今回が,「児童と家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」の最終回です。
この科目を苦手としている人は多いようですが,高齢者のように制度が大きく変わっている分野ではないので,実はそれほど覚えるのは困難な科目ではない言えます。
2か月にわたって情報を提供してきましたが,いかがでしたか?
さて,最終回は,「児童相談所の近年の状況」です。
早速,今日の問題です。
第31回・問題142 「平成28年度福祉行政報告例」(厚生労働省)における児童相談所の相談に関する統計の説明のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 児童相談所が対応した児童虐待相談件数は,10万件を超えている。
2 児童相談所が対応した虐待相談を虐待種別でみると,身体的虐待が最も多い。
3 児童相談所が対応した相談のうち,児童福祉法に基づく入所措置をとったものは3割程度である。
4 児童相談所が受け付けた相談の相談経路は,学校が最も多い。
5 児童相談所が受け付けた障害相談の内訳でみると,肢体不自由相談が最も多い。
現時点(2020年1月)では直近の国家試験である第31回の問題です。
2年連続で出題されることはないと思われますが,念のためにしっかり押さえておきましょう。
正解は,選択肢1です。
1 児童相談所が対応した児童虐待相談件数は,10万件を超えている。
児童虐待相談の件数については,一般的にも報道されています。
虐待相談件数の推移は以下の通りです。
年度
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件数
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平成27年度
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約10万件
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平成28年度
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約12万件
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平成29年度
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約13万件
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平成30年度
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約16万件
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年々増加し,平成30年度には,約16万件まで増加しています。
相談対応経路別件数では,警察等が約半数を占めます。
虐待相談件数の増加は,心理的虐待の増加と警察等からの通告の増加によるものです。
それでは,ほかの選択肢も確認しましょう。
2 児童相談所が対応した虐待相談を虐待種別でみると,身体的虐待が最も多い。
虐待相談の種別で,最も多いのは,「心理的虐待」です。
警察による検挙件数で,最も多いのは,「身体的虐待」です。
虐待相談の種別と警察による検挙件数に違いがあるので注意が必要です。
検挙件数が最も多いのが「心理的虐待」ではないのは,心理的虐待では検挙しにくいからではないかと推測しています。
3 児童相談所が対応した相談のうち,児童福祉法に基づく入所措置をとったものは3割程度である。
入所措置をとったのは,約2%です。
入所措置は,親子を分離させることです。
一度分離させると,家族の再統合が困難になってしまうので,「臨検・捜索」も「入所措置」も慎重に行われます。
4 児童相談所が受け付けた相談の相談経路は,学校が最も多い。
先述のように相談経路で最も多いのは,警察等です。
約半数を占めます。学校等は約7%です。
5 児童相談所が受け付けた障害相談の内訳でみると,肢体不自由相談が最も多い。
障害相談で最も多いのは,知的障害です。
<今日の一言>
児童虐待は,数値的に増加しています。
しかし,実際に発生自体がそれほど増加しているかどうかはわかりません。
児童虐待に関心が集まっていることから,通告が増加しているという一面もあるように思います。
心理的虐待では検挙されることは少ないかもしれませんが,虐待防止法ができることは,大きな意味を持っていると考えます。