国家試験は,どのように出題されるのかが分からないので,どんなに勉強を重ねたとしても,本番では解けないのではないかという不安は残ります。
この不安は,どんなに勉強しても決してなくならないことでしょう。
不安から解放されるとすると,国家試験が終わってから解答速報で自己採点したときでしょう。
しかし,国家試験は,受験者の30%が90点を取れるように設計されています。
合格率が30%というととてつもなく難しい試験のように感じるかもしれませんが,実際には勉強をほとんどしないで受験する人も相当数います。
合格を目指して必死に勉強した人だけに限るとかなりの確率で合格します。
正しい努力をしてきた人は,合格をつかめます。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題145 公共職業安定所(ハローワーク)の行う業務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 総合支援資金の貸付
2 公共職業訓練のためのコースの開設
3 有料の職業紹介
4 無料職業紹介事業の許可
5 障害者雇用に対する技術的助言・指導
前回の問題と違って,難しい問題だと言えます。
前回の正解は,ハローワークは,雇用保険に関する業務を行っている,でした。
これはおそらく勉強しなくても,経験的に知っている人もいるでしょう。
今日の問題の正解は,選択肢5です。
5 障害者雇用に対する技術的助言・指導
障害者雇用率の届け出は,ハローワークに対して行います。
そして,未達成企業には,技術的助言や指導を行います。
ハローワークの業務について,もう一つ覚えておいてほしいことがあります。
外国人の雇用状況に関する届出もハローワークに対して行います。
<今日の一言ぷらす>
前回の問題は,以下のとおりです。
第29回・問題145 公共職業安定所(ハローワーク)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 求職者に対して,有料で職業紹介を行っている。
2 各市町村にその設置が義務づけられている。
3 雇用保険に関する業務を行っている。
4 障害者に対して,職業能力開発促進法に基づく公共職業訓練を行っている。
5 生活保護のうち,生業扶助の支給に関する事務を行っている。
今日の問題です。
第26回・問題145 公共職業安定所(ハローワーク)の行う業務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 総合支援資金の貸付
2 公共職業訓練のためのコースの開設
3 有料の職業紹介
4 無料職業紹介事業の許可
5 障害者雇用に対する技術的助言・指導
正解はそれぞれ
3 雇用保険に関する業務を行っている。
5 障害者雇用に対する技術的助言・指導
2つは異なります。
特に今日の問題の答えは難しいです。
今なら参考書に載っていると思いますが,その出題当時は載っていなかったはずです。
国家試験は,
少しずつ重なっていて少しずつ違う
新しいものを少しずつ加えながら,出題します。
重なっている部分は,
1 求職者に対して,有料で職業紹介を行っている。
3 有料の職業紹介
ちょっと違うのは
4 障害者に対して,職業能力開発促進法に基づく公共職業訓練を行っている。
2 公共職業訓練のためのコースの開設
ハローワークは,自らコースを開設したり,実施したりはしません。
5 生活保護のうち,生業扶助の支給に関する事務を行っている。
1 総合支援資金の貸付
違うのは
2 各市町村にその設置が義務づけられている。
4 無料職業紹介事業の許可
2つの問題で,正解するためのキーになるのは,この選択肢です。
2については,おそらく自信を持って消去できた人と正解にしてしまった人が分かれたと思います。
自信を持って消去できた人は,地方に住んでいる人。
正解にしてしまった人は,都市部に住んでいる人。
4については,許認可に関する事務は,主務大臣,あるいは都道府県知事の役割です。
地方分権で,指定都市や中核市も許認可に関する事務を行うものもありますが,そういったものをきちっと覚える必要はありません。
国家試験は,まったく同じ問題が出題されることはありません。
しかし,ほかの科目で勉強してきたことが結果的に正解に結びつきます。
合格するために必死で勉強した人は正解できるように国家試験は設計されています。
試験委員のほとんどは,大学教員です。
自分が担当した科目が難しすぎて,0点科目となってしまう人が続出してしまうと,自分の教え子も困ってしまいます。
努力しないで0点になってしまうのは仕方がないことですが,努力してきた人でも0点科目が出るような問題は不適切です。
第26回国家試験以降は,その辺りは実によく工夫されています。
必死で努力してきた人は,0点科目になることを恐れる必要もありません。
なお,就労支援サービスと更生保護制度は,2科目で1群となります。
8問中1点が取れればよいことになります。
努力を続けてきた人は,1点どころか,点数を稼ぐことができる科目になるはずです。
そう言い切れるのは,正しい努力を続けてきた人は,「少しずつ重なっていて少しずつ違う」の「少しずつ違う」に対応できる力をつけているからです。
自分の今までの努力を信じて,国試に臨むことが何よりも大切です。
今までのあなたの努力は,必ず得点力になっていますよ。
最新の記事
子ども・子育て支援法
子ども・子育て支援法は,これまでにも出題されてきましたが,正式に出題基準に含まれたのは,第37回国家試験です。 子ども・子育て支援制度は,市町村が実施主体になっています。 支給申請は,市町村に対して行います。 児童福祉法には,入所系があるので都道府県の役割がありますが,子ども...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
質的調査では,インタビューや観察などでデータを収集します。 その際にとる記録をフィールドノーツといいます。 一般的には,野外活動をフィールドワーク,野外活動記録をフィールドノーツといいます。 こんなところからも,質的調査は,文化人類学から生まれてきたものであることがう...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...
-
ヒラリーという人は,さまざまに定義される「コミュニティ」を整理しました。 その結果,コミュニティの定義に共通するものとして ・社会的相互作用 ・空間の限定 ・共通の絆 があることが明らかとなりました。 ところが,現代社会は,交通手段が発達し,SNSやインターネットなどによって,人...
-
絶対に覚えておきたい社会的役割は, 第1位 役割期待 第2位 役割距離 第3位 役割取得 第4位 役割葛藤 の4つです。 今回は,役割葛藤を紹介します。 役割葛藤とは 役割に対して葛藤すること 役割葛藤を細かく分けると 役割内葛藤と役割間葛藤があ...
-
今回は,ソーシャルワークにおけるエンゲージメントを取り上げます。 第30回の国試で出題されるまでは,あまり知られていなかったものです。 エンゲージメントは,インテーク(受理面接)とほぼ同義語です。 それにもかかわらず,インテークのほかにエンゲージメントが使われるようになった理由は...