母子・父子自立支援員は,以前は,母子相談員という名称が,母子自立支援員に変わり,さらに現在は,母子・父子自立支援員と改められています。
根拠法
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母子及び父子並びに寡婦福祉法
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配置
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福祉事務所
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支援対象
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配偶者のない者で現に児童を扶養しているもの及び寡婦
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職務
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相談に応じて,その自立に必要な情報提供及び指導を行う。
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職業能力の向上及び求職活動に関する支援を行う。
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配置は,母子相談員が母子自立支援員に変わった際に,それまでは都道府県だったものが,福祉事務所を設置する市町村に拡大されています。
それでは,今日の問題です。
第23回・問題141 事例を読んで,母子自立支援員の助言に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
〔事 例〕
1歳の子どもを連れて実家に戻り,夫と別居中の女性から,市役所の母子自立支援員に次のような相談があった。1年間,夫からは,仕送り,訪問,電話,手紙など一切ないので,離婚の手続きを始めた。これまでは,すべて親に頼って暮らしてきた。ようやく最近になり親に子どもの保育をしてもらい,近所のコンビニエンスストアでパートとして働き,1か月7万円程の収入が得られるようになった。今後も親からの子育ての協力は感謝しながら受けるとしても,経済的な自立ができるように生活設計を立てたいと思う。
1 離婚が成立しなければ児童扶養手当の申請はできないと助言する。
2 母子家庭等就業・自立支援センターを紹介し就業相談を助言する。
3 子どもを児童養護施設に入所措置することについて助言する。
4 保育所入所の申請を助言する。
5 婦人相談員に相談することを助言する。
正解は,選択肢2です。
2 母子家庭等就業・自立支援センターを紹介し就業相談を助言する。
母子・父子自立相談員の職務は,以下の通りです。
母子・父子自立支援員の職務
相談に応じて,その自立に必要な情報提供及び指導を行う。
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職業能力の向上及び求職活動に関する支援を行う。
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選択肢2は,「職業能力の向上及び求職活動に関する支援を行う」に対応した助言です。
極めて適切です。
それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。
1 離婚が成立しなければ児童扶養手当の申請はできないと助言する。
児童扶養手当は,確かにひとり親の児童を対象としているものですが,実際には,「児童扶養手当法施行令」によって,「準ずる者」として,以下のような規定があります。
①父(母が児童を懐胎した当時婚姻の届出をしていないが,その母と事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)が,一年以上遺棄している児童。
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②父がDV防止法の規定による命令(母の申立てにより発せられたものに限る)を受けた児童。
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③父が法令により,一年以上拘禁されている児童。
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④母が婚姻(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む)によらないで懐胎した児童。
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この事例の場合は,「①父(母が児童を懐胎した当時婚姻の届出をしていないが,その母と事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)が,一年以上遺棄している児童」に当たります。
3 子どもを児童養護施設に入所措置することについて助言する。
4 保育所入所の申請を助言する。
女性の親が子の面倒を見てくれているので,これらの社会資源は必要ではありません。
5 婦人相談員に相談することを助言する。
婦人相談員は,売春防止法とDV防止法に規定されています。
別居の理由は,よく分かりませんが,少なくとも現在はDV被害には遭っていません。
<今日の一言>
今日の問題は,それほど難しくはない問題かと思いますが,事例問題の中には,2つまで絞り込めても,そこから1つに絞り込めないことがあります。
そういったときは,何かの視点が抜け落ちてしまっていることが考えられます。
まずは,設問をもう一度冷静に読みなおしてみましょう。
そうすると,「〇〇に基づいた対応として」といった条件が限定されているなど,に気がつくことがあります。
そのほか,
職務の範囲を超えている。
勝手に情報を付け加えて解釈してしまう。
というものもあります。
今日の問題では,選択肢5が,DV被害に遭っていると思い込むと間違える恐れがあります。
国試会場は,独特の緊張感に包まれているので,結構こういった基本的なミスを犯しがちです。
くれぐれも気を付けましょう。