労働に関する日本国憲法の規定
第27条
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すべて国民は,勤労の権利を有し,義務を負ふ。
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2
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賃金,就業時間,休息その他の勤労条件に関する基準は,法律でこれを定める。
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3
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児童は,これを酷使してはならない。
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第28条
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勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は,これを保障する。
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日本国憲法で労働に関する規定は,たった4つのみです。
第28条は,それぞれ「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」と呼ばれます。
それでは,今日の問題です。
第24回・問題143 日本国憲法が規定する規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 憲法は,国民は勤労の義務を負うと規定しているが,勤労の権利を有するとする規定はない。
2 憲法は,賃金,就業時間に関する基準を明記している。
3 憲法が規定する勤労者の権利は,団体交渉権,団体行動権の2つである。
4 憲法は,児童はこれを酷使してはならないと規定している。
5 憲法は,男女同一賃金の原則を明記している。
日本国憲法を実際に通して読むことはめったにないので,このような問題が出題されるとドキッとしてしまいますが,こんな時こそ落ち着かなければなりません。
正解は,選択肢4です。
4 憲法は,児童はこれを酷使してはならないと規定している。
この選択肢と同じものが第21回にも出題されています。
そのことについては,<今日の一言>で紹介します。
それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。
1 憲法は,国民は勤労の義務を負うと規定しているが,勤労の権利を有するとする規定はない。
「すべて国民は,勤労の権利を有し,義務を負ふ。」と規定されています。
2 憲法は,賃金,就業時間に関する基準を明記している。
「賃金,就業時間,休息その他の勤労条件に関する基準は,法律でこれを定める」と規定されています。それが「労働基準法」や「最低賃金法」などです。
日本国憲法で細かい規定をしたら,基準が変わるたびに憲法改正をしなければならなくなってしまいます。それはとても面倒なことです。
3 憲法が規定する勤労者の権利は,団体交渉権,団体行動権の2つである。
憲法が規定する勤労者の権利は,団結権,団体交渉権,団体行動権の3つです。
5 憲法は,男女同一賃金の原則を明記している。
男女同一賃金の原則を定めているのは,労働基準法です。
<今日の一言>
今日の問題の正解は,
4 憲法は,児童はこれを酷使してはならないと規定している。
でした。
第21回の国家試験問題です。
問題63 人権に関する次の記述のうち,日本国憲法の条文として規定されていないものを一つ選びなさい。
1 すべて国民は,法の下に平等であって,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない。
2 すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。
3 家族は,社会の自然かつ基礎的な単位であり,社会及び国による保護を受ける権利を有する。
4 国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
5 児童は,これを酷使してはならない。
日本国憲法の条文として規定されていないのは,
3 家族は,社会の自然かつ基礎的な単位であり,社会及び国による保護を受ける権利を有する。
これは,国際人権規約(B規約)の条文だそうです。
この問題は,旧カリキュラム時代にあった「法学」で出題されたものです。
今のカリキュラムで,法学がなくなって,「権利擁護と成年後見制度」に変わりました。
「法学」時代は本当に難しいものでした。
今の科目も簡単ではないですが,「法学」よりも難易度は高くありません。
必ず突破口はあります。
<おまけ>
日本国憲法の改正について
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
○2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
憲法改正には,まず国会議員の3分の2以上の賛成が必要です。
このように,普通の法律よりも改正するのが難しい憲法のことを「硬性憲法」と言います。