試験では,こういった具体的な数字を出題するときには,要注意です。
なぜなら,数字を入れ替えることで簡単に間違い選択肢にすることができるからです。
自分で問題を作ってみるとよくわかりますが,間違い選択肢をそれっぽく作成するのはとても難しいことです。