それでは,早速今日の問題です。
第21回・問題105 児童相談所に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 一時保護期間は原則として1か月を超えてはならない。
2 児童相談所長は,親権を行う者及び未成年後見人のない児童等について未成年後見人の指名をすることができる。
3 児童相談所長は,その管轄区域内の児童委員の中から主任児童委員を指名することができる。
4 児童福祉司は,調査に当たって,担当区域内の市町村長に協力を求めることができない。
5 児童相談所長は,親権喪失の宣告の請求を行うことができる。
正解は,選択肢5です。
5 児童相談所長は,親権喪失の宣告の請求を行うことができる。
この問題に関して,出題時点と現時点では制度変更になっているものが2つあります。
ただし,正解にはかかわらない部分です。
変わっていること(いずれも2011年の民法改正)。
①未成年後見人は,複数の選任,あるいは法人の選任ができるようになった。
②親権喪失に加えて,親権停止が行えるようになった。
①に関して,成年後見人等は,もともと複数人を選任することができましたが,未成年後見人は,1人しか選任することができませんでした。この時の改正で,成年後見制度と同じになりました。この時の改正によって,成年後見制度も未成年後見制度も法人を選任することができるようになりました。
これ以降,社会福祉士会が選任されるようになっています。
②に関しては,親権喪失の宣告を行うと,二度と親権を復権させることができませんでした。そのために,一度親権を奪ってしまうと,家族統合がなされないという課題があり,最長2年の範囲で,親権を停止することができるように変更されています。
この改正によって,親権喪失(親権停止も同じ)の申立権者は以下のように変更されています。
改正前
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改正後
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・子の親族
・検察官
・児童相談所長
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・子の親族
・検察官
・子
・未成年後見人
・未成年後見監督人
・児童相談所長
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ここで特筆すべきものは,請求権者に「子」が加わっていることです。
これは,児童権利条約で保障される児童の「能動的権利」を受けたものです。
それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。
1 一時保護期間は原則として1か月を超えてはならない。
一時保護期間は,原則として2か月を超えてはならないとされています。
これを超えて,保護する場合は,家庭裁判所の許可が必要です。
2 児童相談所長は,親権を行う者及び未成年後見人のない児童等について未成年後見人の指名をすることができる。
未成年後見人も成年後見人等と同じく,申立て権者の申立てによって,家庭裁判所の職権で,未成年後見人を選任します。
3 児童相談所長は,その管轄区域内の児童委員の中から主任児童委員を指名することができる。
主任児童委員を指名するのは,厚生労働大臣です。
4 児童福祉司は,調査に当たって,担当区域内の市町村長に協力を求めることができない。
児童福祉司は,調査に当たって,担当区域内の市町村長に協力を求めることができます。
児童福祉司についてまとめておきたいと思います。
児童福祉司の規定(児童福祉法)
配置
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児童相談所(必置)。
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定数
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政令で定める基準を標準として都道府県が定める。
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任用資格
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医師。
社会福祉士。
社会福祉主事として2年以上児童福祉事業に従事した者であって,厚生労働大臣が定める講習会の課程を修了したもの など。
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指揮監督
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児童相談所長の命を受けて職務を行う。
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職務
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児童の保護その他児童の福祉に関する事項について,相談に応じ,専門的技術に基づいて必要な指導を行う等児童の福祉増進に努める。
担当区域内の市町村長に協力を求めることができる。
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研修
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厚生労働大臣が定める基準に適合する研修を受けなければならない。
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スーパーバイザー
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児童福祉司としておおむね五年以上勤務した者。
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スーパーバイザーは,ほかの児童福祉司に対して,必要な専門的技術に関する指導及び教育を行う児童福祉司です。
<今日の一言>
児童虐待の増加に伴い,児童相談所への期待も高まっています。
その中心的役割を担うのが,児童福祉司です。
それに伴い,児童福祉司の定数は,
「基準を参酌して」から,「基準を標準として」に変更されています。
また,研修受講の義務,スーパーバイザーの配置,さらに人口150万人以上の地方公共団体のA級児童相談所には,弁護士も配置されるようになりました。